平安朝の女と男―貴族と庶民の性と愛 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論社
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本棚登録 : 102
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121012401

作品紹介・あらすじ

いつの時代にも女は男を求め、男は女を求める。しかしその方法は時代によって相違する。古代から現代に至る性愛の歴史的な変容の中で、平安時代中ころの男女の関係はいかなるものであったか。『今昔物語集』『伊勢物語』などの物語、藤原明衡の天下の奇書『新猿楽記』、そして公卿たちの日記を使い、女と男の様々な出会い、『新猿楽記』に見る女性像と女の性、王権と性、男色の成立とひろがり、家の成立と性愛など、当時の男女の諸相を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 既に10世紀には、不完全ながらも、家父長制による女性支配が進んでいたのだ、というのが、本書のテーマ。
    自分の財産を持つ女性がいたりする点で、経済権がなかったとはいえないが、経営権はないとか、貴族層は妻方の家に住むなどの慣行があっても、子どもへの親権は父方にあるなど、婚姻や性の管理ができていったことなどが根拠だ。
    少なくとも貴族層では、女性の自由は権利はあったと思っていた。
    十一世紀くらいから女性の立場が弱くなっていくのかと勝手に思い込んでいたが、もっと前からそうだったようだ。

    五節の舞姫の献上の意味を論じたところなどは、正直、きつかったけれど、稲荷の縁日が女性から男性に縁を求めることができたとかいったところは読んで面白かった。

    同じ著者の『平安朝の母と子』も読んだはずなんだけど、内容をほとんど覚えていない。
    また読み直そうかなあ。

  • ◆古代末から中世初期の説話集・小説などを活用し、当時の男女関係、性愛の機微、BLや強姦などタブーに果敢に挑む研究書。ただしフェミ的偏りとマルキシズム段階史観の強調によって招来した実証性の低下はたまにキズ◆

    1995年刊行。
    著者は、亜細亜・慶應義塾・千葉・武蔵野女子、青葉学園短大他の各大学非常勤講師。

     平安時代を中核に、その前後の各時代の男女関係の実につき、性愛・家族・夫婦・愛人ほかの家族関係、また宗教と関連させつつ、男女の出会い、妊娠の他、理想とする女性像とその変遷と共に、現代から見ても規範からの逸脱たる強姦(強制性交)、密通、男色にも触れる。
     所有概念などマルキシズム的段階史観の悪影響は感じるし、また家父長制度の確立に関し、例外的事象を過小評価する視点がフェミニスト的偏頗、理由付けの説明に実証性を欠く。などの問題はすぐに見て取れる。
     また、古代における男女関係が皇室層を除き男女同権であったという結論を実証なく、批判的検討なしに受入れ、承認する点に、論の運びにおける座り心地の悪さを感じてしまう。

     とはいえ、そういう視点の偏頗性の問題を考慮したとしても、平安期・鎌倉期の説話集・文芸作品を広く渉猟し、男女関係を基軸とする家族論や女性像の変遷。さらには日本型家父長制社会が形成されていった(「確立した」とする著者には反対だが、徐々に強化されていったことなら納得)ことの史的な意義を感得することは重要だろう。

     また、農耕的豊饒さを機縁とする男女関係儀礼・生殖行為儀礼。平安期、都市(京都)の成立による農耕的祭礼・儀礼の脱色傾向など、割と普通の叙述も展開される。
     一方で、性愛・豊穣・縁結びの稲荷神社への参詣の意味や、稲荷神社と狐(化かし合いをする)の関係性など、意外に思う部分も多々ある。

     さらにここで、男色に関してなかなか興味を惹かれる指摘がある、
     良くも悪くも男女間の性愛は、社会的認知が許容される場合であれば、その身分に影響され、また婚姻に際しての男女の年齢差、男女間の教養差の点から、男女間の非対称性が顕著になった。
     そしてそれを埋め、対等な恋愛関係を構築するべく男色が広がってきたとの指摘がそれだ(ただし稚児愛がある以上、そのまま是とするわけではないが)。


     ただ全体として見るに、些か残念なのは、富と男女関係との繋がりについて実証性ある箇所が殆どない点だ。家父長制の成立・強化。売買春との関連、父権の強化如何など、実は重要な関連性を有するはずなのだが…。

  • 平安時代前期における男女間のやり取りが、あまりに今とは違うことが興味深い。もう少しこの辺りについては学んでみたいと思った。

  • 実は三日夜餅について調べたくてそれっぽい資料を探してきたのだが、三日夜餅についてはまったくノータッチでどっちかというと、フェミニズムっぽい観点から平安時代における性愛観の変遷を見るって感じの本だった。
    まあ、知りたいことはまったく知れなかった訳だが()、平安中期10世紀初頭頃にはほとんど男女差の見られない性愛観が、ムラから都市への社会変化、家父長制家族の成立、などにより次第に男性優位の性愛観へと変化していくというのは、まあ、うん、わかるんですけど、本書、三章+終章構成なんだが、如何せん章毎の関連が分かりにくいというか、章が変わると時代がわりと前後するので、読み通して全体的な話はわかるが歴史的な流れがわかりにくくてですね……。しかも、終章とか坂田聡「中世の家と女性」に対して半分ぐらい反論に使ってんじゃ無いかと思って、ひとつひとつ反論する必要はないのではとかとか。
    しかし、農耕神である稲荷神がダキニ天と習合して、村では共同体における農耕儀礼としてなされていた祭りが都市部においては個の性愛の成立を願う祭りに変化し、また男女の出会いの場にもなっていく(辻等も同様)というのはなるほど興味深いなー、などと思ったりしたわけで、ただどーしてもやっぱりフェミニズムの色が濃いので、他の資料と併せて読まないとこれだけではいかんともなーという感じ。

  • 平安時代の男女の恋愛観を知りたくて読み始めたのだが、途中現代のジェンダー論にまで話が飛んで驚いてしまった。
    個人的に、最終章以外は面白かった。あくまで個人的に。

  • う~~~ん。
    ☆2.5くらいなかんじ。

    読んでいてなんとなく不快な、生理的に受け付けないような部分があった。

    頼長のところは興味深く読んだ。

  • 平安時代の男性・女性の関係性を「家」の成立などから読み解く。
    『王権と性』の五節の舞姫の項と『『男色の成立とひろがり』が特に面白かった。のだが男色に関しては…ちょっと疑問が残るかな…。

  • 本書は、平安時代、女性史を専門とし

    現在は埼玉学園大学教授である著者が、

    平安時代における父子関係について検討する著作です。


    まず1章において、平安時代、父親が子の成長にどのように関わったのか

    『古今著問集』や『蜻蛉日記』など当時の資料を参照し紹介します。


    続く2章では、平安時代よりも以前では、父の権威は確立していない

    ―との認識を示し、「家」や「父権」がどのように確立したのかを

    「墓参り」や「親不孝(親による子の絶縁)」などの概念を手掛かりに考察。


    そして終章では、本書の内容をまとめるとともに、

    現代における父権論についても触れ、

    父子関係のあるべき姿について論じます。


    菅原道真による自身の家系についての分析や

    女性にとっての元服である「着裳」をめぐる政治的駆け引き

    なども興味深かい記述は多くありました。

    なかでも、個人的に印象深かったのは

    貴族層の墓参りは、命日とは関係なく

    官職の継承に際して行われたものであった―という記述です。

    個人的には、天智天皇などは命日が国忌などが定められたことについて、

    命日だからお墓参りをしたのだろう―と考えていましたが、

    そうではないと知ることができ、とても興味深かったです


    あいまいに理解しがちな、歴史の中の家族関係について

    実証的かつ平易に論じた本書。


    日本史に興味がある方はもちろん

    多くの方におススメしたい著作です。

  • 最近、服藤 早苗さんの著書を読み直しているんですが、学生時代に読んだときには気付かなかったような発見があって、面白いです。

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著者プロフィール

埼玉学園大学名誉教授。専門は日本古代・平安時代史、ジェンダー史。
主な著書に『平安王朝社会のジェンダー』(校倉書房、2005年)、『古代・中世の芸能と買売春』(明石書店、2012年)、『平安王朝の五節舞姫・童女』(塙書房、2015年)などがある。

「2017年 『歴史のなかの異性装』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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