古代中国の刑罰―髑髏が語るもの (中公新書)

著者 :
  • 中央公論社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121012524

感想・レビュー・書評

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  • 二十世紀後半以降、中国での発掘調査が進んだ。
    本書は、その成果の一つ、洛陽南郊の集団墓地に埋葬された労役に就いた囚人の骨の話に始まる。

    本書で扱う「古代中国」というのは、秦漢時代。
    漢の呂后が戚夫人にしたこと、油で煮られた武将、切り刻まれて塩漬けにされた子路などの霊から、やはり当時の刑罰は残酷なものではないかと思っていたが。
    権力者が見せしめとして行うものと、法に基づいて執行する刑罰とはかなり趣が違うらしい。
    刑罰の多くは罰金に置き換えができたり、労役が多かったりするらしい。
    死刑にしても、苦痛が大きい腰斬を取るのは大逆不道罪くらいだという。
    意外、と思う一方で、考えてみれば、そうだな、と納得する。

    筆者は、残虐な刑罰が入ってきたのは、異民族の征服王朝の影響だという。
    唐代までは、法律として残虐な刑罰を定めたものはないからだという。

    漢代は儒教を国教化した時代でありながら、実際に国を動かしたのは秦代に確立した法に基づく統治。
    肉刑(身体への刑)は五種に分かれる。
    黥刑、劓刑、刖刑、宮刑、死刑の順に、刑が重くなる。
    筆者は、これを「追放」の程度の差による体系と読み解く。
    黥刑は、異民族の習俗である入墨を入れることで、漢民族からの追放を意味する。
    劓(はなそぎ)、刖(あしきり)は、身体を損なうことで共同体からの追放の初段階という意味合いがあるらしい。
    宮刑は生殖機能を損なうことで、動物界からの追放、死刑はもちろん、生物界からの追放となるという。

    宮刑についても、本書でかなり認識が変わった。
    この刑は女性に対しても適用されることがあったという。
    実際に生殖器を損傷するという説もあるそうだが、筆者は幽閉だと考えているようだ。

    残酷な描写がたくさん出てきたら嫌だなあ、と思いながら手にしたが、それほどでもなくてほっとした。
    一つの社会のあり方に対する観点として刑罰はある。
    そんなことを考えさせられた一冊だった。

  • 古代中国の刑罰は世界的には飛びぬけて残酷ではなかったらしい。ただし、異常な個人は存在した。

  • 主に秦漢の刑罰です。
    すいこち秦かん(変換面倒くさい)にも触れています。まぁ、当然ですね。
    この時代は肉刑もあったけど(文帝時に廃止)、法的に裁かれる際には残虐すぎる刑罰が無かったの。
    西洋と違って神様に償うわけではないのよ~みたいな。
    労働刑が中心で、食べ物を作るために囚人達は必要だったわけです。
    法は高度に整備されてはいますが、実情にあってるとは必ずしもいえなかったみたいで、その結果女の囚人に課せられる刑罰を男の人がしていたりします。
    また、その人個人の心情で刑罰を判断する…というと、人情的に見えますが、謀反とか企んだ時点で死刑とかね、なかなかひどいです。
    しかしこの本、やたらと「レディー・ジェーングレーの処刑」が頭にこびりつきます。

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