父性の復権 (中公新書 1300)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121013002

作品紹介・あらすじ

父の役割は家族を統合し、理念を掲げ、文化を伝え、社会のルールを教えることにある。この役割が失われると子どもは判断の基準、行動の原理を身につける機会を逸してしまう。いじめや不登校が起こり、利己的な人間、無気力な人間が増えるのもこの延長線上にある。独善的な権威を持って君臨する家父長ではなく、健全な権威を備えた父が必要だ。父性の誕生とその役割を家族の発生と社会の形成との関連から検証し、父性の条件を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 父性とは何か?ということを学びたいと思い購入しました。
    「多様性」と言われると、こちらの視野が狭いと思いがちですが、そこに「品性」「倫理」「規則」といったものがないとみっともないんだと教えてもらいました。
    みっともない、という感情がなくなりかけているのかもしれません。

  • すべての父親、父親になる人、そして母親にもお薦めしたい。

    いじめや不登校は、親の父性の欠如が原因ではないか?
    「若者文化」という観念が、大人にならなくても価値があるというモラトリアムを助長させていないか?
    マザコンもまた父性の欠如が原因ではないか?
    我々は、必要な父親の権威と、権威主義とを履き違えてしまっていないか?
    人間として正しいこと、「品位」「美しさ」「礼儀」「気品」「ふさわしさ」、これらこそが父性原理ではないだろうか?

    <目次>
    序 父性なき社会
    一 父性はどのようにして生まれたか
    二 子どもの心理的発達と父性
     1 中心としての父
     2 母子結合の支え
     3 母からの分離
     4 性の分化
     5 秩序化と構成力
     6 倫理化、社会化
     7 心的障害と父性の欠如
    三 父性の条件
     1 まとめあげる力
     2 理念、文化の継承
     3 全体的・客観的視点
     4 指導力
     5 愛
    四 父性の権威
     1 権威はなぜ必要か
     2 権威主義の悪影響
     3 権威消失の悪影響
     4 父イメージの脱神話化
    五 現代社会と父性
     1 いじめ・不登校と父性
     2 戦中派ー団塊世代と父性
     3 漱石をめぐる父イメージ
    六 父性復権への道
     1 役割分担否定論
     2 父性と男性性の違い
     3 強烈な印象をー父親の心構え
     4 マザコンをなくせー母親の心構え
     5 学校教育に父性を
     6 親になるための教育

    あとがき

    2013.03.24 図書館で見つけて借りる。
    2013.04.06 読了

  • マックス・ウェーバー研究でアカデミズムにおけるキャリアを歩みはじめ、その後ユング心理学の研究を経て、反フェミニズムの立場を明瞭に打ち出した論客となったことで知られる著者が、伝統的な「父性」について語っている本です。

    やはり引っかかるのは、「父性」の生物学的な根拠を主張しているところでしょうか。もちろん本書で参照されている山極寿一の研究が示すように、ゴリラなどの類人猿が子どもたちの調停をおこなうといったような群れのまとまりを守るような行動を取ることは事実なのでしょうが、そこから一足飛びに、人間社会において「父性」と呼ばれるような文化的な価値が守られる「べき」だ、という結論を導くのは、飛躍としかいいようがないように思います。私たち人間にとって、何が生物学的な基盤となる事実なのかを見据えたうえで、人間社会の規範がどうあるべきかという問題を考えていくべきなのでしょうが、前者からただちに後者が演繹できるわけではないでしょう。

    個人的には、現代の日本社会に文化を継承する審級が失われてしまったという問題提起自体は、それなりに理解できるつもりです。とはいえ、著者が例としてあげている電車のなかで化粧をする女性の出現などは、取り立てて問題にするほどのことでもないだろう、と思います。

  • 哲学の授業の教授のお薦め。
    で読破後に、先生がお薦めしてくださったのはこちらの姉妹版(?)「母性の復権」であったことが発覚。ギャ。
    「父」の作り方。
    お父さんにも読んで欲しい、妻であるお母さんにも読んでほしい。父嫌いの娘さんによんでほしい。もうすぐパパにあるそこの若造に読んでほしい。
    ベイビーでもできたらペアで買いましょうか。

  • 深層心理学の本なのかオヤジの説教なのか線引きが難しい本である。後者の立場でのメッセージだとすれば、心理学を背景にした理論武装っぽい語り口には空虚感が伴ってしまう。例の「国家の品格」のように理屈抜きに倫理観を説教したほうがストレートに響く気がする。深層心理学の引用と「父性の復権」なるテーマにギャップが大きく、論旨についていけない部分が随所に感じれた。

  • 800

  • 非常に納得できる点もあるが、これが本当に正しいことなのかは疑問である。

    事実として観測されていることは、多くは真実だと思う。しかし、それを一般化して、「父性の強かった時代に戻ろう」というのは、あまりにも単純な思考であると思う。

    ただ、本書で記載されていること、例えば父性が弱まった結果、不登校が多くなる等、それらの因果関係は確かにある程度の真実は含まれていると思う。

    これらのことを直視する必要がある。
    一方、今の時代の子育ての考え、特にアドラー心理学をもとにした子育てでは、親と子が上下関係ではなく、横の関係を持つべき、との主張は、本書と真っ向から対立するのである。

    これらを、どのように消化、統合すべきか、難しい問題だ。

    他の識者は、齋藤孝、茂木健一郎、河合隼雄は、父性についてどう考えているのか、知りたくなった。

  • 規則規律について説教を受けているようなところもあって、気が引き締まる思い。昔はこのようなことを言われるような機会があったんだろうな。「子供は親の背中をみて育つ」と言われるがそれは逃げ。子供の方と向き合う。また、まず妻として夫を尊敬しなければいけない。

  • 男性が父らしくならないことは家事育児に積極的でないだけでなく子供はたまた社会までだめにするのだ
    家族の違和感って決めることを父ではなく母に任せて仕事をしてればいいと思い始めたからで、やっぱり女性は中心とか決定とかには向かないと思う。
    司令塔になれない男性が父になってることも子どもにしてみてはよくないし、女性が強い世の中の恋愛結婚ではそのような男性や関係は求められてないのに、家族という社会を繋げてしまうのがそもそもの間違いでは?
    父が母性を持つ意味はない

  • ー父親は、父性の体現者として家族を統合し、理念を掲げ、文化を伝え、社会のルールを伝えねばならないー

    権威と権力。日本の社会においては、権威は天皇、権力は政治家・官僚が担ってきた。ただ戦後、GHQのWGIPにより、天皇の人間宣言、11宮家の取り潰しにより、天皇の権威は大きく毀損した。国家父性の体現者である天皇の権威が大きく失墜し、それに呼応して、父親の権威も大きく喪われたと考えられる。
    私は団塊ジュニアの世代であるが、子供の頃には既に、ガキ大将という者がいなかった。子供ながらに理念を掲げ、弱きを助け、強きを挫くその存在は、不完全ながらも純粋な父性の体現者であったのかもしれない。
    父として、自分自身の存在意義を考えさせられる一冊である。

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著者プロフィール

1937年長野県に生れる。1962年東京大学法学部卒業。1968年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。元東京女子大学教授。著書『ユング』(清水書院、1980)『ユング心理学の応用』(みすず書房、1988)『ユングの心理学と日本神話』(名著刊行会、1995)『父性の復権』(中公新書、1996)『主婦の復権』(講談社、1998)『図説ユング』(河出書房新社、1998)『ユング思想の真髄』(朝日新聞社、1998)『フェミニズムの害毒』(草思社、1999)『母性の復権』(中公新書、1999)『母性崩壊』(PHP研究所、1999)『ユング心理学入門 I-III』(PHP研究所、2000)『家族破壊』(徳間書店、2000)ほか。訳書 ウェーバー『政治論集』1(共訳、1982)ユング『タイプ論』(1987)『ヨブへの答え』(1988)『心理療法論』(1989)『個性化とマンダラ』(1991)『連想実験』(1993)『転移の心理学』(共訳、1994、以上みすず書房)『元型論』増補・改訂版(1999)ノイマン『意識の起源史』(全2巻、1984-85、以上紀伊國屋書店)。

「2016年 『転移の心理学【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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