- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121013569
作品紹介・あらすじ
恵まれた才能と富を活かし、「学問という最高の道楽」を楽しんで、卓越した業績を挙げたディレッタントたち。華麗な恋の遍歴のはてにニュートンの『プリンキピア』仏訳を完成したシャトレ侯爵夫人、領地の森をフィールドに『博物誌』を著したビュフォン伯爵、大銀行の長男に生まれながら動物学者の道を歩んだウォルター・ロスチャイルドらの姿に、学問が職業として確立する以前の、好奇心と遊び心が融合した近代科学の"原風景"を見る。
感想・レビュー・書評
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科学の世界で業績を残した有名な科学者達の中には、生活に全く不自由しないくらいの資産を持ち、自由な生活の中で業績をあげた人達がいました。
例えば、火星の運河探しで有名なパーシヴァル・ローエルもその中の一人です。彼は若い頃ハーヴァードで数学を学んでいましたが、たまたま大森貝塚で有名なモースの講演会で聞いた日本に興味を持って、日本に来日。日本国内を旅行して本を著します。(内容はやや偏見に満ちたものであったようです)帰国した彼が興味を持ったのがたまたま接近していた火星で、イタリアのスキャパレリが見たという火星の運河に興味を持ち、火星人の文明探しをライフワークとして天文台を建設します。火星の次は、海王星の先にある未知の惑星探しに情熱を燃やし、彼の死後に冥王星の発見という形で成果を挙げることになります。冥王星(PLUTE)には、彼のイニシャルP.Lが含まれているそうです。(残念ながら、冥王星は惑星の座から下ろされてしまいましたが)
道楽科学者という言葉にはややネガティブなイメージもありますが、生活の事を気にせず、好きなことに没頭できる環境があるのは、サラリーマンの目で見るととても羨ましいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
楽しい読み物。
アンシャン・レジームの大貴族から、本邦の「道楽科学者」だった蜂須賀正氏侯爵にも影響を与えたウォルター・ロスチャイルドまで、おカネとヒマにあかして趣味に打ち込み、結果的に人類に多大なる貢献をした6人の事蹟を紹介している。先に挙げたロスチャイルドやラヴォアジェ、ローウェル天文台のローウェルなど、誰でも一度は聞いたことがあるビッグネームが多々登場するが、その物語は(現代の平均的日本人には)耳新しい。私は隙間時間に少しずつ読んだが、そういう読みかたにぴったりの本である。
革命で斬首されたラヴォアジェの例はあれど、性別以上に身分がものを言った時代であれば、卑劣漢ワトソンに貶められたロザリンド・フランクリンのような悲劇も登場しない。恋多き侯爵夫人の生涯の、なんと痛快であることか。何らの気がねなく愉しめる、一級の娯楽作品であると言えよう。
2017/7/10~7/14読了 -
6人の科学者の生涯と業績を簡単に紹介している本です。取り上げられているのは、シャトレ公爵夫人、ビュフォン、ラヴォアジエ、バンクス、ローエル、ウォルター・ロスチャイルドで、さらに終章で、アルフレッド・ルーミスとド・ブロイにも簡単に触れられています。
自然科学の専門分化が著しい現在とは異なり、本書に取り上げられている科学者たちはディレッタントとして科学研究に取り組んでいました。本書は、そうしたディレッタントの科学者たちが生き生きとした情熱を持って科学研究に邁進していたことが描き出されています。
自然科学に詳しくない読者でも楽しんで読むことのできる本だと思います。 -
生活の糧とか特定の使命感からではなく、純粋な好奇心や楽しみのが目的で、科学や学問にのめり込んだ人たちが少なからずいた話。
誰彼のエピソードも、生きるのには困らない財力 + 才能と努力という構図。ベルエポックならでは精神の余裕が感じられる話ばかりで、なかなか現代の研究者たちには羨ましい限りだろう。 -
かつて生活のためではなく純粋な好奇心(道楽)から科学をやった人達
がいた.彼らの余裕のある学問へのうちこみかたがとても羨ましい.ビュフォン、ローエルなどが特に面白かった.この本が絶版なんて. -
科学がまだ職業として確立していなかった頃に活躍した人々の紹介。そこでの科学は金儲けの手段ではなく、純粋に知的好奇心に支えられているものだった。そんな時代が少し羨ましくもある。あとがきにあったように、当時の富の不平等があったからこそ、ラボアジェによる質量保存則の発見などの科学の発展があったのではないか、という指摘は間違っていないと思いました。