中国革命を駆け抜けたアウトローたち: 土匪と流氓の世界 (中公新書 1409)
- 中央公論新社 (1998年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121014092
作品紹介・あらすじ
本書は中国革命を駆け抜けたアウトローたちが、日常生活を如何に生き、そして如何に滅んだのかを描き、中華民国期の社会史を照射する。
感想・レビュー・書評
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雑多な事項が詰め込まれてまとまりない、との印象はあるも、あまり知らなかった事柄なので興味深く読んだ。土匪、秘密結社の類というと中世はともかく、民国期にもこれほど社会で存在感があったとは思わなかった。
共産党の方でも、元々匪出身だった賀龍をはじめ、朱徳や彭徳懐あたりはこの世界との親和性があったようだ。筆者は共産党と匪の原則ははっきり違うとしているが、それでも共産党が拡大の過程で匪と結んだりそのやり方を採り入れたりした例がいくつも挙げられている。都市での蜂起には都市労働者を基盤にした幇会と、また農村では土匪・緑林と協力している。もっともPRC成立後は掃討されてしまったわけだが。
本書の出版は98年。筆者はあとがきで、80年代以降徐々に古い中国が復活しつつあるようにみえる、と書いている。が、習近平政権の今や、また隅々までの社会統制が厳しくなっているように見える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
満州者を読めば出てくる「馬賊」だけど、それも含めて民国期の匪賊の世界。
匪賊と書いたけど、これがいいのかどうか。
よく2ちゃんで、北斗の拳の「モヒカンがヒャッハーしている世界」という表現をするけど、まさにそのまま。というか、それよりもひどいんじゃないか? 現実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。
しかし、中国共産党と毛沢東はこの世界をよくも短期間にまとめたものだな。新中国成立後の大躍進とか文革とかの悲惨な有様を見て、「ひどい統治をするものだ」と思うのだけど、たしかにこれよりかはましだ。
なんかもう、日本軍が背景に霞んでしまっている。というか、よくこんな世界に、いちおう近代的な軍隊と統治体制をもっていって、どうにかなるとか、なんとかなるとか思ったものだ。逆説的に日中戦争ってよほど何も考えていなかったのだろうと思う。
しかしそれでも、奇妙な安定を見せているようでもあり、中国は奥が深いと思う。なにか言おうとして何も言えていない感想で恐縮だけど、それだけ本に圧倒されたってことでもあります。