日本人の発想、日本語の表現: 私の立場がことばを決める (中公新書 1416)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014160

作品紹介・あらすじ

本書は、豊富な実例を引用しながら、日本人の思考様式と日本語の姿や表現との関わりを探る試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 【目次】
    まえがき [i-iv]
    目次 [v-viii]


    I 発話の場面、発せられる表現ーーなぜ客観的叙述が取りにくいのか 003
    場面に依存する言語行動
    現在時点からの現状把握
    主観的表現が日本語を支える

    II 「私」中心の視点ーー日本語的な内と外とは何か 023
    「私」を「人」に含めない日本語
    他人を気にする日本語・日本人
    日本人が考える自分・相手・第三者
    自他の人間関係と日本語
    日本語では謝罪も感謝も同じ言葉
    「家」が「内」に通ずる日本語
    「内」と「中」とは意味が違う
    顔を「おもて」と考える日本人

    III 対人意識に基づく表現ーー人間関係がどう言葉に現れるか 059
    受けの姿勢が対人意識の言葉を生み出す
    人称詞の発達も同じ土壌から
    受け手の姿勢と待遇表現
    人間関係と敬語の発達
    国技も日本語も同じ土壌から
    縄張り意識はどう反映するか
    日本的な指示語の体系
    素晴らしきかな日本語の授受表現
    話者の視点に立つ日本語、「〜てくる」と「〜ていく」
    視点によって変わる対義関係、「押す」と「引く」

    IV 日本語の情意性と文学ーー対象把握に現れる表現者の心 100
    日本語に多い情意の副詞
    情意的表現はとりたて詞から
    日本語に多い強調表現
    否定表現を有効に使おう
    推量表現と寡黙の美
    俳諧に潜む己の目

    V 受身的発想に基づく言葉ーー受身で客観性をどう示すか 132
    受身的姿勢に日本語と中国語との違いを見る
    話者の視点が受身を生み出す
    受けの姿勢は日本文化の本質?


    VI 「成り行き」の論理ーー他力的発想と近視眼的思考 151
    自然の成り行きに委ねる日本語
    自動詞の効用
    話者の視点からの慣用表現
    話者の視点からの比喩表現
    日本語の「た」は本当に過去や完了を表わすか
    日本語の条件表現は客観的なものか
    文章の展開に見る日本人的思考樣式
    談話や作文に見られる日本語の特徴
    文章は書き出しが命

    VII 会話の論理と表現の論理ーー場面即応型言語の立脚点 199
    「は」の主題文に日本語の姿を見る
    話し言葉と書き言葉に見る日本語らしさ
    男女差は話し言葉に現れやすい
    日本語の性格は日本人・日本文化の性格と根は共通
    むすび、 アナログ感覚の日本語


    あとがき(一九九八年四月 森田良行) [235-241]

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99460173

  •  日本語を運用する者の特徴として、自身の視点を通して、己それ以外を対象とすることが挙げられる。それは、話やその場の成り行きにより、その言葉がある意味をなす事にも繋がる。その一方で、ある決められた範囲をもってしてその場面が描かれるため、全体から部分を見るように場面展開が決められる。

     そういった意味で、通時的な全体の把握は、虫の視点(金谷[1]より)であるからこそ難しいが、空間的な把握は、その物事を全体としてのどこに位置付けるのかということで、よくやっているのだろうと感じた。

    [1]金谷武洋「日本語と西欧語」

  • 日本語の構造がいかに日本文化や日本人というものの型を
    規定しているかということがよくわかる本。発話の場面に
    依存していることや受動的発想がその特徴であるのだが、
    それを欠点とするか長所とするかは結局話者の心がけ次第と
    いうところか。文章を書く人間なら一度読んでおくと面白い
    かも。

  • よく言われる日本人は受け身だという指摘も、もともとそういう傾向だったのが、
    それを表す言葉が増えていって、ますますその傾向に拍車がかかっていく、といった、言葉とそれを話す人たちがお互いに影響していくのは明らかだと思います。

    例による説明も多くとても面白い内容でした。

    ただ、「日本語に特徴」と本書で言われる内容が、本当に英語などの外国語には見られないのかは、盲信せずに一度自分で調べてみるのが良いと思いました。

  • 「僕はハヤシライス。」「私はメンマヨスパゲッティ。」なんて言い方しませんか。何かのコマーシャルではありませんが、これをそのまま英語に訳すと大変です。日本語にはどうも全体の流れの中でやっと意味がはっきりするという場合が多いようです。「これでいいです」ちょっと言い方を強くすると、「まあこれしかないなら仕方ないな」という意味に取られるかもしれません。「結構です」も同じこと。日本語にはあいまいな表現が多いのも確かなようです。あうんの呼吸なんて言いますが、だいたい雰囲気で分かってしまう。分かろうとする。分かって当然と考える。実際がどうかは別として。そのせいか、どうも日本語は論理的な表現には向いていないようです。そしてこれは、日本語を母国語とする我々日本人の発想にもつながっているのですね。外国語ではだいたい、個から全体へ段階をふんで話が進んでいく。住所の表記の仕方にもそれは言えます。ただこの日本語の特徴は、必ずしも否定すべきことではありません。現在我々がかかえている環境問題に対処していかなければならない21世紀には、この日本人の全体から入っていく発想が大いに役立つかもしれないのです。日本の文化を考えるとき、最も我々の思考の仕方と関わりのある日本語から考えていくのも一つの手ではないでしょうか。本書では、このようなことを、数多くの具体例をもとに説明がなされています。入試問題などにもよく使われそうなテーマですね。

  • もう少し勉強してからもう一度読みたい。前半が少し専門的で、後半が読みやすかった。
    日本の言葉と、文化・思考の共通性を深く掘り下げていた。もちろんこれは事実であると思うが、それがさも日本全てに共通する真理のように述べられていて、少々視野が狭いのではないかと感じる。
    あと、個々から論理展開する文書とは、どういうものなのか、もう少し具体的に書いて欲しかった。

  • 新書っていまだに読もうと思うのに時間がかかるけど、興味のある内容だったので、2日ほどで読めました。

    似たような内容を何かで勉強したことがあったので、知ってる知ってる と思いつつ読むところと、これは初めて知ったというところと、いい具合にあったので読みやすかったです。

  • 日本語は「私」対「公」を意識した言語であるということ、自分と相手の関係をつねに意識していることなど。
    主語を明記しない日本語は、つねに主観的な言語表現が前提になっているからこそ成り立っている。

    こういう本を読んでいると、多少の難しさは感じつつも、言葉を理解している無意識の部分や、脳の構造はどういう仕組みなんだろうと思う。

    使っている本人も、言われてみて初めて「ああ、そうかも」と思う。
    言語って不思議だ。

  • 「視点」をテーマにした、こういう本が読みたかった。人称・動詞・文・文章展開にいたるまで日本人は目線中心なのね。

    話が飛んだりくどい事もあったけれど(特に語彙項は似たような本も多いので具体例はそんなに要らないと思う)、自動詞と他動詞、能動態と受動態とか、何気ない言葉の使い方の奇妙さに驚いた。

    助詞「て」について調べてみようと思ふ。

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著者プロフィール

1930年東京生まれ。日本語学者。文学博士。早稲田大学名誉教授。在職中は早稲田大学日本語研究教育センター所長などを兼任し、特に、外国人の留学生および日本人学生への日本語の教育・研究・指導に従事。『日本語質問箱』(角川ソフィア文庫)『基礎日本語辞典』(角川学芸出版)『日本語の類義表現辞典』(東京堂出版)ほか著書多数。

「2019年 『日本語をみがく小辞典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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