金融工学の挑戦: テクノコマース化するビジネス (中公新書 1527)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 139
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015273

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代、赤点を何度もとるほど数学を苦手にしていた。そういう人間にとってお金に関する学問を理解するのは難儀で普通の人より多くの時間を要する。

    その中でも金融工学は特に難解で、入門の入門的な本を読んでも理解に苦しみ、苦い思いをしたものである。しかし、経済学や簿記の勉強を通して少しずつ数学アレルギーを緩和することが出来つつある。そんな中、本書を手に取ったのだが、取っ付きにくい事柄にも軽妙に語られており、一読しただけでも全体の八割ぐらいのことは理解できる。ブラック=ショールズモデルはほとんど理解したと言えないが。

    この書を読み、どんな感想を書こうかと散歩中にぼんやりと思案したのだが、上手くいくかどうか分からないが以下である。

    金融工学と言えば真っ先に思い浮かぶのが、サブプライムローンのバブル崩壊から始まるリーマンショックであろう。この書はリーマンショック前に著された本なので、金融工学によって産み出した膨大な負債がどのような顛末をもたらすのであるのかと言ったことに関して無知である。

    金融工学が産み出された動機は恐らくリスクヘッジのコスト削減だろう。しかし金融工学に携わる人々は本来の意義から外れ、多くの人が理解するのが困難な金融商品を開発し、安全であると見せ掛け販売し、自己の効用(満足)を最大化しようとした。目的を達成するための手段を誤用したと言えるかもしれない。しかし開発者はこう言うかもしれない。別の人が自分と同じ能力を持っていたら同じことをしていただろうと。

    私も同意見である。個人の尊重がかまびすしく騒がれる現代では、自らの所得の最大化によってそれが保証されるだろうし、自由を享受することができる。経済学を学ぶ多くの人も同意するのではないだろうか。

    しかし経済学のそもそもの目的は資源の効率的な分配をどうするかということであり、効用を最大化するという合理的行動を示す効用関数などは分析するための手段に過ぎないのである。

    効用関数を二次元化すると、合理的な行動として、x.yの消費する量が共に増えた場合、効用の水準が上がっていき、その無差別曲線は右上にシフトしていく(ミクロ経済学の根本的な理解の不足があるかもしれません)。要するに物を沢山得ることが幸せでありそれを突き詰めることが最も有効であるということである。

    この分析道具に過ぎない効用関数の最大化が我々の目的化としていないだろうか。経済学であったり、金融工学を突きつめた気鋭のビジネスマンは特に効用関数の呪縛に縛られてしまっているのかもしれない。

    これに対する処方箋は経済学の更なる進歩では無いのかもしれない。価格理論は経済学の根底に位置する理論であり、またある種の箇所は単純で直感的に理解できるからだ。むしろ神学や文学、社会学といった人文科学の分野がこの混迷の社会に救いの手を差しのべるかもしれない。(経済学の否定を意味している訳では無い。経済学の更なる発展は貧困の撲滅にますます有用であるに違いない。)





    今回の書評は経済学の初歩的な理論を援用しているが私は関連の学位も持っていない。なので根本的な誤解がある可能性がある。だから間違っていても許して

  • 数理的な知識必須だとわかった。非常に面白い、興味深い本だった。

著者プロフィール

中大

「1992年 『数理決定法入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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