アジア型経済システム: グローバリズムに抗して (中公新書 1555)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015556

作品紹介・あらすじ

アメリカ主導のグローバリズムが冷戦後の世界を席巻している。この思想を体現するIMFは、経済危機に瀕した国々に緊縮財政や構造改革の実現を厳しく迫った。だが、アジアに対してこの処方箋は有効だったのか。19世紀以来の歴史をみても、ヨーロッパが押しつけた自由主義モデルは、アジアに必ずしもなじんでいない。アジア経済が本来もつダイナミズムを積極的に評価し、新たな地域経済システムのあり方を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代

    原先生からの面接試験での質問は思い出だな。
    研究テーマを進めるだけの能力がなかった。

  • アジア型経済システムの、特に華人の経済システムを振り返るのに良い本。未だまとめ中だが、西洋型経済思念(→システム)とは別物としてアジア型経済システムを認識させてくれる。

  • マルクスにしろ新古典派自由主義にしろ、進歩=前提としており、過程から謝っているとする。

    アジア方経済は西欧型経済と根本的に異なる。

  • 本書は、新古典派経済学が持つ「普遍的な思考」を批判し、アジア型の文化信念に基づく新しい経済学を提案するものである。

    著者によれば新古典派経済学は「経済学的思考」に基づくものである。これは、一人の利他的な人間の行動が、他の無数の利己的な人間を調整するメカニズムである「完全競争市場」に基づき、すべての人間を経済学的に合理的な存在だと見なす思考のことである。現在の世界はこのような考えに基づいて形成されており、グローバリズムを味方につけたこのイデオロギーは、有無を言わさず世界全体を取り込んでいく。全ての人間を同じような視点から捉え直すこの考えによって、新古典派経済学はまさに人間と言う存在を画一的・単純的に再構築するものだといえよう。

    しかしながら、著者はこのような単純化を批判する。なぜなら、地域には固有の経済のあり方があるため、世界を経済学的思考によって単純化することは不可能だからである。経済の土台になるものは文化であり、文化を作り出すのは人間である。この意味で、経済は人間に埋め込まれているといえよう。当然ながら地域によって歴史の時間軸に沿った文化形成の在り方は異なるため、その上に位置する経済システムは多様性を持つのが当然の帰結であろう。例えばアジアとヨーロッパの経済システムの違いは、人口と社会の関係性から説明することができる。中世ヨーロッパでは人口密度が低く、近代化を担う労働力が不足しがちであった。従って、産業革命によって資本集約的な工業化によってそれを補い、国家建設を推進していった。一方中世アジアでは、ヨーロッパとは逆に人口過多であり、その過剰人口をどのようにコントロールするかが問題であった。そこでアジア地域では労働集約的な農耕社会によって、飽和する人口を吸収することに務めたのである。このように、地域によって社会形成のあり方は完全に異なっている。ヨーロッパとアジアではその違いからそれぞれ、産業を中心とした基層社会と農耕を中心とした基層社会であるといえよう。この意味で、その上に形成される経済は異なっているのである。

    このように経済の地域性の重要性を提言した本書は、経済学的思考に基づいた考えを改めるためのアイデア提供してくれるという意味で非常に有益であると考えられる。しかしながら、本書に対してある程度の建設的批判は可能であろう。例えば筆者は、アジアにおけるアメリカの対外戦略と、それに迎合する日本の経済戦略のあり方を、経済の地域性の観点から批判を行い、アジアの中の日本という視点を取り戻すべきだと主張している。確かにアメリカの対外戦略は経済学的思考に基づいているため、経済の地域性という観点からはその単純化を批判することが可能であろう。しかし、アジアの中の日本という認識は達成可能なのであろうか。より厳密に地域の固有性を問うのであれば、アジアという地域の中に埋め込まれた日本という認識ではなく、「日本とアジア」という認識が正しいのではないだろうか。このように考えることで、「日本の固有性」を問い直すことも、現代の日本には必要だと私は考える。

  • [ 内容 ]
    アメリカ主導のグローバリズムが冷戦後の世界を席巻している。
    この思想を体現するIMFは、経済危機に瀕した国々に緊縮財政や構造改革の実現を厳しく迫った。
    だが、アジアに対してこの処方箋は有効だったのか。
    19世紀以来の歴史をみても、ヨーロッパが押しつけた自由主義モデルは、アジアに必ずしもなじんでいない。
    アジア経済が本来もつダイナミズムを積極的に評価し、新たな地域経済システムのあり方を考える。

    [ 目次 ]
    序 アジアの中の日本
    1 グローバリズムという「時代の錯誤」(資本主義;国民経済の原型を求めて)
    2 反市場原理主義の知的基盤(市場経済論の再検討;経済システムの社会文脈に特殊的な進化)
    3 東アジア型経済システム(自由主義プロジェクト;東アジア型経済システム)
    跋 21世紀の発展史観

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    [ 参考となる書評 ]

  • 久々に読むのが大変だった。
    なんでこうアカデミックな文章を書く人は形容詞をたくさんつけがたるんだろうか。
    英語のへたくそな訳みたいです。
    ただまあ、それ以上に内容がちょっと難しかった。
    もうあまり覚えていないけど

    自由資本主義は欧米での成り立ちを前提に作られていて、
    そういった前提を踏まえてIMFはアジア各国に構造改革を求めているけど
    アジア各国の歴史や市場の発展を踏まえれば小さな政府を志向しなくても
    十分に経済発展を促す事が可能な経済システムが作れますよって話だったかな。

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著者プロフィール

(監訳者)原洋之介(はらようのすけ)1944年兵庫県生まれ。1972年 東京大学大学院農学研究科博士課程修了。東京大学教授を経て、現在、政策研究大学院大学特別教授。専攻は国際経済論、アジア経済論、農業経済論。<主な著作>『クリフォード・ギアツの経済学』(1986年度発展途上国研究奨励賞)『現代アジア経済論』『開発経済論第二版』『「農」をどう捉えるか』『アジアの「農」日本の「農」』他多数。

「2014年 『良い資本主義 悪い資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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