物語カタルーニャの歴史: 知られざる地中海帝国の興亡 (中公新書 1564)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015648

作品紹介・あらすじ

ピカソやダリが生き、ガウディの建築がそびえ立つバルセロナ。この街を中心に、いまもスペイン随一の繁栄を誇るカタルーニャは、かつてイタリアや遠くギリシャまで、地中海全域を支配した大帝国だった。建国の父・ギフレ「毛むくじゃら伯」、黄金時代をもたらしたジャウマ「征服王」や、騎士・錬金術師・怪僧が地中海せましと活躍する。栄光の中世から、混乱をへながらも再生への努力を続ける現代までをたどる通史。

感想・レビュー・書評

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  • 現在はスペインの一自治州であるカタルーニャだが、その実態は、ほぼ独立国のそれである。
    本書を読めば、そのことがよく理解できるはずである。

    いわゆるスペイン語(=カスティーリャ語)とカタルーニャ語の関係は、標準語と方言ではなく、祖先を共通とする姉妹に過ぎない(スペイン語とフランス語などとの関係と同じ)というのは驚いた。

    堅苦しくなく、気軽に読める。
    独立問題に揺れるカタルーニャをよく理解するのにうってつけ。

  • スペインにあるけどスペインではない、バルセロナを中心とする地域カタルーニャ史の概説書。独立国として地中海を押さえていた中世を中心に、読みやすい文章で描かれていて面白かった。ジャウマ征服王の自伝7,000円が欲しくなる!

  • バルセロナに渡航するにあたり読んだ本。
    カタルーニャの歴史が分かりやすく面白く描かれており非常に勉強になった。

    イスラムからの国土回復、カタルーニャ・アラゴン連合王国の隆盛、カスティーリャ王国の繁栄。

    一時期はイタリアも勢力下にあったというが、長い歴史の果てに近代において中央政府から制裁を受け文化、言語の継承が中断されてしまったというのは残念な話である。

    あとがきの「カタルーニャ語はスペイン語の方言ではなく、スペイン語やフランス語と姉妹である独立した言語である」というのを読み、学校の教授言語としてスペイン語、カタルーニャ語が並列されている謎が解けた。

  • ピカソやダリが生き、ガウディの建築がそびえ立つバルセロナ。この街を中心に、いまもスペイン随一の繁栄を誇るカタルーニャは、かつてイタリアや遠くギリシャまで、地中海全域を支配した大帝国だった。建国の父・ギフレ「毛むくじゃら伯」、黄金時代をもたらしたジャウマ「征服王」や、騎士・錬金術師・怪僧が地中海せましと活躍する。栄光の中世から、混乱をへながらも再生への努力を続ける現代までをたどる通史。
    (2000年)
    — 目次 —
    カタルーニャの誕生
    栄光への助走
    「征服王」ジャウマ一世
    地中海の覇者
    停滞、そして凋落
    その後のカタルーニャ

  • わりと最近独立に関する
    国民投票が行われたところがここ。
    なぜ?と思うことでしょうが
    歴史背景を知ることができれば
    独立をしたがっているか、ということは
    ある程度理解できるかと思います。

    面白いのはカタルーニャに訪れたひと時の安息の
    時期でしょうか。
    だけれどもこの国にも独裁者はいたのですが
    なんと、有名な悪党のように
    消え去らなかったのです(!!)
    それはカタルーニャの冬を意味するのです。

    当たり前に自分の住む国があるという幸せ。
    でも彼らはそうではなかったのです。
    名前も言語も奪われる屈辱。
    その苦しさは想像するに余りあります。

  • 東2法経図・6F指定:B1/5/Ishii

  • 中世のカタルーニャは地中海を支配して栄えていた。しかし、コロンブスの新大陸発見がカスティーリャ主導でなされ、新世界からの富はカスティーリャへ。ほどなくカタルーニャはスペインの一地方に。しかし、商工業を中心としてカタルーニャの文化は連綿と受け継がれている。
    昨今のカタルーニャ独立運動の歴史的背景が理解できる。

  • カタルーニャの地で1年間を過ごす機会があって、少しはその地のことを知っておこうと思って本書を開いた。日本史もままならない身としては、1冊の本を読んだくらいで何が分かるわけでもないかもしれないが、と思って読み始めたのだが、これがとても面白い。

    カタルーニャの栄枯衰退には、当然のことながら権力者たちの政治かけひきなどが大きく影響している。彼らの性格が生き生きと描かれていて、まさに物語のように綴られていて、流れがすっと入ってくる(もっとも人名はあまり覚えられなかったけれど)。タイトルに「物語」と付いているのもうなずける。

    あとがきを読んでなるほどと思った。スペイン語の分からない身としてはこの地でカタルーニャ語が話されているという「不自然な新奇さ」に気付けないのが少し残念だ。

    カタルーニャに興味がある人にはぜひこの本を読んでもらいたい。また、もしバルセロナなどへ旅行に行こうと思っているなら、同じ著者の『カタルーニャを知る事典』(平凡社新書)を一緒に読むと面白いと思う。また、新書よりボリュームがあるものの立石博高・奥野良知(編著)『カタルーニャを知るための50章』(赤石書店)もおすすめ。

  • 田沢耕さんは、現在は大学教授なんですが、元は一橋大学から東京銀行に就職、研修生としてバルセロナに派遣されたのをきっかけに、カタルーニャの専門家になったと思われます。

    カタルーニャといえばバルセロナを州都とするスペインの一地方ですが、中世にはイタリアや遠くギリシャまで地中海全域を支配した帝国だったそうです。

    知らなかった!こんな面白い国があったなんて。

    「毛むくじゃらギフレ一世」「征服王ジャウマ一世」「戦争の犬たちーアルモガバルス」「ラモン・リュイ」など、面白い人物がいっぱい。

    そして今夜ちょうど野村佑香ちゃんが地中海を旅する番組があるので、また楽しみ♪

  •  中公文庫の物語シリーズのカタルーニャは、主に中世に焦点を当てた一冊になっている。その発端から中世までを詳述し、近世以降はザックリである。
     作者の方は言語方面が専門であり、その意味では歴史を専門にされている方には取れないだろうスタンスで書かれているのが特徴的だ。
     この辺は好みが分かれるところだろうが、あくまで新書として読む読者の立場で言えば悪くないスタンスに感じられる。
     同業者を意識した、晦渋と言っていい検証的な文章が専門の方の本だと多く見られるが、新書読書が求めている文章とは思われないためである。

     残念ながらカタルーニャ関連の本は2018年現在でも稀少であり、そうした稀少性も含めてここでは星五つと評価している。
     欲を言えば、2017年の独立関連の問題までフォローされた新刊が出てほしいところなのだが、おそらく商業的な理由で見込みは薄いように思われる。

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著者プロフィール

1953年生まれ。現在、法政大学国際文化学部助教
授。カタルーニャ語・文化専攻。著書:『カタルー
ニャ50のQ&A』(新潮社)、『カタルーニャ語文
法入門』(大学書林)訳書:『バルセロナ・ストー
リーズ』(水声社)、『バルセロナ』(新潮社)

「1999年 『引き船道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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