公共事業の正しい考え方: 財政赤字の病理 (中公新書 1586)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015860

作品紹介・あらすじ

公共事業の拡大とそれを支える財政上・政治上の構図によって、日本の財政は危機的状況に追い込まれた。政府全体での借金総額は六六六兆円にのぼり、GDPを超える規模に達している。本書は、公共事業の実状を紹介しつつ、景気対策としての有効性と社会資本としての生産性という視点から評価を試みる。受益と負担の乖離、既得権が維持される政治経済学的要因などを検討し、健全な財政運営へのパースペクティヴを明示する。

感想・レビュー・書評

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  • ●なぜ日本の公共事業が最適に行われないのかを説明し、その解決策を提示している。

  • 私のレベルでわかりやすく勉強になる。買いたいが 昨日も倉山さん推薦の人のghqの本を予約したところなので、保留

  • 公共事業に関する様々な視点(主に財政学や公共経済学か?)をコンパクトにまとめてある。新書の分量に様々なことを詰め込んでいるので初学者に易しい本かどうかは微妙だが、考え方をまとめるには使えると思う。

    何か強い政治的なメッセージがあるわけではなく、単純に公共事業の無駄を批判するだけでもない、公共事業にまつわる様々な理論を紹介する本だと考えればOK

  • 勉強になる部分もあるが、地方の問題に関しては自分でサービスの気に入る地域に移住すれば良いなどと非常に市場原理主義的で信用できないと思ってしまう。

  • 公共事業の考え方を財政学、マクロ経済学とともに述べたもの。
    私は公共事業論についてはいくつか学習したものだが、経済学者の視点はあまりなかったので新鮮だった。
    が、記述は少し簡素すぎたかと思われる。
    マクロ経済等も勉強せねばと思った次第である。

    一度読んだものだが再読して、公共事業について地方に財源を移譲してして地方の判断で実行するのが望ましいとのことだが、公共事業に関係したものの感触としては、地方内で完結するような事業であれば可能であるが、新幹線や高速道路、空港等国土計画に関係してくるものの場合、果たして地方の判断によることは可能だろうかという思いを持った。また、上記のような事業について事業を執行する力(技術力、マネジメント力)があるのか疑問ではある。そのため、地方に移譲できるような事業は一部だろうなと思った。

  • 伊藤元重さんおすすめの一冊。授業で財政学、政治学をとってそれに関連した本をちょうどさがしていたので読んでみた。
    主題通り公共事業について大部分書かれており、副題の財政赤字も多く触れらていた。発行年は2011年と10年の前のことなので、データは古かったが、基本的な論理は変わっていないので多いに役に立った。
    筆者の意見としては中央集権から地方分権に移行することで日本の財政赤字は多少改善され、少しづつ増税することはやむを得ないだろう、とのこと。さらに、80年代以降の公共投資は生産性より政治的なバイアスをもって配分され、それが景気対策の中心として既得権化したことが日本の経済低迷、財政赤字累積の原因だという。GDPの政府支出についても新たに知ることがあって読んでいて楽しかった。

    ・2001年、大蔵省→財務省(予算、税制、通貨、国債など)
    ・財政赤字・・政府の借金。政府の歳出のうちで税金で賄われないものの大きさ。
    ・国債
    ①公共事業のための借金=建設国債
    ②経常目的のための借金,、財政赤字を補填するための借金=赤字国債

    ・借金返済
    ①増税して民間の可処分所得を減らす
    ②政府の歳出を減らして、将来の公共サービスの量を制限する

    ・国債(日本の場合)・・銀行など金融機関が保有して、直接国債を持っている個人は少ないが、投資信託などを利用して間接的に持っている個人は多い。

    ・借換債・・満期がきた国債を現金償還せず、再度借り換えるために発行される国債

    ・日本政府歳出の大きな分野は社会保障と公共事業
    社会保障は高齢化に伴い削減は難しいので、削減するなら公共事業が望ましい

    ・公共サービス
    ①ある特定の個人を対象に限定して提供することはできない…排除不可能性
    ②ある個人が消費したからといって、他人の消費量が減るわけではない…消費の非競争性

    ・財政の機能
    ①資源配分機能(社会資本、公共サービス)
    ②所得再配分機能(生活保護、失業保険、医療保険、社会保障)
    ③経済活動の安定性(景気対策、失業保険)
    ④将来世代への配慮(環境問題)



    国の歳入…租税、租外収入、公債、前年度の剰余金
    国の歳出…社会保障費、公共事業費

    公定歩合…中央銀行が金融機関に貸し出しを行う際に適用される基準金利

    ・国際収支
    ①経常収支(貿易)
    ②資本収支(投資)

    2001年 国土交通省(建設省、 運輸省、北海道開発省、国土省が統合)

    ケインズ経済学…需要と供給との乖離を調整するものが価格ではなく数量である

    限界消費性向…所得の増加が消費の増加をもたらす大きさ
    限界貯蓄性向…所得の増加が貯蓄の増加をもたらす大きさ

    GDP=C+I+G+(EX−EI)
    G…無駄な公共事業でも、利用価値の高い公共事業でもどちらも同じ1兆円の費用がかかれば、1兆円だけGDPは増加する

    投資量が多くなるほど限界的な生産量が逓減するのは、より有利な投資から順に行われるから

    時間選好率
    消費者が現在の消費から得られる効率と将来の消費から得られる効用をどのように比較するか。将来に比べてどのくらい現在を評価しているかを数字で表したもので、これが高いほど現在の効用を重視している。

    ・ペイオフ
    銀行が破たんしたとき、預金者に一定額までの払い戻しを行う制度
    ・乗数効果
    公共投資によって所得がどれだけ増加するか

  • [ 内容 ]
    公共事業の拡大とそれを支える財政上・政治上の構図によって、日本の財政は危機的状況に追い込まれた。
    政府全体での借金総額は六六六兆円にのぼり、GDPを超える規模に達している。
    本書は、公共事業の実状を紹介しつつ、景気対策としての有効性と社会資本としての生産性という視点から評価を試みる。
    受益と負担の乖離、既得権が維持される政治経済学的要因などを検討し、健全な財政運営へのパースペクティヴを明示する。

    [ 目次 ]
    第1章 財政危機と財政赤字
    第2章 日本の財政構造
    第3章 公共投資の評価
    第4章 公共投資の決定要因
    第5章 公共投資の改革
    第6章 日本の財政改革

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2001年の本だけあって、タイムリーな内容とはいかない。財政構造改革が急務と当時から言ってはいるけれども…。

  • 財政支出については、しっかり評価しなきゃいけないですね。

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著者プロフィール

井堀利宏(いほり・としひろ)
1952年、岡山県生まれ。政策研究大学院大学名誉教授。東京大学名誉教授。専門は財政学・公共経済学・経済政策。
東京大学経済学部経済学科卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了(Ph.D取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同大学教授、同大学院経済学研究科教授を経て2015年同大学名誉教授。同年4月より政策研究大学院大学教授、2017年4月に同特別教授、2022年4月より現職。
著書に『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)、『政治と経済の関係が3時間でわかる教養としての政治経済学』(総合法令出版)『入門経済学』(新世社)など多数。

「2022年 『サクッとわかるビジネス教養  経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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