タイトルの魔力: 作品・人名・商品のなまえ学 (中公新書 1613)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016133

作品紹介・あらすじ

絵画や彫刻の展覧会で、作品の傍らには必ずネームプレートが寄り添っている。音楽、小説、詩、戯曲…。いずれにもなんらかのタイトルが付されている(なかには「無題」というタイトルもある)。では、このタイトル、いつごろからどのように、作品と不即不離の関係になったのだろう。人の名前、商品のネーミングも視野に入れながら、芸術作品におけるタイトルの役割と歴史を考える、刺激に満ちた美学の冒険。

感想・レビュー・書評

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  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA54401031

  • 芸術作品とそのタイトルの関係について、理論的および歴史的な観点から考察をおこなっている、ユニークな美学書です。

    著者は、芸術作品とタイトルの関係をめぐって鑑賞者が取る態度には、「教養派」と「審美派」の二種類があるといいます。「教養派」はタイトルを通して作品を制作した作者の意図に近づくことをめざし、「審美派」はタイトルによってみずからの芸術的直感が一定の方向に誘導されてしまうことに対する警戒を表明します。著者は、たがいに対立するこの二つの態度が、ともに近代的芸術観に基づいていると論じています。こうして著者は、タイトルを手がかりとすることで美学上の中心的な問題に踏み込んでいきます。

    本書の議論のあちらこちらに、美学上の重要な問題へとつながっていく開口部がのぞいているのがなんとなく理解はできるのですが、個人的に分析美学的な問題の立てかたになじみがないので、どことなくおもしろい問題に通じているような印象がするというところにとどまっています。歴史的な考察がおこなわれているところはおもしろく読むことができました。

  •  オペラのアリアは、その冒頭の歌詞がタイトルになっていますが、それはインチピット(incipit)と呼ばれ、「~と始まる」という意味のラテン語とのことです。
     次の点は、確かに言われてみればそうです。
     「西洋文化圏における書籍の最初の形は、パピルスの巻物だった。その最古のものは紀元前2900年頃のもので、パピルスが羊皮紙に変わるのは1世紀のことだ。パピルスはそれでも11世紀まで使われ続けた。羊皮紙になって本は冊子(ラテン語でcodexという)の形を取りうるようになり、4世紀以後は完全に書物の形になる。古代のパピルスの巻物の一巻は平均して6~7メートルの長さのものだった。

  • 美術史とタイトルの歴史
    かなり、学術的だが、学術くささを排除した良書
    結論が弱い気がする。

  • 美術品のタイトルに関する考察。タイトルに関する研究も様々なアプローチがあるものだなぁと思う。

  • タイトルに関して、歴史的な部分も含めて考察している。

    絵のタイトルが、実は比較的最近なのには驚く。「無題」という絵はタイトルをつけるのを拒否しつつ何かを発信しているタイトル、なんて考えているとクラクラしてきそう。

  • 主に藝術作品における「タイトル」とは何ぞやという視点の思料。そもそもタイトルとは何かを考え始めると、その意味合いや機能性(タイトルにも機能がある)について、幾つもの考え方がででくる。深く考えると、同じ藝術という範疇でも、絵画と彫塑と音楽と文学では、タイトルなるものの価値や歴史が、結構異なっているのがわかる。
    商品等のネーミング論とは一味違う、「名前付け」に対するアカデミックな考察が非常に面白い。

  • 「タイトル」について考えてみたこと、ありますか?
    あなたが美術館に行った時、はじめに見るのは「作品」ですか?「タイトル」ですか?
    「タイトル」は「作品」に対して、またあなたの観賞体験にどのような効果をもたらしているでしょうか。
    私たちの身のまわりには、たくさんのタイトルがあふれています。人の名前、商品名、本の名前・・・。タイトルの歴史と美学的考察を記述した、刺激的な一冊!
    (お薦め本レビュー応募作品2012★ギョロリン賞/人文・文化学群4年)

    ▼附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1439839&lang=ja&charset=utf8

    • tulipsさん
      思わず読んでみたくなるようなレビュー&素敵なイラストをありがとうございます。ところで、論文を書くとき、タイトルでいつも悩むんです。タイトル次...
      思わず読んでみたくなるようなレビュー&素敵なイラストをありがとうございます。ところで、論文を書くとき、タイトルでいつも悩むんです。タイトル次第では頑張って書いたものでも、全然読んでもらえないかも知れないですから。ちょっとこの本読んで勉強しようかなと思いました。ちなみに"ギョロリン”って名前にはどんな魔力が潜んでいるんでしょうね。
      (筑波大学附属図書館ラーニング・アドバイザー)
      2012/12/06
  • ネーミングのヒント探しで手に取ったら、意外に内容がごつかった(学術的でした)。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修課程卒業。同大学院人文科学研究科美学芸術学博士課程修了。埼玉大学助教授、東京大学文学部教授、日本大学文理学部哲学科教授を歴任。元国際美学連名会長。現在、東京大学名誉教授、国際哲学系諸学会連合副会長。文学博士。1982年、『せりふの構造』でサントリー学芸賞受賞。著書に『せりふの構造』『作品の哲学』『ミモザ幻想─記憶・藝術・国境』『美学辞典』『美学への招待』『日本的感性─触覚とずらしの構造』『ディドロ『絵画論』の研究』ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第6巻 スピリチュアリティと芸術・芸能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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