- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121016362
感想・レビュー・書評
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何度も読み返している。
Amazonの古書で購入したら、重要な部分に赤線が引いてあったのだが、それも役に立つ(それ以外は綺麗なので、なんで手放したのかな・・とはちょっと気になるけれど)
オーラル・ヒストリーは「同時代史」の記述の一つの方法である。
個人または組織の経験を、複数回(十数回以上)にわたり、専門家が2~3名で聞き取りを行う。短い期間では、意思決定のケーススタディとして、長い期間においてはその他の文書群を補完する歴史資料としての価値がある。
新書というコンパクトな形式で、「定義」「メソッド」、国内外の実例の紹介や著者自身の実践などが語りつくされている。
読んで初めて、インタビューや警察の調書、ドキュメンタリーとの違いを知った。
冒頭でも紹介される「言わず語らず」についても強い印象があった。
語らないこと、また回答を避けることもまた重要な情報であることがよくわかる。
文字として、あるいは映像として記録されたものをどう読み解くかについても考えさせられるものだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本におけるオーラル・ヒストリー「公人の、専門家による、万人のための口述記録」の先陣を進む御厨先生が、オーラル・ヒストリーについて広く浅く平易にまとめてくれたもの。わりと古くてもう13年も前の本ということになる。オーラル・ヒストリーのハウツー本かと思って読み始めたら、そういう内容ではなかった。さすが御厨先生で、オーラル・ヒストリーというなじみのないもの、せいぜい成果物の読み手にしかならないであろうものについて、とてもわかりやすく様々な側面からまとめてくれている。途中で退屈するかと思ったが、そんなことなく面白く読み通せた。
公人たるもの、自分の活動のせめて総決算として公的な口述記録を残すべきであり、それが担保されている社会がデモクラティックな社会だという論には賛成。
何も即時的に公表されなくてもよいのだが、一定の時間がたったとき、たとえば政治的な転換点に関わった公人たちが、当時どのように考え、その転換をなしたのかということは、記録として残るべきだろう。もちろん、政治が潔癖すぎる必要はなく、清濁併せのんだりしながら行われてしかるべきものだとも思うが、とはいえ、記録にも残せないようなことはしないでくれというその歯止めのような役目も果たすのがオーラル・ヒストリーということか。
インタビューのしかた、話の聞き方、記録のしかたなど紹介されている小技も、いろいろコミュニケーションに使えそう。 -
歴史研究では文献資料(いわゆる史料)を用いるのが基本であるが、近現代に入ってくるとどうしても階層によっては史料が限られ、不明な事柄が多い。
そういった事柄を補ってくれるものとして近年研究手法として注目されているのがオーラル・ヒストリーである。
本書は、オーラル・ヒストリーの手法や事例を具体的に紹介している。御厨氏は、オーラル・ヒストリーは単なる資料としてだけでなく、自己評価のきっかけとなり、且つ説明責任を果たしうるものとしてデモクラシーとの関わりにおいても必要なものであるとしている。
そういった意味で、御厨氏の定義した「公人の、専門家による、万人のための口述記録」は至極本質をついている。
日本では自民党の一党優位体制の下で、一つの官僚組織や企業などが強固な一枚岩であった筈が、体制の崩壊とともに組織が割れて弱体化していった。
そうした状況下で、従来とは異なり、組織の中における自分を客観的に見るゆとりが発生する。これが日本のオーラル・ヒストリーの展開に影響を与えた。
欧米に比べるとまだまだ遅れているが、本書の事例や手法の検討を進めることで、オーラルの資料的な精度を上げていくことができるだろう。 -
ラウンジ
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政治学だけでなく、高等教育分野にも組織のオーラルヒストリーとして展開できるものと考えられた。
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最新は2011年発行の再版。デジタルアーキビスト講座の課題図書(?)だったので購入。ただの面接的インタビューとはどう違うのか,という雰囲気は掴めたような気がする。そもそもどういうタイプのものにしても面接(聴く方)の訓練を受けたことがないので,難しさとか具体的なこととかは想像の域を出ない(これは自分の側の問題であって,本の問題ではない)。
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<閲覧スタッフより>
経験や歴史をインタビュー形式で記録するオーラル・ヒストリー。個々の意思や想いまで抱合するこの形式は、資料として以上の特殊な歴史的価値を持っている。その意義から、準備・実践・まとめまで、具体例を交えた解説書となっています。
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所在番号:新書||210.7||ミク
資料番号:10143938
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例えば、公共事業など巨大プロジェクトの検証や調査を行う際に、関係した人々にインタビューをとることがある。インタビューデータからは、数値資料だけでは見いだせない、プロジェクトの裏側や成功や失敗の要因などを知ることができる場合があり、様々な分野でインタビューによる調査が行われている。そのような調査を行う前に、ぜひとも読んでおきたい1冊が本書である。オーラル・ヒストリーやインタビュー調査に関する書籍は近年様々出版されているが、本書はその中でも大変読みやすい。調査の意義や方法もコンパクトにまとまっていて、実践する際にも大変参考になる。卒論や実習などで、インタビュー調査を考えている人たちには、参考文献の手がかりの1冊としてぜひお薦めしたい。
(2012ラーニング・アドバイザー/シス情SATO)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1240803&lang=ja&charset=utf8 -
「公人の、専門家による、万人のための口述筆記」を、後世のための記録としてまとめていく、オーラル・ヒストリーについて、目的やノウハウや注意点、そして多彩なエピソードを含めて綴る。新書だけあって、非常に読みやすく、興味深いエピソードも満載で、とてもお得な感じのする良書だ。
ただ、読みやすいがお手軽な本ではないので、何かを学び取ろうという気持ちで読んでいく必要はある。噛めば噛むほどおもしろい骨太の内容なのだが、語り口は非常に淡々としているので、漫然と読んでいると面白さを見失ってしまうおそれがありそうだ。
学術的な部分に興味がない人は、第2章や第3章などの、具体的なオーラル・ヒストリーのエピソードが色々出てくる、御厨の現代史考察なども含めた部分から読むといいだろう。「政治とは何か」「政治家とはどういう資質を持つべきか」といった、重いテーマも投げ掛けてくれる。
新書の宿命で、今は品切れで手に入りにくいのが非常に惜しい。再販を心待ちにする次第である。