- 本 ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121016621
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「超」文章法
伝えたいことをどう書くか
著:野口 悠紀雄
紙版
中公新書 1662
本書は、文章を書く際にすぐ使えるマニュアルになることを目指している
その対象は、論述文である。つまり、論文、解説文、報告文、企画書、評論、批評、エッセイ、紀行文などである
この手の文章の目的は、読み手を感動させることではない。読書を説得し、自分の主張を広めることだ。
「ためになり、面白く、わかりやすい」文章だ。
気になることは以下です。
■メッセージこそ重要
・メッセージの明確化
執筆作業で最も苦労するのは、テーマの発見だ。うまいテーマを見つければ、あとは何とかなる
つまり、重要なのは、形式ではなく、実体、伝えたいメッセージの内容である
・メッセージといえるものは
①ひとことでいえる
②どうしても書きたい、突き動かされるように書きたい
・ピントをあわせる
文章を書く作業は、見たまま、感じたままを書くことではない、その中から書くに値するものを抽出することである
・広いと浅くなる
①広いテーマを一定字数で論じようとすると、どうしても浅く薄くなってしまう
②こうしたテーマは、すでに先人たちによって語りつくされている。それに付け加えるものはほとんどない
・ではどうすれば、メッセージが見つかるか
⇒ メッセージを見つけるには、ひたすら「考え抜く」しかない
⇒ 考えない限り、アイデアは生まれない
⇒ 裏命題、考え抜けば、アイデアは降臨するのか?
⇒ 私は、多くの場合、正しいと信じている
・対話で見つかる
・パソコンで書いたものを紙に打ち出して持ち歩いてみる。読んで気づいたものを、書き込む、修正する
すなわち自分と対話をする
・教科書に書いていることはテーマにならない。すでに重要な論文の内容をまとめたものが教科書
論文になるのは、教科書に書いていないものということになる
・なぜ、メッセージが8割の重要性にも関わらず、メッセージの発見法がかいていないのか
⇒ マニュアル的なノウハウがないから。ノウハウがないことがノウハウなのである
・考え抜くには、考え抜くための環境を準備することだ。
・書くに値するメッセージなのか。
必要条件は、ためになるか、あるいはおもしろい
十分条件は、ためになり、しかも面白い だ。
・読者は誰か?
①ためになるかどうかは、読書によって大きく違う
②読書の理解度を想定する必要がある。書き手が当然とおもっていることも、読み手が知識を持ち合わせていないことが実に多い
■骨組み 内容面
・冒険物語、内容面での骨組みづくり ~プロット~
①故郷を離れて旅にでる
②仲間が加わる
③敵が現れる
④最終戦争が勃発する
⑤故郷に帰還する
・なぜ、旅にでるのか それは故郷にいても、日常であり、事件が発生する余地がないから
・なぜ、故郷にもどるのか それは、家ほどすばらしいところはないといいたいから
・なぜ、悪役が必要なのか
①反対概念や、対立概念を示せば、それと対比して元の概念の正確をはっきりできるから
②対立するものがいないと、話がおもしろくないから
■骨組み 形式面
・文章には、短文と長文しかない
・全体は、序論⇒本論⇒結論 の3部作で
■筋力増強
・比喩(たとえ話):明白なことを持ち出して、それと同じ論理構造になっているとする説明法
簡潔であり、協力である
・比喩を使うと論理関係がすぐにわかり、かつ印象に残る
・抽象的な数字もわからない
失業率5.6% はイメージ浮かばない
失業者350万人 で、もう少しはっきりする
横浜市の人口とほぼ同じ といわれると具体的なイメージになる
・引用とは権威に頼ることである
①私はこう考えるより、ゲーテがこういった、のほうが説得力がある
②引用は、筆者を守る。護身術として引用をつかう
③論文の内容が思い付きや独りよがりでないことを引用は語る
この3つが引用の効果である
・西洋は、聖書、シェークスピア、ゲーテが3大引用元であるが、日本では、徒然草である
・エピグラフ 本や、章のはじめにある題辞のこと、モットーともいう
■化粧 わかりにくい文章と闘う
・単文 主語+述語
・重文 複数の短文を順にならべたもの
・複文 複数の短文が、入れ子式になったもの
・どうすればいい
⇒ 複文を分解し、主語を2こ以内に
⇒ 漢語をつかって、節を句に変える
⇒ 余計なものをすべて削る
・日本語の特徴は、最後まで読まなければ意味がわからないことだ
⇒ 文と文とのつながりを接続詞で、明確にする
⇒ 接続詞をパラグラフの先頭にもってくる
⇒ 代名詞をさけ、名前をつける
・書き方
①結論を先にいうか、理由を先にいうか
②一般⇒具体か、具体⇒一般か
・わかりやすい順序にする
⇒ 最初に見取り図を示す
⇒ 箇条書きにする
⇒ 脱線、注記を明示する
・わかりにくさ
⇒ 部分と全体の関係がはっきりしない
⇒ 論理関係を正確に
・役人向け国会答弁用わかりにくい文章の作り方
目標は、正確であり、かつ、わかりにくい
⇒複文を多用
⇒複雑な文構造にする
⇒修飾語と被修飾語の関係をあいまいに
■化粧 推敲
・文章表現に唯一絶対というものはないのだから、あまり神経質にならなくてもよい
・形式チェック
⇒タイトルは適切か
⇒章・節・パラグラフは適切か
⇒誤字脱字
⇒読点は適切か
⇒漢字、かな、カナの比率
⇒表記や用語の統一
・表現チェック
⇒簡潔に、削りに削る
⇒同じ表現を避ける
⇒語尾は適切か
⇒が、はパラグラフの中では、2回まで
⇒思い違いに注意
⇒避けたい表現
①乱用されている表現
②陳腐な形容詞、副詞、比喩
③内容空虚な紋切り文
④不快感を与える表現
⑤品位を下げる表現
⑥カナやアルファベットが異常に多い
■始めればできる
・まず始めよ
・始めれば完成する
・パソコンを使えば、いくらでも修正できる
・読みやすい文章を書く秘訣、とりあえず捨てること
・対話とメモで修正
①自分自身と対話する
②すぐに消えてしまうアイデアをとりあえずメモする
目次
プロローグ
第1章 メッセージこそ重要だ
第2章 骨組みを作る(1) 内容面のプロット
第3章 骨組みを作る(2) 形式面の構成
第4章 筋力増強 説得力を強める
第5章 化粧する(1) わかりにくい文章と闘う
第6章 化粧する(2) 100回でも推敲する
第7章 始めればできる
あとがき
参考書案内
索引
ISBN:9784121016621
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:280ページ
定価:780円(本体)
発売日:2002年10月25日 -
文章の書き方についての、巻末の参考書リストがよい。ハズレを遠ざけ、アタリを近づける。
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読者を説得し自分の主張を広める文章を書くためのマニュアル。
先日仕事で作成した提案書の反省・振り返りとして、とても良いタイミングで読了。
繰り返し学びたい。 -
教養として、とっかかりとして付き合って行こうと思う。
ただ、ちょっと論調が怖い。おっさんの説教じみた感じが否めない。センスがあるかといえば−1☆。 -
野口流、文章読本である。
本書で最も重視していることはメッセージ(テーマ)の明確化だ。
「『メッセージ』とは、どうしても読者に伝えたい内容である。それは、『ひとことで言えるもの』でなければならない。文章が成功するか否かは、8割方この段階で決まる。そして、メッセージは『考え抜く』ことによってしか出てこない。(p6、p245)
最重要ポイントが「考え抜く」ことによってしか出てこないとは、身も蓋もないが、それは真理なのであろう。たとえそのことが気に入らなくても、構成や表現の仕方など、学ぶところは多い。内容が充実しているので、読みごたえがある。
また、所々にユーモアや皮肉が込められており、いい文章を読んでいるときの心地良さが得られた。個人的におかしかったのは下記である。
「『かしら』で終わるのは、吉田秀和氏級の書き手だから許されるので、普通は避ける方がよい」(p210)
このネタがわかる人は10人に1人もいないだろう。わかるのはクラシック音楽ファンだけだ。自分で「削れるだけ削れ」と指南している本の中に、必要ではないことを書いている。自分の好きなクラシック音楽に関する話題は、書きたいという姿勢が垣間見れ、ほほえましく感じる。
私は、本書でも参照している「理科系の作文技術」など、いろいろな文章術の本を読んできた。この本はそのうちの、上位ランクに入れておくことにしよう。
昨今の文章読本はあっさりとしたものが多いが、本書はそうではない。きっちり、理路整然と書かれているので、そのような本が好みの人に特にお勧めである。 -
メッセージが大切で,メッセージを生み出すには考え抜くしかない。ごもっともですがw
内容面のプロットと形式面の構成の区別。前者には物語の構造が活かせる。
文章には短文(1500字)と長文(15000字)しかない。
色々と具体的でハウツーとして有用なのだけれども,とにかく著者は書くことが好きなんだなというのが正直な感想。今でも現役で書き続けているのはそれだけで尊敬に値する。
始めればできる。
必読とされるスティーブン・キングの『小説作法』が絶版なのが悔しい。 -
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https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00149147
著者プロフィール
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