長州奇兵隊: 勝者のなかの敗者たち (中公新書 1666)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016669

作品紹介・あらすじ

戊辰戦争に勝利し、明治国家の中核となった長州藩。しかし、その栄光の歴史の陰には、好むと好まざるとにかかわらず戦い、斃れていった多くの無名の犠牲者が存在する。高杉晋作が創設し、勝利の原動力となった奇兵隊も、維新後は解隊命令が下され、内戦で多くの命が失われていった。著者は遺された史料や伝承をたんねんにたどり、懸命に生きた人びとの姿に光をあてる。違人伝や英雄譚ではない、本物の歴史がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • すごく面白かった。「本物の歴史」という名のミクロの歴史に焦点を当てていて、幕末の激動の中のそこには「人」がいたってことがよく伝わる本だった。この本を読むと幕末に起きた事件もまた違った見方ができるようになった。読みやすかったけど、手紙とか古文書の引用に現代語訳つけてくれるとありがたかった。

  • あらすじに書いてあった本当は「悲劇」な事実がいろんな人の思惑によって作り変えられたことにただただびっくりした。読みやすいので一気に読了。

  • 図書館で何気なく手に取った本だったが、内容は痛快と思えるほど興味深く、濃く、今まで知らなかった幕末維新の長州という、故郷の「本当の」姿をまざまざと解き明かしてくれた。こんなよい本と出会えたことを心より嬉しく思った。

    高杉晋作や奇兵隊については、非常によく知られていると思うが、本書では本人、あるいは奇兵隊の活躍についてはほぼ何も語られていない。代わりに、当時の長州にあって、幕末維新の激動の中で、これまでまったく表の歴史舞台では知られることのなかった、たくさんの長州人や関係する人々についてのエピソードを、丹念に拾い集めて、それらを語ることで、もう一つの幕末維新史の姿を描いている。著者の言う「本物の歴史」とはそれのことである。確かに、我々は小説やドラマ、映画などで幕末維新という時代を想像できるが、それらはあくまで光の当たる表舞台で、坂本龍馬や西郷隆盛、勝海舟などのヒーローが活躍する、華々しく脚色された歴史と言える。

    しかし、実際にはその舞台の影には、言わずもがな、数多の名もない人々、民衆がおり、そういった人たちにもその時代を生きた姿というものがある。かねてから、そういうものだろうな、というなんとなくの想像はしたことがあり、本書は、そういった人々や事件について、丹念に資料をあたり、また多数の色んな人々から聞いた話を集めてきていて、最初から最後まで、飽きることがなかった。

    維新後、特権や収入の元を絶たれた士族の反乱は、西南の役など、昔学校で習った程度の知識はあったが、山口県においても、維新が終わり、不要になった兵士たちの処遇に苦労があったことや、多くの反乱があったことについては、本書を読むまでほとんど知らなかった。世界的にも驚くほど血の流れなかった一国の革命として認知されているはずの明治維新の裏に、実はやはり当然のごとく、血なまぐさく、凄惨でどろどろとした事件が数多く起きており、またそれらに対し、出来上がったばかりの体制を懸命に維持するために、情報の隠蔽や改変があった。今更ながら、革命というものがきれいごとで済むはずなど決してないことを証明する、多くの驚くような事実が語られている。

    維新幕末の歴史において、本書で取り上げられている様々な個人個人の生き様、死に様に一つ一つ感嘆しながら、現代に生きる自分の生と死について、いろいろと考えさせられた。

    山口県に生まれ育ち、自分も長州人であることは常に意識からはずれたことがない。同級生、先輩後輩にもぜひ一読を薦めたいと思った。

  • 歴史は勝者によって作られる。よって敗者の視点から歴史をみることが大事…そのことをあらためて実感させられる新書でした。

  • こういう本が読みたかった。
    歴史に埋もれた人々の記録。
    歴史に残るのは偉人だけじゃない
    もっともっとたくさんの人がたしかに存在していたんです、
    っていうことを改めて考えさせてくれる本。

  • 維新の「勝者」とされる長州藩のなかでの敗者たちにスポットをあてた一冊。萩博物館学芸員の一坂さんの初期の頃の著書で、全国の長州関連の墓碑等や聞き取りなど、調査方法が一般的な他の近代史の方とは異なっているため、内容が被らず◎。明治を生きた世代の生の声が聞ける最後の世代、ということをおっしゃっていましたが、山口に在住していた幕末~明治を知る人々から語りきいた内容もあり、面白い。個人的に久坂ファンには見てほしい。かなりお勧め。でもこの後著者がどんどん暴走していっているような…(笑)

  • 長州関係で読んだ初めての一冊。
    語り口調で書いてあるので非常に分かりやすい!これはお勧めできる。一気に読んでしまった。
    西軍のことはちんぷんかんぷんだったが、読み終わった頃には大体の流れを把握できた。史料だけではなく、古老の話や御子孫の話なども盛り込んでおり華々しい話は一つも無いが、高杉晋作や伊藤博文、木戸孝允などの有名どころ以外の長州の流れを知りたかったので大変役に立った。
    それにしてもこの本は、著者様が他県出身者だからこそ書けたんじゃないかなと。冷静な視点で書いてるなあと思った。自分の過去の説に対して新たに分かった事、間違って解釈していた事などにはきちんと訂正を入れている所がなんか新鮮だった。

  • 通り一遍な専門書ではなく。
    郷土に残る伝承や忘れられた墓碑などを集めた、郷土史のような本です。
    文章も平易で読みやすく、調査の過程なども細かく書かれているので参考になります。
    ただ「中央」の歴史や「本物の歴史」など、山口の歴史の立ち位置に思い入れが強いようで。
    気持ちはわからなくもないですが、歴史「小説」と比較、否定でお話されているので、良い本なだけに少々勿体ない気がします。

  • [ 内容 ]
    戊辰戦争に勝利し、明治国家の中核となった長州藩。
    しかし、その栄光の歴史の陰には、好むと好まざるとにかかわらず戦い、斃れていった多くの無名の犠牲者が存在する。
    高杉晋作が創設し、勝利の原動力となった奇兵隊も、維新後は解隊命令が下され、内戦で多くの命が失われていった。
    著者は遺された史料や伝承をたんねんにたどり、懸命に生きた人びとの姿に光をあてる。
    違人伝や英雄譚ではない、本物の歴史がここにある。

    [ 目次 ]
    第1章 「本物の歴史」を求めて
    第2章 松陰を神格化した人たち
    第3章 堕落する「志士」
    第4章 墓碑は語る
    第5章 町かどの維新史
    第6章 「志士」たちの「内ゲバ」
    第7章 「俗論派」の維新
    第8章 異郷の土になる
    第9章 悲劇の長州奇兵隊
    第10章 窮乏する士族たち

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 幕末(現・山口県)の長州藩で非武士層によって編成された義勇軍・奇兵隊についての解説書籍。

    解説書籍に多い、難しく理論的な内容(説明)でなく
    著者:一坂氏の素直な言葉で綴られた わかりやすい解説書です。

    そのため すんなりと読み進められ(お馬鹿な私でも)素直に読み込めましたww


    本書は 長州奇兵隊の栄光と闇を解説した書。
    この1冊で 隊の殆どがわかります

    是非、御勧め

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著者プロフィール

一坂太郎

萩市立博物館高杉晋作資料室室長。1966年兵庫県芦屋市生。大正大学文学部史学科卒業。歴史研究家。著書『幕末歴史散歩 東京篇』『同 京阪神篇』(以上中公新書)、『高杉晋作』(文春新書)、『坂本龍馬を歩く』『高杉晋作を歩く』(以上山と渓谷社)、『司馬遼太郎が描かなかった幕末』(集英社新書)、『わが夫坂本龍馬』(朝日新書)ほか多数。

「2020年 『暗殺の幕末維新史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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