ドイツ町から町へ (中公新書 1670)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016706

作品紹介・あらすじ

ドイツの町には、おどろくほど個性がある。通りや建物、広場から、民家の屋根や壁の色、窓のつくりにいたるまで、土地ごとに様式があり、みごとな造形美を生み出している。長らく領邦国家が分立していた歴史的背景から、町ごとの自治意識が強く、伝統や風習に誇りを持っている。港町、川沿いの町、森の町、温泉の町-。ドイツ各地をめぐり、見過ごされがちな風物や土地に根ざした人々の息づかいを伝える紀行エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年頃というと、今から15年前ですか。
    その当時、まだ存命だった池内紀さんの作品を、良く手に取っていたものです。
    本作もその一作。

    著者、池内紀さんは、次のような方です。(ウィキペディアより)

    ---引用開始

    池内 紀(いけうち おさむ、1940年11月25日 - 2019年8月30日)は、日本のドイツ文学者・エッセイスト。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    ドイツの町には、おどろくほど個性がある。通りや建物、広場から、民家の屋根や壁の色、窓のつくりにいたるまで、土地ごとに様式があり、みごとな造形美を生み出している。長らく領邦国家が分立していた歴史的背景から、町ごとの自治意識が強く、伝統や風習に誇りを持っている。港町、川沿いの町、森の町、温泉の町-。ドイツ各地をめぐり、見過ごされがちな風物や土地に根ざした人々の息づかいを伝える紀行エッセイ。

    ---引用終了

  • 著者の池内紀氏はゲーテやカフカの翻訳、研究で名高いが、また一流の紀行作家でもあり、その方面での著書も多い。ドイツの町がそれぞれに魅力的なのは、その一つ一つに固有の歴史と文化的背景があり、それが守り続けられているからである。そして、それを支えているのが自治の精神であり、それは州単位などではなく、町や村の単位でのものなのだ。つまり、横並びでナンバーワンを目指すのではなく、それぞれが個々にオンリーワンなのだといってもいい。ただ、そうした町のいくつかに(それも結構な数だが)共通して影を落としているのがナチスだ。

  • 著者が文学者ということで、どんな場所にもどんな歴史にも文学が根を張っているという事実を噛み締めながら読みました。歴史も文学も人間が作るものなのだから繋がっていて当たり前か。ドイツには城や建造物が眩暈がするほど昔から残っていて、それらをこれからも残していくのが当然という雰囲気、新しく町を造るとき(或いは戦争で破壊された町の再建)のしっかりと先を見越した町づくりなどに、日本には無い良さがあります。逆に、きっと変化する事や理解できない事を過剰に避ける傾向もあります。観光地然としすぎていない、わりと小さな町から町へ、著者が旅をしながら綴った短い章を追っていくとそれらがだんだん見えてきます。どの町のことも熱狂的に絶賛したりはしないのにどの町も行ってみたくなりました。そして出てくる文学作品を自分が全部読んでいたならもっと楽しかったかもしれない。

  • ドイツの有名な街からマイナーな街まで、1テーマが短く纏められておりテンポよく読み進められた。
    筆者の見ている風景から、歴史や文化の背景がとてもよく見えた。
    自分もこのように、様々な目線で物事を見ながら旅できたらなと思う。

  • 読書の楽しみは
    居ながらにして 異なる国へ
    居ながらにして 異なる時代へ
    居ながらにして 異なる思考へ
    連れて行ってもらえることです

    ドイツ文芸はむろんのこと
    この世の出来事に博覧強記の
    池内紀さん
    その池内さんの「ドイツ紀行」
    その風景はむろんのこと
    建物、川、町、路地
    そこにまつわる
    歴史、文芸のあれやこれや
    が心地よく語られていく

    それぞれの章は「町」の名がつけられている
    その「町」で出遭う
    その町で暮らしておられる
    なんでもない庶民の方とのふれあい
    がたまらなく魅力的である
    あったこともないのに
    その人にあったような気にさせられる
    行ったこともない町であるのに
    行ったことのあるような気持ちになってしまう
    旅は出逢いなのだ!

  • ひとつの町が2ページぐらいなので、どんどん読める。軽い読み物である。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00122289

  • 規模の大小問わず、ドイツの様々な町を歴史や文学をからめつつ紹介していて、楽しめる。
    読売新聞日曜版の連載をまとめたものということで、連載時には喜多木ノ実さんのイラストがついていたそうだが、本書ではその掲載がないのが残念。
    写真も非常に少ないため、折々インターネットで検索をして町のデータや写真を探しながら読んだ。

  • 紀行文であるらしい。筆者の主観も強く入っている。
    だが、あまりに冷静だ。どこまでも淡々とした文章は、いかにも年配の男性が書いたという雰囲気である。ついでに言えば、いかにも「ドイツ的」でもある。

    歯ごたえがあるので、一気読みはできない。少しずつ、時間をかけて読み進めていった。幸い、元が新聞連載であるため、各都市の紹介文は程よい分量にまとめられている。

    筆者が文学研究者であるためだろう、紹介文のいくつかに、その町の言い伝えが書かれているのが興味深かった。そういう話を知っていれば、ガイドブックに載っていないような小さな町にも寄ってみたくなるものだ。


    <豆知識>
    ワイン蔵はホテルに紹介してもらうといい。

    ****
    <気になる町>
    ・ケペニック:
    軍服を「令状」と称して市長をペテンにかけ、公金を巻き上げた靴職人フォイクトの町。後に劇作家カール・ツックマイヤーによって、ヒトラーをフォイクトになぞらえた喜劇「ケペニック事件」が書かれた。

    ・リューネブルク:
    「まるで色とりどりのサボテンにとり囲まれているかのような」町並み。「戦災を免れて、昔のままをとどめている町で、「一階は現代で、その上に中世がそっくりのっかっている」。早期に「生活と行政とを区分して、計画的に町づくりをした」ので、市(いち)の立つ広場と市庁舎を持つ広場の周りの佇まいが微妙に違う。

    ・ウルム:
    パンに関するあらゆる資料が集められた、「ドイツ・パン博物館」のある町。

    ・ガルミッシュ=パルテンキルヒェン:
    民家の壁に絵を描く風習がある町。
    ドイツでは、合併した町の名前はそのままくっついて残る。歴史を保存するため。

  • 著者によるドイツの紀行文集。誰でも知ってる都市から、すごくマイナーな街まで載ってて、一冊通してドイツの国家像が見えてくる感じがして面白かったです。何より著者池内さんの、各都市の風景が浮かぶようなテンポの良い文章と、豊富な見識に私は引き込まれました!!

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著者プロフィール

1940年、兵庫県姫路市生まれ。
ドイツ文学者・エッセイスト。
主な著書に
『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、
『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、
『恩地孝四郎 一つの伝記』(読売文学賞)など。
訳書に
『カフカ小説全集』(全6巻、日本翻訳文化賞)、
『ファウスト』(毎日出版文化賞)など。

「2019年 『ことば事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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