産業空洞化の克服: 産業転換期の日本とアジア (中公新書 1682)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016829

作品紹介・あらすじ

「失われた十年」と呼ばれる二十世紀最後の十年は、「もの作り」という点から見れば、日本の産業が急速に国際競争力を失っていった時期でもある。これまでにも企業の海外移転はあったが、生産ラインから開発部門まで、産業がフルセットで移転する事態は前代未聞である。コストの面で競争力を欠くわが国にとって空洞化はもはや止めようがない。企業レベル、政策レベルでの対応を提言し、日本産業復活の途を展望する。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は2003年の発行の日本の「産業空洞化」についての書だが、9年後の現在に読んでも、その指摘と考察は、的確な良書であると思った。
     「中国の追い上げ」の項は「躍進する中国」の当時の実態を的確に指摘し、当時中国が躍進するか、それとも様々な障害でハードランディングもありえるとの見方が交錯するなかで、その後の進展を正しく予想していると感じた。
     「企業の中国シフトと空洞化防止策」では、「全部門・全製造業で進む海外移転」と当時の時点の雪崩打つ中国への工場移転の実態、「産業空洞化」の懸念、その対策としての「生産技術の高度化」を的確に提案している。
     本書は「日本の産業空洞化をどう防ぎ、ものづくり大国をどう復活させるか」の考察の良書であるが、現在の視点からすると、その発想は国家と国境の壁が高い時代の考えであったとも思わせる。
     2011年3.11の東日本大震災で明らかになった製造業のサプライチェーンの実態や2012年のタイの大洪水による産業被害をみると、すでに製造業は東アジア全体に散らばっており、国家の壁を越えているとも思える。
     本書を読んで、9年前の実態を再確認する思いとともに、国境の壁が低くなっている現在のあり方が本書で考察していた「産業空洞化の克服」のひとつの結果であると思った。
     本書は、今から読むと古い本かもしれないが、読んでその認識の的確さを確認できる良書であると思った。

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著者プロフィール

1943年東京生まれ。東京都立大学法経学部卒。同大学大学院社会科学研究科博士課程修了。駒澤大学経済学部教授を経て、現在早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
著書に『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』(御茶の水書房)、『昭和ファシストの群像』(校倉書房)、『大東亜共栄圏』『日本軍政下のアジア』(以上、岩波書店)、『満州と自民党』(新潮新書)、『満鉄調査部―「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』『ノモンハン事件』(以上、平凡社新書)、『日本近代史を読み直す』(新人物往来社)、『日本の迷走はいつから始まったのか』(小学館)、共著に『満鉄調査部事件の真相』(小学館)、『一九三〇年代のアジア社会論』(社会評論社)など多数。

「2011年 『論戦「満洲国」・満鉄調査部事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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