国際政治とは何か: 地球社会における人間と秩序 (中公新書 1686)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016867

作品紹介・あらすじ

人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。その上で安全保障、政治経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。

感想・レビュー・書評

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  •  03年刊。国際政治の概説書と言うより、その性質を見る視座を提供する本。読みやすいが抽象的でもあり、奥行きは深い。
     著者は国際政治を、主権国家体制・国際共同体・世界市民主義という3つの位相の複合体と捉える。その上で、著者は自らの立場を「保守的と見なされるかもしれない」と自覚しつつも、主権国家体制を基本とした伝統的な国際政治の意義をなお認める。冷戦終結とグローバル化進展の認識がなおあっただろう03年という出版時期のためかもしれない。しかし、中国の影響力増加やBrexitがある今日、やはり著者の立場は妥当だったと思える。また著者は、「現代の電気的メディアによるコミュニケーション技術」が地球市民を生み出す、との論に批判的で、むしろ小さな集団で自己確認を強める傾向をもつようだ、と指摘している。これまた、著者の論が妥当だったと言えるだろう。
     他方で著者は、主権国家体制での問題解決を絶対視もしていない。内戦に対しては、国際社会の関与とそのための手段としての国際機構=国際共同体の有用性も認める。人権問題については世界市民的感情も認めつつ、同時に強制的民主化や人道的介入の範囲拡大の危険性も指摘する。要はバランスが重要だと考えているようであり、この点は師の高坂正堯に通じるかもしれない。

  • イギリスの文筆家フォースターの「直接知っている相手でなければ愛せないのです。そしてそれほど多くの相手を知ることが出来ません」っていう引用。
    だから「愛」で秩序を形成する代わりに「寛容」を持って文明を築くべきだと説いて、人間的な秩序と国際関係を照らし合わせてた。

    国際政治の内包する、安全保障、世界経済、文化的共存の根幹にあるのは「政治は人と人との営み。」

    平和や秩序の構築の美しさを言語化するのってすごいなぁ。

  • かの、高坂正堯の弟子の中でも最も学者としては名を馳せているであろう中西寛による、国際政治観に関する一冊であるから、いったい、どれほど楽しませてくれるのだろうかと期待していたのだが、最後のオチで一気にガックリさせられた。
    途中までは非常にコンパクトに、そして多くの文献を引用して、国際政治で話題になるトピックをまとめてある。
    彼は安全保障の位相、政治経済の位相、価値意識の位相という三つの位相に集約してそれらを歴史的に語るということを為していて、ちょっとしたまとめにはこれ以上ないくらいの本である。

    だがその一方で、それを発展させて「地球社会」について語る段になると途端に怪しくなってくる。
    全ての位相において問題が世界規模にまで達している現状に対して、それを地球社会だとかと呼んでいるようであるが、いったいそれが何なのかも、本当に存在しているのかも、これからもずっとそうであるのかも、何もわからない。無根拠に、歴史を一直線に捉えているようで、これを彼の歴史観として受け容れることに別に文句はないが、価値意識のところのように「かもしれない」連発をされたりなどすると、説得性に厚いとは到底思えない。

    彼はあとがきのところで、高坂の『国際政治』を役立てたように書いてあるが、僕にはそうは思えない。
    高坂は現実主義者である。そして中西は、未来の地球社会として主権国家体制に基づく戦争の残った世界を夢想するところから、自身も同じスタンスであるように表現をするが、それは高坂のいうそれとは異なっているように思えるからだ。
    高坂は自身を現実主義者と表現する時には、理想主義者に対してその手段や方策についてまで言及している点を重視してそう称していたように思う。別に自身が現状ある秩序を信じ続けていることが所以ではない。それは「リアリスト」という単語が、理論と共にきちんと定義づけられるようになった今の時代からすれば誤用なのかもしれないが、決して今でもそういう姿勢は重視されるべきだと思うし、中西の本書に最も欠けているのはこの視点であるように思う。

    といろいろ書いたが、立派な一冊であることは事実。

  • 著者は、「国際政治」を3つの位相で捉える。すなわち、「現にある秩序としての主権国家体制と、可能な秩序としての国際共同体と、理念としての世界市民主義」である(p. 266)。

    そして、これらの理念系を軸として、安全保障、政治経済、として価値意識の分析を行う。極めて幅広いイシューを扱いながらも、そうした問題への対処には、あくまでも主権国家体制の確立が肝要と解く。著者のスタンスとしては、リアリズム、それも穏当な古典的リアリズムと言ってもよいだろう。

    内戦や地域紛争であったり、あるいはグローバル化の萌芽であったりと、出版当時(2003年)の時代状況が反映されている箇所も認められる。一方で、主権国家体制に重きを置こうとする姿勢は、十分現代にも通ずるものであろう。

    また、序章及び各章において、古代、そして近代の政治思想を参照している箇所が多い。西洋政治をより深く学ばなければと感じた。特に、精神的・内面的な「ギリシャ的なもの」と、普遍主義的・技術的な「ローマ的」なもの、という対比は、目から鱗であった。

    「古代の政治のあり方が今日の我々に示唆を与え続けるのも、現在を見るときに我々はさまざまな介在物に目を奪われがちなのに対して、古代の政治はより単純で、それゆえに政治の本質を直接に映し出しているからではないだろうか」(p. 214)と著者は指摘する。

    主権国家体制を軸としながらも、あくまでも人間の営みとして捉えるという国際政治観については、是非結章を参照されたい。

  • 新 書 S||319||Nak

  • 2017/02/26

  • 【由来】
    ・「時代を見つめる『目』」

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • -108

  • ちょっと読みにくかったが、なかなか面白い観点も多くて勉強になった。
    ・独善的な行動パターンが、強固な味方を持ちにくく、したがってそういう政策が国際政治においてもちうる影響力も限られ、最悪の場合、孤立に導きかねない。
    などなど

  • 319||Na

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著者プロフィール

京都大学教授

「2013年 『国際政治学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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