モンシロチョウ: キャベツ畑の動物行動学 (中公新書 1689)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016898

作品紹介・あらすじ

モンシロチョウはどうやって結婚相手を見つけるのか?アオムシ嫌いの青年が、なぜか研究を始めることになった。乏しい予算で実験機器を自作し失敗をくり返すなかで、チョウが競争相手に競り勝ち、子孫を残すしくみを次々と解明してゆく…。動物行動学に画期的な影響をもたらした著者が、チョウの生態をやさしく解説する。また思い通りに行かない実験や国際学会でのハプニングなど、研究者の素顔をユーモラスに語る。

感想・レビュー・書評

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  • アブラナの葉についている卵を取ってきて育ててみた。小さなアオムシがどんどん葉を食べ大きくなっていく。さなぎになる。しばらく動かない。なかなか羽化しない。死んだかと思ってトントンとたたいてみると、ピクッと体をくねらせた。ある朝突如、モンシロチョウは抜け殻の横に姿を現していた。40歳近くのオジサンが、初めて体験し、感動した。本書では、モンシロチョウのオス・メスの見分け方から始まり、どのように交尾行動が行われていくかが丹念に語られている。著者がいかに試行錯誤しながら実験方法を考え出し、その結果に対して次にどのような行動に及んだかが、いくつものテーマにわたって語られる。読んでいて、自分もその場にいるような臨場感あふれる記述だ。たとえば、モンシロチョウの神経を取り出すような細かい外科手術の場面がある。特製のピンセットでつまみ出そうとするが手が震えてうまく使えない。よく考えると、その手術の前に、ちょっと思い荷物を運んでいたという。重いものを持った後におはしを握ったりすると手が震えることがありませんか。それです。だからそれ以降は、こういう細かい作業の前には決して重いものを持たない、安静にしておくことが大事と分かったのだそうだ。実際にやってみた人にしか分からない。私自身、このような繊細な動物実験というのをしたことはなかったが、本書を読むことでいっぱい疑似体験ができた。将来科学者を志す人は、ぜひ本書を通して実験のあり方を学び取ってほしい。何でも既製品で行うのではなく、たくさんの自前の実験器具を使う、何と創造的な仕事なんだろう。口絵のモンシロチョウは何とも美しい。何とも優しい写真だ。

  • モンシロチョウの雄が雌うを見分けるのは、雌の羽根が紫外色だからであるという事実は有名ですが、このことを発見したのが日本人、しかも本書の著者だとは全く知りませんでした。著者はモンシロチョウ研究の第一人者ですが、モンシロチョウに関する素朴な疑問から様々な実験を行い、次々とその生態の実態を明らかにしていきます。その過程をとても興味深く、そして専門的な言葉も非常に分かりやすく説明していますので、飽きずに最後まで読めます。とても身近な存在であるモンシロチョウの意外と知られていない生態なども為になりましたし、昆虫のみならず生物学を研究している方の苦労と醍醐味が伝わってきます。

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著者プロフィール

小原嘉明

1942年福島県生まれ.東京農工大学農学部卒業.同大学教授等を経て,東京農工大学名誉教授.現在,尚絅学院大学客員研究員.この間,1997~2005年の9年間,ケンブリッジ大学にてMajerus M. E. N.教授と共同研究.理学博士.専攻・動物行動学

「2021年 『本能―遺伝子に刻まれた驚異の知恵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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