日本文化論の系譜: 『武士道』から『「甘え」の構造』まで (中公新書 1696)
- 中央公論新社 (2003年5月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121016966
作品紹介・あらすじ
奈良・平安のいにしえから、日本人は自らの文化の特質について、さまざまな角度から論じてきた。それは、常に異国文化の影響下で自分たちの考え方やふるまい方を築いてきたことと密接な関係がある。本書は、明治以降、西欧文化が激しく流入する時期に焦点を絞り、一五人の思想家、学者、作家などによる代表的な日本文化論を比較文化的視点から読み解くことによって、近代日本人の自画像を検証する試みである。
感想・レビュー・書評
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外国の激動がひと段落し、近代国家としての枠組みが整い始めた明治中期から、脱近代文明原理の潮流が生まれた昭和後期までの日本文化を、民俗学、哲学、文芸、政治学、心理学など様々な分野からの文化論を引用し、多角的かつ通時的に鳥瞰した本です。
私見が入っておらず、端的な解説ながらも本著における収録作品との比較や同時代知識人の反応•批判、後世への影響なども記述されているため、日本文化史における各著作の位置付けを明瞭な形で把握することができました。
本著にて取り扱われている知識人の著作大半を(新渡戸稲造や柳田國男、九鬼修造や坂口安吾、丸山眞男など...)、名前を聞いたことはあっても通読したことがなかった浅学な自分にとっては、タイトルに期待したことが満足できる形で書かれていたので良かったと思います。 -
明治から現代に至るまでの主要な日本文化論をたどっています。とりあげられているのは、志賀重昂、新渡戸稲造、岡倉天心、柳田國男、折口信夫、柳宗悦、西田幾多郎、和辻哲郎、九鬼周造、谷崎潤一郎、川端康成、坂口安吾、岡本太郎、丸山眞男、土居健朗の15人です。
ただ、著者自身の観点はあまり正面に押し出されておらず、たとえば青木保の『「日本文化論」の変容』(中公文庫)などにくらべると、ややもの足りなく感じました。もっとも本書があつかっているのは、日本人のナショナル・アイデンティティをとらえようとする日本文化論ではなく、文字通り日本の文化そのものについての日本人による著作が中心となっており、批判的に検討を加えることは、はじめから著者のねらいとするところではなかったのではないかとも思います。 -
【目次】
序 鏡を覗きこむ日本人 [i-iii]
目次 [iv-v]
I 明治開国と民族意識のめざめ 003
志賀重昂『日本風景論』 005
欧化から国威復権へ/日本風土美の三特質、四要因/気候、海流/水蒸気/火山/西欧的発想と日本的文体/国家モデルとしての自然
新渡戸稲造『武士道』 019
世界人としての日本人/武士道とは/武士のたしなみ/武士道の将来/実践道徳の源泉/国と時代を超えて
岡倉天心『茶の本』 034
風流の形而上学/東洋伝統精神の書/虚と相対性/茶の空間/自他一体/人と自然/『茶の本』のスタイル/『茶の本』の位置
II 民俗の発見 051
柳田国男『遠野物語』『山の人生』 052
文化の古層を求めて/『遠野物語』/『山の人生』/山人の起源/その後の山の世界
折口信夫『古代研究』 068
『古代研究』/古代とは/他界/まれびと/貴種離流、みこともち、神の嫁/翁、もどき/聖と賎/日本文化の起源へ、深層へ
柳宗悦『雑器の美』『美の法門』 086
『雑器の美』/下手物、雑器、民芸/『美の法門』/無有好醜の願/他力、念仏、妙好人/柳民芸思想の普遍性と独創性
III 日本哲学の創造 105
西田幾太郎『善の研究』 106
『善の研究』/純粋経験/場所的論理と術語的論理/絶対無、絶対矛盾的自己同一/『日本文化の問題』/西田哲学の残したもの
和辻哲郎『風土』 122
多用な風土の発見/風土的存在としての日本人/モンスーン型風土、日本型風土/風土論的日本論の系譜
九鬼周造『「いき」の構造』 136
『「いき」の構造』の成立と位置/「いき」の諸相/『「いき」の構造』の独自性
IV 文人たちの美学 153
谷崎潤一郎『陰翳礼讃』 154
くらしの実感、随筆的議論/闇の美学/ふたつの女性像/陰翳の普遍性と民族性
川端康成『美しい日本の私』 168
西欧へ美的挑戦/自然との合一/「私」と「日本」
V 伝統日本への反逆と新しい日本像の発見 181
坂口安吾『日本文化私観』『堕落論』 182
『堕落論』/『日本文化私観』/生活の中の美/〈無頼〉とは
岡本太郎『縄文土器――民族の生命力』 195
縄文の発見/呪術的心性/岡本太郎の位置
VI 西欧近代社会モデル対伝統日本心性 207
丸山真男『日本の思想』 208
分析の実践/思想の自己閉鎖性と雑居性/国体/実感信仰と理論信仰/雑居から雑種へ/「である」と「する」/日本批判と進歩主義
土居健郎『「甘え」の構造』 223
「甘え」の着想/「甘え」の諸相/「甘え」と現代社会/戦後日本の折り返し点
むすび [239-242]
あとがき(二〇〇三年五月 東京 大久保喬樹) [243-245] -
特に前半、岡倉天心、柳田国男、柳宗悦を語ったところがうれしかった。
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あんまり面白くなかったのは私の知識不足かしら
買った後に気付いたんだけど、谷崎も川端も好きじゃないんだったw -
明治以降の日本文化論について、自然観・美意識・倫理・形而上学・言語・心理・歴史観など人文的レベルの観点から比較文化的視点で論じた書。
序 鏡を覗きこむ日本人
1 明治開国と民族意識のめざめ
・志賀重昂『日本風景論』
・新渡戸稲造『武士道』
・岡倉天心『茶の本』
2 民俗の発見
・柳田国男『遠野物語』『山の人生』
・折口信夫『古代研究』
・柳宗悦『雑器の美』『美の作法』
3 日本哲学の創造
・西田幾太郎『善の研究』
・和辻哲郎『風土』
・九鬼周造『「いき」の構造』
4 文人たちの美学
・谷崎潤一郎『陰翳礼讃』
・川端康成『美しい日本の私』
5 伝統日本への反逆と新しい日本像の発見
・坂口安吾『日本文化私観』『堕落論』
・岡本太郎『縄文土器-民族の生命力』
6 西欧近代社会モデル対伝統日本心性
・丸山真男『日本の思想』
・土居健郎『「甘え」の構造』