ヒンドゥー教: インドの聖と俗 (中公新書 1707)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017079

作品紹介・あらすじ

弁財天信仰、輪廻転生の思想などヒンドゥー教は、直接に、あるいは仏教を通して、意外にも古くからの日本人の暮らし、日常の信仰、思想に少なからぬ影響を与えてきた。本書は、世界四大宗教の一つでありながら、特定の開祖もなく、核となる聖典もない、いわばとらえどころのない宗教の世界観を日常の風景から丹念に追うことによって、インド社会の構造から、ガンディーの「非暴力」の行動原理までも考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 四半世紀をかけて仕上げたという本書は非常に分かりやすく、また読み物としても(自身の滞在体験なども織り交ぜつつ)飽きさせない引き出しが多く、ひとことで言って良書。

    ヒンドゥー教の特色をその宗教的寛容性に見る著者。ほかにも、最も超越的な修行者の極りっぷりと、庶民のご利益的信仰の落差がほかの宗教と比較して大きい、との感想も述べており興味深い。

  • ヒンドゥー教には律法規範の核となる聖典がない。
    ヴェーダは啓示だが律法書ではなく神を賛美し宥め儀式を解説する。集団によって信仰神の違いはあるが制度化された宗教集団ではない。
    また古代ヒンドゥー教は真理に到達する事を第一に考え、誰が何を考えたか記録する歴史に無関心であった。印刷媒体では真理を伝える事は出来ないと考え口伝を重視した。※口伝内容が真理だとどうやって保障するのか疑問だが。
    【信仰の目的】
    信仰の目的としては神からの恩寵として現世の利益を受けるため、最終的には自らの想念、肉体から解放され輪廻からの解脱することになる。
    【義務】
    義務は➀供犠を行い、➁ヴェーダを学習し、➂子孫(息子)を残すことにある。

    【かつてのヒンドゥー教】
    バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャはヴェーダの学習が義務だが、シュードラや女性は学習が禁止されていた。ヴェーダを習得していないと義務の1つである祭祀が行えない。
    だがヴァルナ(身分)よりも実際に重要だったのはジャーティ(社会集団)であり、ジャーティが違えば上下関係も大きく変わった。
    【改革運動】
    日々の仕事に集中して行為の貴賤や軽重は気にせず神への一途な献身により神との合一、輪廻からの解脱を説いたバクティ運動がヒンドゥー教を大衆信仰として根付かせた。

  • 著者の現地での体験談と合わせてヒンドゥー教について解説。読みやすい

  • 2017年11月に再読する

  • 解脱と云う考えは、全く非現実的であり、夫れ程人の心を惹くものではない。事実、夫れに就ては冗舌な議論がなされてきた事からも分かるように、夫れは学者達の単なる論題に過ぎない。解脱は決してヒンドウーの宗教儀式や礼拝の目的ではない。ヒンドウーの儀式や礼拝の中心目的は、現世的な繁栄である。そして、此の現実世界への専心の為に、この世に再び生まれ変わると云う輪廻転生の教義が、死後の生命に就てヒンドウーが提唱した全ての概念の中で、最も説得力の有る確固たる信仰になっているのである。彼らは此の世界を余りにも深く愛して居り、その為に幾度も生まれ変わった后ですら、永久に此の世を離れると云う可能性を、出来るだけ遠い先の、起こり得ない事にしたのである。
    p.337

  • ヒンドゥー教はなんでもあり!

  • ヒンドゥー教は、別に宗祖がいるわけでもなく、いろいろな神様を信仰するインド全体の世界観・文化・生活習慣なのだと理解。ヨガはそもそも心身を鍛え気の通りを良くして神に近付くための修練であり、その昔は川に浸かって内臓を取り出したり、濡れた布を鼻や胃に通すような修行も行われていたとか。現代のインド人科学者でさえも輪廻転生を信じている、とか。私の持っている価値観など、文化の中で培われたものであり、絶対的なものではないのだなと。異文化を知ることで日本を知ることができた本。そんなインドをみる筆者のコメントも、いきいきと好奇心旺盛でありながら、ヒンドゥを信仰する人々に対するリスペクトに溢れており、すばらしい読後感でした。インドに行ってみたいな。

  • 出版社による内容紹介
    “弁財天信仰、輪廻転生の思想などヒンドゥー教は、直接に、あるいは仏教を通して、意外にも古くからの日本人の暮らし、日常の信仰、思想に少なからぬ影響を与えてきた。本書は、世界四大宗教の一つでありながら、特定の開祖もなく、核となる聖典もない、いわばとらえどころのない宗教の世界観を日常の風景から丹念に追うことによって、インド社会の構造から、ガンディーの「非暴力」の行動原理までも考察する。”


    【目次】
    プロローグ ヒンドゥー教と日本人 003
    第1章 ヒンドゥー教とはどんな宗教か 023
    第2章 ヒンドゥー教はいつ始まり、どのように発展したか 063
    第3章 ヒンドゥー教の支持基盤-カースト制度 119
    第4章 ヒンドゥー教のエートス 153
    第5章 ヒンドゥーの人生と生き方 183
    第6章 解脱に向かって 251
    エピローグ シュリー・ラーマクリシュナの生涯と福音 363
    あとがき 379
    参考文献 386
    索  引 400

  • ヒンドゥー教のライフスタイルが見えてくる気がする

  • ヒンドゥー教について筆者の膨大なフィールドワークや
    研究の成果をもとに、初心者にも分かりやすく、
    その現実と理想を説明する一冊。
    馴染みの薄いヒンドゥー教を、
    本書を読み終わる頃には親しみと畏れをもって
    見つめることができるようになる。
    語り口の柔らかさもあって、
    穏やかにヒンドゥーの世界を知れる良書。

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著者プロフィール

1928年和歌山県生れ。同志社大学神学部卒業。インド国立ヴィッシュヴァ・バーラティ大学准教授を経て、帰国後、名城大学教授等を歴任。名城大学名誉教授。現代インド思想・文学専攻。


「2015年 『女声合唱とピアノのための 百年後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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