まともな人 (中公新書 1719)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017192

作品紹介・あらすじ

今回は「あたりまえ」について考えてみよう。こういう話題ならできるだけ具体的なほうがいい-。養老孟司が世の中の動きを定点観測。小泉内閣発足も、9・11同時多発テロや北朝鮮問題も、地球温暖化論や「新しい歴史教科書」問題も、何か通じるものがある。二一世紀最初の三年間の出来事とそれらをめぐる人々の姿から、世界と世間の変質をズバリ見通し、現代にはびこる「ああすれば、こうなる」式の考え方に警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • 「ループをモデル化することが学習」、「供給能力が有り余っている」、「テロリズム自作自演」、「鉛筆を落としたら拾ってはいけない。それを拾う人の仕事を奪うから。」、「少子化<ー子供はいらないと思っている<ー将来に悲観的」、「今の北朝鮮と戦時中の日本は一緒」

  • 本書は『中央公論』に連載された時評をまとめたものである。紙の本が2003年に出版されているので、その辺りまでの時事を養老先生はどう読み解くのか。興味深く読んだ。本書はKindleで読んだ。本書を読みながら寝るのが習慣だった。
    養老先生の本は面白い。つねに学びがある。
    当時特有のテーマもあるが、今だに繰り返し話題になるテーマを論じていることもある。それら全てに深みがあり、学びがあり、面白かった。
    脳が求めるのは「予測と統御」であり、これを「こうすればああなる」という大和言葉にするのに10年かけたと養老先生は言う。
    その意味で本書の時評は「予測を超える」内容であるがゆえに面白いのだと思った。
    それまでの予測を超えたものを掴むこと、それが学習の面白さかもしれない。
    状況に応じて判断枠組、思考枠組を柔軟に組み換えること。内田樹はそれを知性と言った。

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 「メタ欲望が肥大化するのは、それが単純な身体的欲求を置換するからであろう。しかし単純な欲求は、単純であるだけに別なものでそれを満たすことができない。別なものでそれを満たそうとしたとき、無限欲求の地獄におちいる。満腹中枢が壊れているならともかく、それが機能している人なら、食べ過ぎるはずはない。別な欲望を食べることによって満たそうとして過食におちいる。なぜそうなるかというなら、自分の身体の声が素直に聞こえてこないからであろう。その意味で、現代こそ心の時代そのものだ、というしかない。」

  • ついつい探してしまふ、養老先生の本。
    時世は移ろふ。考へることは、ひとや時間や場所に関係ない。それが本当のことだからだ。本来なら、かういつたことを話さなくても、彼は変はらず虫を採り続けてゐただらう。
    しかし、正直時世に対する考へなどどうでもよいと思ふときがある。読めば読むほど、どうでもよくなる。このひとにかういふことを語らせるために時間を使ふことが非常に惜しいと感じる。何かが存在するとは、生きること死ぬこと、もつとさういふことを聞きたいし、彼のことばでどう表現されるのか聞いてみたいと強く思ふ。
    彼が時世のことを語れば語るほど、時世のことなどどうでもよくなつてしまふ。世のことを真剣に考へれば考へるほど、世のことがどうでもよくなつてしまふ。世の中身よりも、世の形式、それがそれであるところのことの方がよつぽど興味がわいてきてしまふ。
    かうなつてしまつた以上、せつかく買つた本にも関はらず、ひょいと投げ出して、じつと思考の宇宙に漂つてゐる。
    自分にできることを続ける。それは魂の気質といつたらよいだらうか。そうなつてしまつてゐるものに対して、世の中とどう折り合いをつけるか。養老先生を読むたびに、考へる。そして、ああやつぱりさうとしかならないなと一周まわつてすとんと着地する。これでよし。

  • この人の本は共感できることが多い。私よりも多く苦労をし時代を観てきた重さがあるように思う。個人的にこころに留めておきたい考え方が記されていた。

  • 大学時代に読んだ。

  • 「あたりまえ」ってなんだろうか。なかなか答えることが難しいと思う。この本は、世の中のいろいろなことに対して著者が定点観測(実際に生身の人間が定点を持っていることに対する疑問はとりあえず置いておく)し、この「あたりまえ」に対して考察してゆく。悪くないが、まともではない人には通じません。

  • 古い上に、少々アクロバティックな論理に「芸」というか「華」というものがなく、読んでいて退屈。

  • 若干の読みにくさはあるが、著者独特の語りが癖になる。そう言えば死の壁以来だなあ、この人の本を読むのは。

  • あたりまえや常識なんて所詮人間の脳(意識)が考え出したもので、不変で確かなものなんてことはない。
    あたりまえとは自然であったり、身体(人は生物である)のことである。
    そこら辺を前提にものごとを考えてみようと思う。

  • 虫と関連する文が面白い。時事問題へのコメントは懐かしい感じですが本質は変わらないので問題に対する姿勢は共感が持てます。

  • 養老さんの本は相変わらず面白い。
    この本は2001年~2003年に書かれているから
    テロや北朝鮮についての話題が多い。

    「北朝鮮を見ていると戦時中の悪い部分の日本を見ているようだ」という言葉が印象に残った。

    また、筆者は個性という言葉の使用方法を痛烈に批判する
    「個性」とは体の事であり、心や考え方の事ではない。
    曰く、体は誰一人同じではないから「個性的」である。
    しかし、心は共有するもの、他人に理解できるものであるから
    本当に心や考え方が「個性的」な人は精神病院に行くことになる
    という。

  •  養老孟司さんは、〔現代こそ心の時代そのものだ〕の中で、「たとえば不安はメタ恐怖である。恐怖は対象が明確であるが、不安の対象は不明確である。不安の対象はかならず漠然としている。対象が特定されれば、それは不安ではなく、恐怖である」と書かれている。
     不安な状態から脱するためには、先ず、不安の対象を明確化することで、不安を恐怖に変え、対処方法を検討する必要があるだろう。対象が明確化されれば、具体的な対処方法も見つかる可能性があるからである。121101

     中国がいわゆる近代化をする。そのときの大問題はわかっていると私は思う。それはエネルギー問題、環境問題である。日本の十倍の人口を持つ国が動き出すのだから、十倍の影響があっておかしくない。

  • 養老孟司さんの本は読んでいてすごく共感というか、納得というか、そういうものができる。
    この本も「あたりまえ」、「まとも」といったテーマで色々得ることができた。

  • バカの壁より面白いと感じたエッセイ集。

  • 養老氏がベストセラー【バカの壁】を出した前後の頃の時事評論。

    本人が言っているように、この分野は得意でないようである。

    それなのに無理して書いた文章を読ませるとはどういうことなんでしょうね。

    そうは言っても、さすがに彼らしい個性的な見方をしている。

    だが、文章は分かりやすいとはいえない。

    【唯脳論】よりは読みやすくなったが、それでも発想と発想の繋がりが凡人には分かりにくい。

    【バカの壁】はベテランライターが彼とのインタビューで分かりやすく書いたから売れたのであって、彼本人はこの時点ではまだ柔らかくなっていない。

    その後に書いたものは、かなり読みやすくなっているのは、彼の努力の賜物である。

  • 古い読書記録より。

    「心に個性なんていらない」と豪語する氏の論は、語り口も捌けているしよく考えてつづられているので
    とても読みやすくすいすい頭に入ってくる。が、すこし強引の感もあり。
    挿絵がめちゃくちゃかわいい。

  • 親と自分、としか子どもという自分を見る視点をもたない子ども自身にとっては、自分に都合のよい意見が沢山見える。これを私が中学生の時に読んでいれば、それを易々と大人への武器にできたし、したのだろうけども。二十歳を前にした私が読んだからこそ、その先を考えることができたのだと思う。

    それについて日常と結びつけたりした呟き
    http://togetter.com/li/295027

  • 「まともな人」3

    著者 養老孟司
    出版 中公新書

    p63より引用
    “健康人だっていずれ病気になる可能性はある。
    それが医師会の殺し文句だが、だれでもいずれかならず死ぬ。
    そこはあまりいわない。”

     解剖学者である著者による、
    雑誌連載をまとめた時事評論集。
    学問や教育についてからカブトムシの角の話まで、
    解剖学者ならではの視点で一つ一つ解説されています。

     上記の引用は、
    医療制度改革について書かれた中の一文。
    結局立派だと思われていた医者のような方でも、
    自分の考えに都合の悪いことは口に出さないようです。
     著者の他の著書でも出てくる主張が、
    ここでも繰り返しでて来るので、
    しつこいのが嫌いな人は辛い一冊かも知れません。

    ーーーーー

  • すごく読みやすかったです。

  • ほんとにまともな事が書いてる本。逆に、まともではない本が多いことに気付かされる。養老孟司は面白い。

  • 最近なんとなくおかしいなあ、と感じていることを明快な論理で一刀両断してくれます。例えば、「他人の機嫌を損ねることは、いまでは社会最大の禁忌に近い」とか、「仕事がうまくいくために人間関係が大切なのであって、人間関係の後に仕事がついてくるわけではない」など、気持ちがすっとする主張が繰り広げられています。読んだあとはすっきりするのですが、日本の未来を考えるとだんだん暗澹たる気持ちになってきます。

  • 当時人気だった養老さんの本。「そもそも人間の脳って完璧は無いんだよね」という持論を軸に、世の中の諸問題に関して語ったもの。

    わかりやすく明快な答えが求められる日本の風潮や、原理主義のはびこる世界情勢に対して否定的な見解を示している。

    汎用性のある切り口だが、一つ一つの意見が薄味な感じがある。

  • [ 内容 ]
    今回は「あたりまえ」について考えてみよう。
    こういう話題ならできるだけ具体的なほうがいい―。
    養老孟司が世の中の動きを定点観測。
    小泉内閣発足も、9・11同時多発テロや北朝鮮問題も、地球温暖化論や「新しい歴史教科書」問題も、何か通じるものがある。
    二一世紀最初の三年間の出来事とそれらをめぐる人々の姿から、世界と世間の変質をズバリ見通し、現代にはびこる「ああすれば、こうなる」式の考え方に警鐘を鳴らす。

    [ 目次 ]
    学習とは文武両道である
    学問・経済・独創性
    現代こそ心の時代そのものだ
    真理をいえば身も蓋もないが
    教育を受ける動機がない
    いいたくないこと
    一身にして二世を経る
    ああすれば、こうなる
    ありがたき中立
    原理主義vs.八分の正義〔ほか〕

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 社会人にはこれくらいのやわらかさがちょうどよいだろう。

  • まともな人とは、どんな人か?別にこれが、本書の中心的テーマではないが、読み終わって、世の中って、まともやないことが多いなぁ~と考えさせられる。
    本書は2001年から2003年まで、中央公論に連載された時評を集めたものである。同時多発テロから「原理主義」の問題や、北朝鮮や地球温暖化の話など、この時の旬のネタで、いかに世の中の常識が「まとも」でないかを、浮かび上がらせている。
    人間の行動が「意識」(のみ)に左右されると考えるのは、近代合理主義の迷信であって、「意識」は、それを生み出している「脳」とイコールというわけでもない。そんなことを棚に上げて、なんでも「わかった」つもりで判断し、行動するから、社会はまともではないことであふれかえるのだ。
    以前は、大学に行くと言えば、近所のおやじに「バカになるぞ」といわれたそうだ。これは的を射た発言で、大学が「知識」のみを教えるところであれば、意味をなさない。知識を実際に活用できなければ、バカ同然、ということらしい。
    現実も、人間も生きている。それを知識にするということは、いかをスルメにするようなもので、スルメから生きたいかを想像することは困難である。現代社会に蔓延している問題の数々は、生きた現実に知識という一般化された、適合するかどうかわからないものを、勝手にあてがっているから発生しているのかもしれない。
    もう連載はされていないと思うけど、まだまだネタは尽きそうにない。

  • ●出会い
    ブックオフ
    ●purpose
    まともな人になりたい
    ●感想
    キーワードは「個性」「情報」「都市」「脳」「虫」
    最近(たぶん昔から・・・)、本読んでてちらほら目に付く「温暖化」と「原子力エネルギー」の結びつきとか面白く読めた。
    あと「個性」と「身体」の結びつきもなるほど~。
    短編集(!?)で読みやすい。

    ●おすすめ度★★★
    ●お気に入り★★★
    ●難易度★
    ●読み直し★★★★

  • “ほとんどの医師は、論文を書こうとする。学位を貰うためには、それが必要だからである。さらにそうした論文を書くのがもっとも得意な人が、大学では偉い医師になる。しかし論文をいくら集めても生きた人にはならない。そんなことはあたりまえであろう。論文はそのまま停止しているが、患者は生きて動いているからである。
    生きた人間を扱っている人を、そろそろ昼間に提灯でも灯して探し回らなくてはいけない時代になったらしい。教育とはまさに生きて動いていく人間を扱うことだからである。子ども以上に変化の激しい人間はない。情報化社会の人がなぜ教育が不得意か、以上でおわかりいただけると思うのだが。”

  • 書籍の発売日が古く(物々交換品)時事評論が多くタイムリーには少し欠けます。養老さんは世の中の価値観に迎合することなく自分自身のモノサシがあることがうらやましい。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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