物語 スペインの歴史 人物篇―エル・シドからガウディまで (中公新書)
- 中央公論新社 (2004年5月1日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121017505
作品紹介・あらすじ
国土回復のイスラム掃討戦で勇名を馳せた伝説の騎士エル・シド、皇帝カルロスの生母ながら幽閉の半世紀をすごした悲劇の女王フアナ、新大陸支配における同胞の悪行を告発した修道士ラス・カサス、不朽の名作『ドン・キホーテ』の著者セルバンテス、数多の傑作を描き残した宮廷画家ゴヤ、そして未完の聖堂サグラダ・ファミリアの建築家ガウディ。時代や出身地、活躍した分野もさまざまな六人の生涯を通して千年の歴史を描く。
感想・レビュー・書評
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スペイン旅行のための勉強本。軽くてスペインの電車の中で完読。
物語風に歴史を書いているところが、私のフィーリングには合わない点を除けば、スペインの有名人を知るのに良い窓口。コラムは為になる
・エルシド:傭兵隊長だったけど、強かったので後世で伝説化されただけなのね
・フアナ女王:ずっと幽閉されていたかわいそうな人
・ラスカラス:インディオ解放を唱えた偉い人
・セルバンデス:貧乏だったのね。
・ゴヤ:宮廷画家だけど、異端審問所に目を付けられる画を描いて言い訳に苦労した人
・ガウディ:カタルーニャ主義者の頑固な老人
コラム
・ジブラルタルはイギリス領
・ハプスブルクスペイン王家の肖像画の顎は長いのは笑える
・スペインの朝食はチョコレート。チュロスは美味しい
・レタス襟のフェリペ3世肖像画は笑える
・スペイン人は5回食事をする。朝食、10時半のティータイム、2時から豪勢な昼食とシエスタ、8時に仕事を終えてバル、 10時から家で軽く夕食、詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「物語スペインの歴史 人物篇」岩根圀和。中公新書2004。
大学の先生(外国語学部だそうですが)が書いたものです。この中公新書のシリーズは割と好きです。
総じて発見も多くて面白かったし、スペインの切れ端くらいは捕まえた気分になりました。
「キャパの十字架」への旅路の一環です。
・キャパ→ハンガリー生まれ→スペイン内戦への参加・撮影で有名に
・「ハンガリーの歴史」
・「誰がために鐘は鳴る」
・「キャパ写真集」
・「キャパ自伝 ちょっとピンぼけ」
・「物語スペインの歴史人物篇」
という流れです。
▼エル・シド
11世紀なんで日本で言うと源氏物語とかの時代ですかね。つまりは王朝に使えた名武将。ただ裏切られたりして一時はイスラム精力と結んだり。やはりスペインは地理の都合で北アフリカ経由のイスラム勢力と、ローマからやってくるキリスト教勢力、そして何より国境を接するフランスの勢力との三つ巴だったんだなということがよくわかります。そしてそれらからしたらやや「田舎感」がある場所だったのかな・・・
▼女王ファナ
1400年代から1500年代。なので日本で言うと室町時代から戦国時代初期。斎藤道三が1494−1556だそう。当時のスペインの王国と、フランスの王国の間の政略結婚の挙句に、塔に幽閉される悲劇の女王のお話。統一国家には程遠い封建制群雄割拠、それからフランスとの密接な関係が分かる。
▼聖職者ラス・カサス
1500年代。ピサロたちの時代。南米を極悪非道に侵略したスペイン。そのあまりにも残酷なやり口にキリスト教の観点から非を唱えた聖職者の物語。実効的な効き目はほぼ無かったんでしょうが。つまりは大航海時代の征服者たちのあまりにも弁護不可能なやり口を再認識。そしてスペインの、ヨーロッパの黄金時代もそこから始まる。
カサスさんのことは知らなかったし、その論は21世紀の現在にも通じるところがオモシロかった。強き者は何をしてもええんかい、という。そして、それを宗教の美名で覆うことの醜悪さ。
▼セルバンテスの物語
1600年代初頭。日本で言えば関ケ原の戦いの頃。この章は、つまりは老セルバンテスの近所で殺人事件があって、その警察の記録が残っていてセルバンテスも登場する、という以上の意味は読み取れなかった。
▼ゴヤの物語
1800年代初頭。日本で言えば江戸時代の中期ですかね。フランスでは「フランス革命~ナポレオン台頭」という激動期ですが、まだスペインでは当然牧歌的な王朝時代。(やがてナポレオンが攻め込んでくる。革命の輸出を受ける)
画家のゴヤが当時の権力者に頼まれて「裸のマハ」を描いたりする。その権力者が失脚すると「異端審問」にかけられたりする。だけど微妙に中世が終わりつつある。異端審問もぼちぼち形骸化しつつあったり。
でもまだ絵画のマーケットは王朝が持っている。中世だなあ。
▼ガウディ
1926年だから、昭和初期。ガウディが事故で死ぬあたりの記述。ガウディって生涯独身の身なり汚い変人だったんだなあ、という知識。それから、やっぱり「カタルーニャ主義」だった。この時代はスペインは「フランコ内戦前夜」まだ許された。それから、やっぱりスペインは「プロテスタントの攻勢、つまり宗教改革を浴びていない」。まあその代わり中世前後にイスラムとの共存や入れ替わりがあったわけだけど。悲しいくらいひたすらにカトリックに殉じてきたその純朴さと、イスラムとも混濁したカタルーニャの美学とが混ざるとサグラダファミリアになるのかな。 -
(「BOOK」データベースより)
国土回復のイスラム掃討戦で勇名を馳せた伝説の騎士エル・シド、皇帝カルロスの生母ながら幽閉の半世紀をすごした悲劇の女王フアナ、新大陸支配における同胞の悪行を告発した修道士ラス・カサス、不朽の名作『ドン・キホーテ』の著者セルバンテス、数多の傑作を描き残した宮廷画家ゴヤ、そして未完の聖堂サグラダ・ファミリアの建築家ガウディ。時代や出身地、活躍した分野もさまざまな六人の生涯を通して千年の歴史を描く。 -
先日読んだ本の姉妹編。その本で足りなかった部分を補う意味も込めて、本書では人物の営みとその生きた時代の雰囲気を伝えることを意図としたそうです。
『騎士エル・シド』『女王フアナ』『聖職者ラス・カサス』『作家セルバンテス』『画家ゴヤ』『建築家ガウディ』にしぼりました。
ぜんぶ面白かったー『聖職者ラス・カサス』は、身につまされて辛かったけどーひとつだけ気軽に読んでみようかというかたには『作家セルバンテス』をお薦めします。
姉妹篇で、ドン・キホーテ作者セルバンテスがレパント海戦で活躍、その後アルジェで5年間捕虜となる…など小説を超えた経験をしてきたことを知りました。
この本では、なんと、殺人犯の容疑で調べられ、その記録が残っているのです!
結局その事件は迷宮入りとなりますが、そのときの記録のおかげで、セルバンテスやその周囲のひとたち、当時のスペインの様子などが見えて、とても面白かったです。
岩根圀和さんの本、ほかにも読んでみたいです。
そしてスペインのことをもっともっと知りたくなりました。 -
前著が血なまぐさい場面ばかりだったので人間の営みを伝えたいとまえがきにあるとおり、エル・シド、フアナ、ラス・カサス、セルバンテス、ゴヤ、ガウディをそれぞれ主人公として人生の岐路を語る。
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Ⅰ 騎士エル・シッドの物語
Ⅱ 女王フアナの物語
Ⅲ 聖職者ラス・カサスの物語
Ⅳ 作家セルバンテスの物語
Ⅴ 画家ゴヤの物語
Ⅵ 建築家ガウディの物語 -
スペインの歴史を知る上でのはじめの一歩として最適。ここから各々興味ある時代の本を選択できたらと思う。
しかし、取り上げられたすべての人物が生きた時代それぞれがとても興味深い。個人的にはガウディを深読みしてみたいところ。 -
全ての人生に宗教がかかわる、あまりにもヨーロッパ、あまりにも熱く深い
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メモ
レオン・カスティーリャ王アルフォンソ6世(在位1072ー1109)
ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール -
前作、物語 スペインの歴史を読了してから読むのが望ましい。
著者プロフィール
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