マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017819

作品紹介・あらすじ

聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な、"娼婦=聖女"が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。図像資料多数収載。

感想・レビュー・書評

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  • 新約聖書に於ける"マグダラのマリア(マグダラと呼ばれたマリア)"の認知度はイエスと聖母マリアに次いで大きなものとなっており、ある程度の教養を得てある程度の年齢に達した日本人ならば知らない人はいないであろうというイメージがありますが、では実際に新約聖書でどれほどの活躍がなされているかと言えば「キリスト磔刑の立会」「キリスト埋葬の立会」「キリスト復活の証人」という限られた一部の章に登場するのみであるという事実にまず驚かされます。

    また例外としてルカの福音書のみに七つの悪霊をイエスに追い出していただいた女であり、使徒たちとともにイエスに従って福音の旅をする旨が記されているとのことです。

    新約聖書への登場はそれだけだというのにイエスと出会う以前は娼婦であったとか、イエスが一番愛した人であったとか、イエスの子孫を受け継いだ女性であったとか、実は黒人であったとか色々な説を見聞きする機会も多く、またマグダラのマリアに対して信仰する方々も世界には多く親しみさえ覚える存在であるかと思います。

    そんな"マグダラのマリア(マグダラと呼ばれたマリア)"に的を絞って14世紀のナポリではどのように受け止められていたのか、15世紀のフィレンツェではどのように受け止められていたのか、16世紀のローマではどのように受け止められていたのかなどを紐解いていく内容となっています。

    本書の魅力はマグダラのマリアに関する絵画や彫刻の写真も多く掲載されており、それら1枚1枚を丁寧に解説してくれることです。同一人物であるはずなのに芸術家によって暗い印象を受けたり、エロティックな印象を受けたり、躍動感ある印象を受けたりするのが面白いところであります。

    ときにはヴィーナスと見紛うような絵画も登場しますが、香油の壺が描かれているか描かれていないかで判断できるなど目から鱗の連続であり、マグダラのマリアという人物に興味がある方には大満足の1冊かと思います。

  • 古書店にて108円で。主にイタリアを中心とした美術・文学・宗教のテキスト解読を通じて、西洋の想像力にとってこの聖女がどのような役回りを演じたかを詳らかにしている。四福音書には〈回心した娼婦〉という現在の一般的な見方を特徴づけるいかなる記載も見当たらず、ルカ福音書の〈罪深い女〉や〈ベタニアのマリア〉をマグダラのマリアに結びつけたのは、典礼や聖歌の完成者でもある教皇大グレゴリウスによるものなのだという。娼婦にして聖女という二律背反的性質は、実は後世に作られた作為的なものなのだ。

  • 前半のスリリングさは後半にはないんだけども、面白かった

    インターネット以降の時代には、こういう情報の流転はどうなってくんでしょうね
    出版印刷より前の時代、一次資料ってものにあたれない時代に起こる情報の編集というのは面白い

    ポストトゥルースというけども、トゥルースな時代なんてあったのかな、それっぽいのがあったとしてもめっちゃ短い一瞬だったんだろうな、インターネットが一瞬描いた夢なんだろうな

    新約とか読んでもマグダラのマリアとかほとんど出てこないのに、どっからあんなイメージ出て来てんのかな、と思ってたのが納得できる

    これで外典とかあたり始めたらまた大変なことになるからそこは避ける

  • 女性史やキリスト教についての内容以上に、芸術についての記述が多数を占めている。
    それにがっかりしたわけではなく、むしろそこから女性史やキリスト教が見えてくる。

    古代キリスト教から世界宗教となった現在に至るまで、淫売、娼婦であったマグダラのマリアが尼僧の象徴のようになり聖女として崇拝され、現在ではイコンとなっている。

    大変面白く読むことができました。

  • マグダラのマリア,聖書に出てくるのは知っていたが,ヨーロッパの世界でこれまで注目を集めている存在であったとは驚きだ.確かに元娼婦で悔い改めたことは事実だが,女性の象徴的な存在となり,数多くの絵画や詩に出現している.なぜここまでこのマリアに囚われるのかよく理解できない.カラヴァッジョとレーニの絵画での扱いを考察した第3章「娼婦たちのアイドル」が楽しく読めた.著者の考えの推移が文章の流れで把握できる,のめり込むような書き方が良い.

  • 大変な力作である。エヴァでも、マリアでもない、マグダラのマリア。絵画、彫刻、文学を題材に、時代を経ながら、豊かなイメージの源泉であり続ける彼女を浮かび上がらせた著者の該博さと構想力は見事。

  • 聖書においてマリアと呼ばれる女性は複数存在する。その中で筆頭に来るのは当然に聖母マリアなわけだが、その次はといえばキリストと行動を共にし磔刑と復活とに立ち会ったマグダラのマリアということになる。娼婦から悔悛しキリストの死に相対したマグダラのマリアは、聖処女としてキリストの生誕を担ったマリアとは好対照の存在であり、古今数多くの美術作品のモチーフとされてきた。
    しかし、マグダラのマリアが娼婦でありやがて悔悛したということは、新約聖書の四福音書のどこにも書かれていない。それどころか、グノーシス主義の影響を受けた外典の福音書には、預言者・幻視者として卓越した能力を持つ彼女の姿が描かれている。
    現在僕たちが知ることのできるマグダラのマリアの姿は、決して初めから固定化されたものではなく、時代ごとの趨勢や要請に応じてその意味づけを変えてきたものであるといえる。聖と俗、敬虔と官能、精神性と肉体性、あるいは人を原罪へと至らしめたエヴァと聖母マリアとの間の存在、そうした両義性を必然的に内包するからこそさまざまな解釈が存在する。そうした変化のなかで「罪深き女」というイメージも付与されてきた。
    そんな、時代によって変転するマグダラのマリアを、多くの美術作品を参照しつつ丹念に追っていく。そこには多様な性格を与えられたさまざまなマグダラのマリアがいる。時代ごとにマグダラのマリアの意味づけ・解釈は変わり、そのたびに作品に描かれるマグダラのマリアはその姿を変える。その意味で、作品に表現されたマグダラのマリアの多様なバリエーションを紐解く作業とは、彼女を軸とした西洋美術の歴史を俯瞰することであると同時に、キリスト教信仰の歴史を振り返る作業でもある。

  • キリスト教に馴染みの薄い日本人だと"マグダラのマリア"という言葉と娼婦から聖女になったというイメージだけがひとり歩きしてしまっている感もありますが、本書では、そんな彼女について、聖書内での記述の検証から始め、バロック期からルネサンス期の絵画を中心に、彼女がいったい何者なのかを探っていきます。あまり宗教論にならず、あくまで美術史から検証されているので、キリスト教に馴染みが薄くても読みやすいと思います。参考として挙げられている絵画が口絵以外、全てモノクロなのがちょっともったいないと感じました。

  • 2000.01.01

  • 原田マハさんの「まぐだら屋のマリア」を読んで、もっと知りたくなったためにこちらを読んでみた。
    前知識の全くない私にでも読みやすくわかりやすい。
    マグダラのマリアが歴史とともにどのように受け入れられ、神聖化していったのか。絵画とともに理解することができた。
    絵画から読み取るその時代の考え方。多いにためになった。こんなことに興味を持つようになった自分にもびっくりだ。それほどまでに面白い。

  • 井出洋一郎さんの『聖書の名画はなぜこんなに面白いのか』で「マグダラのマリアに関してはこの本を」と強力にすすめていたので読んでみた。
    豊富な情報量に圧倒される。

    最初の章で、マグダラのマリアが聖書でどのように記されているか、福音書ごとに違いをまとめたものが面白い。
    さらに、娼婦のマリア、エジプトのマリア、ベタニアのマリアと混じり合っていくプロセスもよくわかる。

    欲を言えば、たくさん紹介されている絵画のほとんどが白黒だったのでもう少しカラーの絵があればさらに楽しく読めたと思う。

    マグダラのマリア研究の成果をこれだけくわしく新書で読めるのは本当にありがたい。
    著者の岡田先生と、知るきっかけを作ってくださった井出先生に感謝。

  • 【自分のための読書メモ】
     マグダラのマリア。聖書にはいっぱいマリアさんが登場し、こんがらがっちゃうんだけれども、お母さんの方ではなくて、娼婦でキリストの復活に立ち会った方のマリアさんについて扱っている。
     「聖女であり娼婦」というちょっとドキッとしちゃうのがこの人が負っているイメージ。本書では、そのアイデンティティがどのように形作られてきたのか、そしてそのアイデンティティがどのように利用されてきたかが、時代を追って丁寧に書いてあります。
     著者、岡田温司の名前で手にとって見たところ、彼の新書の初作品とのこと。正確さを優先させたためか、すこし論立て、記述に硬さがあるような感じがし、もう少しアッと読者を驚かせてくれるプレゼントがあったらなと思い、☆ふたつ。

  • 授業でやった時は何が何だかさっぱり分からなくなりましたが、この本できれいさっぱり解決しました。でも、処女懐胎の方が面白かったかな?個人的には。

  • マグダラのマリアさんって
    実は元娼婦じゃないかもって話と
    マグダラ像はいろいろな時代で変化し、
    その時代でしたしみやすいマグダラさんの設定になってるんだぜって話。
    マリア様みたいに神聖だけでなく
    エロティックでもあるマグダラさん身近で親しみやすくていいんよね!って本

  • 絵画や彫刻の面からみた、マグダラのマリア論。男性優位のキリスト教会において、マグダラが不当に貶められてきたことは疑いもないことですが、聖女として扱われたり娼婦として扱われたりしてきたなかにおいても、マグダラは美しい女性として繰り返し描かれてきたのですね。
    「改悛のマグダラ」はあちこちで見て知っていたのですが、マグダラがサント・ボームの洞窟に引きこもって瞑想と苦行に余生を捧げたことは知りませんでした。

  • [ 内容 ]
    聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。
    娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。
    両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。
    貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な、“娼婦=聖女”が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。
    図像資料多数収載。

    [ 目次 ]
    第1章 揺らぐアイデンティティ(福音書のなかのマグダラのマリア;外典のなかのマグダラのマリア;「罪深い女」=マルタの姉妹ベタニアのマリア=マグダラのマリア;隠修士としてのマグダラ;『黄金伝説』のなかのマグダラ)
    第2章 マグダラに倣って(イミタティオ・マグダレナエ)(フランチェスコ修道会;ドミニコ修道会;信者会(コンフラッテルニタ)とマグダラ 聖女たちの規範としてのマグダラ サヴォナローナとマグダラ)
    第3章 娼婦たちのアイドル(一四世紀のナポリ;一五世紀のフィレンツェ;16世紀のローマ;17世紀のローマ)
    第4章 襤褸をまとったヴィーナス(「この上なく美しいが、またできるだけ涙にくれている」;「何と美しいことか、見なければよかったほどだ」;「たとえ深く傷ついた人でも、なおも美しいということはありうるだろう」;エヴァと聖母マリアのあいだ;ジョヴァンニ・バッティスタ・マリーノの詩)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • マグダラのマリアの動画講座を見て、まとめと感想を書きました。

    http://rimaroom.jugem.jp/?cid=69

  • いつものように豊富な文献・図像をもちいた、わかりやすい「マグダラのマリア」論。この一冊で、西洋社会においてマグダラのマリアという存在がどのようにして生まれ、どのように消費されていったのかが説明されている。とくに面白かったのはバロックにおける多様性・多義性の議論。過去の著作物の中でも何度か言及されていたような気がするけれど、あらためて著者のバロック論というものをまとめてくれたらいいのに、などと勝手なことを思った。

  • 『マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女』(岡田温司、2005年、中公新書)

    新約聖書の福音書に登場する、娼婦でもあり聖女でもある「マグダラのマリア」。本書は、この女性は一体どのような人物なのかということ、この女性が中世においてどのように人々に―あるいは芸術作品として―とらえられてきたのかについて解説している。

    僕はキリスト教が専門ではないので、非専門外の人がこれを一回の通読で理解するのは不可能だったのですが、イエスの使徒の使徒とも称されるマグダラのマリアについての若干の、表面上の知識にはなったかなとは思います。

    (2010年10月28日 大学院生)

  • 聖母マリアの純潔とエヴァの原罪の間に配置されたマグダラのマリアは、解釈によって都合よく利用/消費された。
    15世紀までの教会によって規制・教化された図像に為政者である教会・修道会の権力性を、16世紀以降のバロック・ルネサンス期の図像に受容者の欲望を考えさせられる。

  • 1295夜

  • その身から悪魔を追い出して貰ったことからイエスに付き従い、磔刑を見届け、復活の場面にも居合わせた、マグダラのマリア。その後はマルセイユ郊外の洞窟で、瞑想と苦行に余生を捧げた、という伝承が残っている。キリスト教史には改悛のシンボルとして大きな影響を与え、数多くの芸術作品のイマジネーションの源泉となってきた聖女の姿を、様々な視点から描き出す。

  • 原罪を持つエヴァと穢れ無き処女マリアの間の女性、マグダラのマリア。

    多くの絵版と分かりやすい文章で読みやすかった。

    そもそもマグダラのマリアはキリストの復活という重要なモチーフの証言者でありながら聖書では曖昧な存在である。
    4つの主たる聖書の中で存在を否定的に書くものもあれば、好意的に記録しているものもある。
    彼女に好意的ではなかったであろうペテロが教皇の座につく事で、彼女の偶像は娼婦、悪徳からの回心のイメージがついてまわるようになる。

    欲望にその身を委ねながらも、イエスの教えに回心し、天上へ昇る事を許された女使徒。
    そのモチーフは芸術家達の創造性を刺激し、貞淑にして淫ら、美しくかつ敬虔という相反する要素の表現に苦心させた。

    何はともあれ豊富な図版がいい。

  • 10/6/11、ブックオフで購入。

  • 自分が想像していたよりマジメな感じでした。
    歴史とともに変遷する彼女のイメージを絵や聖書解釈を
    通して説明していく。

  • 苦手な新書を読もうキャンペーン!

    主に絵画を通してマグダラのマリアが時代によってどのように認識されてきたか、
    その変貌を辿る、というような本。

    ふつうにおもしろかったですよ。

  • 私事で読みましたが、
    あら、面白い。とっても。
    バロック時代のマグダラ像が好きでたまらない。
    沢山の面を見せてくれる聖女に魅了される本。

  • 現在読んでいる本です。これ凄いね。わかりやすい。もうちょっとボリュームが欲しかったところですが、丁寧で良いです。でも図がちょっとわかりにくい。レイアウトをなんとかしたほうがよい気がせんでもない。

  • 絵画の図版が多く面白かった。

  • これは最高に良かった。
    面白かったし、分かりやすかったし、美術史や宗教史と挟んで、文学論や文学史があるので、飽きなかった。(切っても切れないという理由もあるのだけれど…)
    論理的で文学的。
    私にとっての教科書。

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著者プロフィール

1954年広島県生まれ。1978年京都大学文学部卒業、1985年同大学大学院博士課程修了、岡山大学助教授を経て、現在京都大学大学院人間・環境学研究科教授。西洋美術史・思想史専攻。『モランディとその時代』で吉田秀和賞『フロイトのイタリア』で読売文学賞受賞。『処女懐胎』『マグダラのマリア』『キリストの身体』『アダムとイブ』『グランドツアー』『デスマスク』ほか著作多数。

「2018年 『映画と芸術と生と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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