日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書 1792)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017925

作品紹介・あらすじ

日露戦争は、日本とロシアにとってはそれぞれにきわめて影響の大きい戦争であったが、客観的になかなか評価が確定していない。戦後一〇〇年にあたり、その地球規模での意味に言及する試みがなされているが、本書は、ロシア近現代史の視点も含めて、戦争の背景・経過・影響を通覧しようとするものである。双方の認識に極端な差があったことが、戦争の帰趨にどのように影響を及ぼしたかを明瞭に伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 日露戦争終結(戦勝)100周年の年に出た本。知人(著者の授業を受けたそう)の勧めで読む。
    その当時、両国の当事者(戦争指揮者)が、知り得た情報を元に、どう状況を読み、何を得ようとして、どう動いたか、そのすれ違いのさまを丹念に追った作品。

    敵のある作戦が偶然にもうまく行った場合に、相手を過大評価したり、ある作戦が上手くいきつつあるのに、完遂前に放棄したり、と、色んなことが起こり得る。最後の方での考察は、後付け史観ではなく、俯瞰的に述べる感じで、全ての人は歴史の住人である感じがしてよい。

    日比谷焼き打ち事件(折角講和に持ち込めたのに賠償金が取れなくて一般民衆が暴徒と化した事件)は、民主主義の限界を感じる。

    日清戦争で「戦争は儲かる」という誤った認識が世間に根付き、日露戦争で、「戦争は儲からないけど、戦争が起こると新聞社は儲かる」という世俗が染み付き、社会が抑止力を失っていったのだろう。

    神社に行けば、多くの場所で、戦没者を弔う石碑がある。その地区から出征して亡くなった人たちの名前が刻まれている。大東亜戦争と並び、日露戦争は多い。そんな人たちの礎の上に生きているわけですね。

  • 日露戦争における日露両国の国家戦略を概説。火遊びのつもりのロシアと生き残りをかけて必死だった日本。このギャップが戦争の帰趨を決めたと言っても過言ではありません。

  • 全9章、200ページ。

    戦史として本書を読むと失望するだろう。
    本書は外交史としてよくまとまっている。

    巻頭に朝鮮の地図がある。精読にあたって何度も眺めることだろう。
    初めに日露戦争前の国際情勢について、簡単な説明が30ページほど。
    次に地図、鉄道、朝鮮半島など地政学的に無視できない地理の解説があり、主題として日露の利権及び外交交渉を扱っている。
    戦争については、5~7章でサッと流している。奉天、遼陽、日本海海戦あたりだけはやや詳しく描かれている、といったところ。

    終章にて講和とその後の日露両国の行方について触れている。

    初版は2005年。
    巻末の参考文献にも比較的新しいものが多いので、まだ生き残っているものが多いのではないかと思う。

  • 日露戦争における双方の外交を中心にまとめた本で,どういった世界情勢のもとで戦争が起きたかを知るには参考になる。

  • ふむ

  •  日清戦争とともに華々しい勝利を遂げた日露戦争であるが、では、なぜ、明治維新が起きて間もない日本が、超大国ロシアに勝てたのかを分析した本である。20世紀において世界各国で帝国主義を掲げて、植民地を求めて他国との戦争が勃発した時代であったが、当時列強諸国に遅れて発展した日本が勝利したのは不思議である。なぜなら、当時のロシア(ロマノフ王朝)は、近代において世界中を震撼させた天才軍師ナポレオンですら突破できなかった国であるからだ。しかし、ある点に注目すると、ロシアが敗北した要因が見えてくる。
     それは日本とロシア双方の軍隊に注目すると一目瞭然である。日本はたしかに、資源が乏しく、軍も結成してそれほど日は立たなかった。しかし、軍隊としては十分に機能しており、とくに陸軍、海軍双方の連携が良好であったことがわかった。そのため、たとえ単純な国力では劣っても、十分にやりとげたのであった。
     その一方、ロシアでは、軍隊の連携が不十分で、とくに司令官が無能であったためか、成果をあげられず悲惨な結果となった。これはクラウゼヴィッツ『戦争論』が指摘したように、軍としてはならないことを犯してしまったのである。そういう意味で、本書は大国がある小国に負けた要因を分析するのに最適な例であろう。
     ほかにも、本書は20世紀における各国の外交、交渉の論理がよくわかり、これは今世紀においても、国家が存在する以上、使える手法だと思われる。これと併せてクラウゼヴィッツ『戦争論』を読むと、国家の論理が理解できるだろう。

  • 日露戦争

    日本が帝国主義に傾倒する1つのきっかけとして、良く認知されている日本国史上有名な戦争の1つ。

    秋山好古の騎兵隊。
    秋山真之の「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」
    東郷平八郎のバルチック艦隊の撃破。
    乃木希典による203高地の攻略。

    戦争としては多くの戦役があり、有名な人物、言葉が飛び交うが、日露戦争の裏側、ロシア側の動き、日本の外交、諸外国の動きは、恥ずかしながら、知識が乏しかった。

    ウィッテの失脚から始まる日露戦争開戦の動きや、軍部が外交に全く関与出来なかったなど、知らなかった事や、後の大戦とは大きく違う部分を知った。

    この時代になると、世界史、日本史ともに学習しないと全然ダメだなって感じた。

    さぁ、がんばろうか。

  • 日露戦争の勃発した背景や戦争の展開、また日本が勝利した結果によって、日露双方にとってどの様な展開が待ち受けていたのかを分析した一冊です。ロシアのバルチック艦隊が敗れたことは知っていましたが、なぜ大国のロシアがアジアの小国の日本に敗れたのかはまったく知らなかったので本書の分析は為になりました。

  • 日露戦争に至った時代背景、開戦、そして終戦までの流れをまとめた本。七章だが、戦術的な点は五章、六章と少な目。それよりも時代背景やこの戦争がどういった位置づけだったのかなどが纏められている。少し残念なのはこの戦争が終わった後、両国がどうなったのかについての記載まとめが最後少ない点だろうか。バランスとしては非常によくまとまっていたというのが正直な感想

    ●メモ
    ・植民地戦争
    いわゆる白人が非白人の国を植民地化する戦争。アメリカ兵は母国の家族にフィリピン人の「知的文化的後進制」を繰り返し言及したほど。
    ・イギリスとの同盟
    基本的に日本はアジアの小国であり侵略対象だが、ヨーロッパの微妙なパワーバランスによってイギリスと同盟が組めた。だが、この同盟条件は極めて限定的で、第三国が参加してきた場合のみ支援する、というものだった。
    ・シベリア鉄道
    1891年から建設開始。これによりロシアが遠距離への出兵が容易になる点を日本は早期から懸念していた。戦争を早々に開始した、一つの要因ともいえる
    ・朝鮮半島の重要性
    この本を読むと朝鮮戦略が単なる領土拡大ではないことが良く分かる。ここを拠点としなければロシアとの戦争に勝つことはできなかっただろう。国を守るために、他国を侵略するという矛盾。
    ・交渉決裂
    日本は交渉と考えたが、ロシアは日本からの要請として考えたのではないか。これはロシアが圧倒的国力を保持しているため、日本は妥協するしかないと考えていた思いこみだった。だが、ここで妥協しては侵略されるのみしかないと考えていた日本は、交渉を続けながらも平行して戦争の準備を進める
    ・開戦
    印象的なのは日本の奇襲だ。交渉断絶の通知をしたとはいえ、卑怯ではないかというロシアの意見は実に最もだが、当時の国際法では違法ではなかったそうだ。この発想がペルシャ湾に繋がるのか、とも考えてみたり。。
    ・終戦
    豪胆な子供が挑んだ巨人への戦いは、巨人のダメージのほうが大きく、それが結果的にロシア国内での不満増加など国内の混乱も呼んでいく。最終的に制海権を奪えなかったロシアは日本を降伏させる手段を失い、アメリカのルーズベルト大統領の斡旋により講和。だが圧倒雨滴国力のロシアは「講和条件次第では戦争継続」という姿勢。
    日本は、満州南部の鉄道及び領地の租借権、大韓帝国に対する排他的指導権などを獲得したものの、軍事費として投じてきた国家予算4年分にあたる20億円を埋め合わせるための戦争賠償金の獲得ができなかった。そのため、条約締結直後には、戦時中の増税による耐乏生活を強いられてきた国民によって日比谷焼打事件などの暴動が起こった。

  • 新書文庫

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授

「2017年 『黒海地域の国際関係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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