幕末歴史散歩 京阪神篇 (中公新書(1811))

著者 :
  • 中央公論新社
3.31
  • (2)
  • (2)
  • (8)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 67
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018113

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 京都国立博物館の特別展『坂本龍馬』で、ショップで見かけた本書を購入。販売されていた場所が京都博物館であるだけに『京阪神編』とありますが、『東京編』の姉妹編であり、幕末から明治初期にかけて、京都・大阪・神戸を中心に、京阪神界隈を舞台とした数々の事件と、それに関わった人物の顛末が記されています。『禁門の変』や『戊辰戦争』といった、日本の歴史を学んでいるのであれば誰でも知っている事件から、『堺事件』や『神戸事件』等、一般的な歴史の教科書には殆ど語られず、地元の神社仏閣等でその歴史がひっそりと語り継がれているもの、果ては路傍の石碑にその痕跡があり、注意深く調べなければ決して露見されることがないものまで、大小様々な歴史の事変がずらり。時系列にまとまっているわけではなく、またかつての章や項で登場した人物が、かなり後の章や項で登場したりと、行ったり来たりが続くため読みづらい箇所もあります。とは言え、皆が知っている歴史の裏で、このようなことが起こっていた、実はこのような事実を孕んでいた、といったことが多数書かれており、あるいは点と点の繋がりがようやく見いだせたことで、読むにつれて何度も感嘆の声をあげてしまいます。

    様々な考え方や方向性を持つ登場人物が多数登場しますが、ほぼ全て(と言っても過言ではありません)において共通していることは、皆「血気盛ん」「己の正義を信じて疑わない」というところでしょうか。他方にとっては歪んだ正義感であっても、自分自身はどこまでも真っ直ぐな正義感で世を変えるために奔走している、という気概が、暑苦しいばかりに伝わってきます。それであるが故に、幕末の京都は、血と炎で赤く染まり、明治維新、さらに戊辰戦争となって、その血染めが全国へと広がってしまった、というわけですが。
    しかし同時に、どのような最期を遂げたとしても、各人の「生き切った」という気概もあります。たとえ二十代、三十代という若さで亡くなったとは言え。勝てば官軍となりどのような悪行も『正義』とみなされ、方や負ければ賊軍とみなされ、どんな行いも悪の烙印を押されるのですから、必死だったのでしょう。

    単に有名どころを周遊していた京阪神の旅も、こうした、小さいながらも決して見落とさずに拾い上げ、一つの独立した歴史の事変として紹介により、少しずつ自分の中の考えも変わってきたように思います。流石に短時間で全てを回りきるわけにはいきませんが、ふとした切っ掛けでこの本を片手に、京阪神の小さく隠れた、でも歴史を語るには欠かせない場所を巡ってみるのもいいかもしれません。
    また、本文に直接語られなかった事項(例えば地名)等も、やはり興味を引きながら拝読しました。それらは、『幕末』という限られた歴史の中だけではありません。こうした切り口からでも、さらに面白く街歩きが出来そうです。

  • 本書は“京阪神”と設定し、京都、大阪、奈良県内、兵庫県内の各地を対象とし、“幕末”をテーマに色々な出来事や人物の事績に関連する場所を紹介するという内容だ。「或る程度知られている…」と思えるモノも、「こんなモノが?」と思えるモノも入り交じり、なかなか面白い内容だった。
    紹介されている中には、近くを通り掛かって視た覚えが在る場所や、「ここは訪ねたことが在る」という場所に対して、「こういう人物が居た?」、「こんな場所が!?」という場所も多かった。京阪神というような地域は「マダマダ色々と在る」という感じがした…
    “幕末”という「時代の故」と興味深かったのは…幕末期に「罪を負って処断」という出来事が在った場所に関して、明治以降に「高い志が示された」ということになって、“顕彰の場”のようになって現在に伝わっているというような例が存外に多いことだ…そういう「興味深さ」を筆者は率直に綴っている。
    愉しく読了したが、何度も視ることになりそうな一冊である。

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:210.58||I
    資料ID:95050441

  • 今回紹介されている中で、特に大阪の適塾と、井伊さんの埋木舎は、行ってみたいなぁって思いました。

    http://blog.livedoor.jp/maikolo/archives/51046374.html

  • 2008/06/19

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

一坂太郎

萩市立博物館高杉晋作資料室室長。1966年兵庫県芦屋市生。大正大学文学部史学科卒業。歴史研究家。著書『幕末歴史散歩 東京篇』『同 京阪神篇』(以上中公新書)、『高杉晋作』(文春新書)、『坂本龍馬を歩く』『高杉晋作を歩く』(以上山と渓谷社)、『司馬遼太郎が描かなかった幕末』(集英社新書)、『わが夫坂本龍馬』(朝日新書)ほか多数。

「2020年 『暗殺の幕末維新史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

一坂太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×