膨張中国―新ナショナリズムと歪んだ成長 (中公新書)

  • 中央公論新社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018465

作品紹介・あらすじ

驚異的な経済成長はこのまま続くか。反日の炎はなぜ燃えさかるのか。一党独裁と民主化、そして対米関係の行方は-。巨大な隣国は捉えどころがなく、真の姿は容易に見えない。北京五輪と上海万博を間近に控える中国で、いま何が起きているのか。名もない労働者から、新興富豪や政府要人まで、集められた生の声の向こうに、答えは浮かび上がる。中国国内のみならず周辺の国と地域、米国をもカバーした最新のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • 関係者の生の声を聞きつつ、現代中国の生の姿を浮き彫りにし、さらには外部世界への影響も叙述しようとしたもの。2006年刊行。中国の実情、格差社会化、地方政府の腐敗、工業製品・農産物の強み、中国の外交、軍事政策等について述べ、特に中米関係について一章を割いて述べている。全体を短時間で網羅するにはとても役に立つ。個人的には、中国の宇宙政策、月面探査に興味がわいた。ちなみに、本書の射程範囲ではないが、最近、中国の月探査機嫦娥2号が月周回軌道を離れ、月の裏側のラグランジュポイント2で観測を続けているとの報道がある。

  • マンションで読む。読みやすいです。それは学者によるものではなく、新聞記者によるものだからです。昔は、この読みやすさを馬鹿にしていました。再読の価値があります。

  • 就活で行ったら安売りしてた。ので買った。

  • かなりおもしろかった。インターネットの掲示板をコントロールするための工作員の育成、潜入もしているという記述にはびっくり。さすが中国、共産党独裁体制はまだまだ安泰のようです。

  • 多くの取材陣による共同調査報道で、中国内部の農民と上海、深圳などの大富豪と出稼ぎ民工などの所得格差問題。官僚と富豪たちの利権と汚職の構造。米国、台湾、ベトナム、韓国、フィリッピンなど他国との関係が、掘り下げた取材がされていて、新聞だけでは味わえない知らなかった現代「中国」が描かれていて、読み応えがある取材の良書である。
     「「中国ほどわかりにくい国はない」と、よく言われる。確かに現在の中国を見ていると、疑問が際限なく浮かんでくる。驚異的な経済成長はこのまま続くのか。共産党の一党独裁はどうなるのか。民主化は進まないのか。貧富の格差は解消できるのか。エネルギー確保は大丈夫なのか。環境の悪化は食い止められるのか。米国との関係はどうなるのか。反日デモは再燃しないのか……。どれ一つ取っても、容易に答えが出るものはない。
     中国のわかりにくさの中で最大級のものの一つが 「社会主義市場経済」 かもしれない。政治においては社会主義を維持しながら、経済では資本主義の核心である市場経済を推し進めるという独特の手法である。?小平(「中国ほどわかりにくい国はない」と、よく言われる。確かに現在の中国を見ていると、疑問が際限なく浮かんでくる。驚異的な経済成長はこのまま続くのか。共産党の一党独裁はどうなるのか。民主化は進まないのか。貧富の格差は解消できるのか。エネルギー確保は大丈夫なのか。環境の悪化は食い止められるのか。米国との関係はどうなるのか。反日デモは再燃しないのか……。どれ一つ取っても、容易に答えが出るものはない。
     中国のわかりにくさの中で最大級のものの一つが 「社会主義市場経済」 かもしれない。政治においては社会主義を維持しながら、経済では資本主義の核心である市場経済を推し進めるという独特の手法である。?小平(とうしょうへい)は一九七八年に改革・開放政策を発動し、経済発展を最優先に資本主義の手法を徐々に取り入れていった。それを深化・拡大させたのが社会主義市場経済で、九二年の第十四回党大会で、党の路線として正式に宣言された。
     社会主義と資本主義は本来、水と油の関係にある。社会主義はそもそも生産手段の公有制、計画経済、労働に応じた分配を柱とした。それに対して資本主義は私有制と市場経済を特徴とする。教科書的に言えば、両者の違いは計画経済を採るか、市場経済を採るかにある。社会主義に資本主義を接ぎ木するなど、理論的にはあり得ない。
     しかし、?小平は 「資本主義にも計画はある。社会主義にも市場はある。計画と市場はともに経済手段だ」 と強引に結合させてしまった。改革・開放は資本主義の道につながるのではないか、との疑念に対し、郡小平が 「恐れるな。重要なのは政権が我々の手中にあることだ」 と断言した通り、中国が言っている社会主義とは、共産党による一党独裁にほかならない。独裁下で権力と市場と資本が結び付いた一種の開発独裁である。
     現在の目覚ましい経済発展は、?小平の狙い通り、社会主義市場経済がもたらした果実である。二〇〇五年、中国のGDP (国内総生産) はイギリス、フランスを抜き去り、米国、日本、ドイツに次いで世界四位になったとされる。二〇〇六年三月の全国人民代表大会(国会に相当) では、向こう五年の年平均経済成長率として七・五%が掲げられた。国防費も十八年連続で二桁の伸びを続け、中国は 「富強」 への道を着々と歩んでいる。
        しかし、社会主義市場経済が同時に産み落としたのが、凄まじいばかりの貧富の格差と、社会主義の名の下で権力を独占する役人たちの底なしの腐敗だった。
     都市では新富階層(ニューリッチ)と呼ばれる人々が高級車を乗り回し、豪華な食事を楽しんでいるわきで、一時帰休者、失業者が職業紹介所に長い列を作っている。農業で食べていけない一億数千万人もの人々が民工(みんこう)(出稼ぎ労働者)として都市へ流れ込んでいる。
     民衆は役人の専横と腐敗に怒りの声を上げ、中国当局との衝突、流血事件も、もはや珍しい光景ではなくなった。中国政府の発表によると、二〇〇四年に起きた騒乱、暴動事件は約七万四〇〇〇件、参加者は約三七六万人に上った。中国のどこかで毎日、命がけの異議申し立てが二〇〇件以上起き、一万人以上が声を上げている。〇五年はさらに増え、絶入万七〇〇〇件に上ったという。
     中国ではいま、一党独裁という硬直した枠組みの中で、弱肉強食の市場経済がはみ出さんばかりに膨張し、両者がこすれ合ってぎしぎしと軋んでいるように見える。
     中国は二〇〇八年には北京オリンピック、二〇一〇年には上海万国博覧会を控え、安定が何よりも重要となる。現在の独裁システムのまま経済成長を続けるなら、軋みはさらに増大し、安定は揺らぐ。そうかと言って経済成長が止まるなら、民衆の不満は一気に噴き上がるだろう。社会主義市場経済の本質的な意味が、ますます問われていくことになる。
     我々は今回、社会主義市場経済下の中国の生の姿を浮き彫りにすることを目標に、中国各地を歩いて光と影を追った。また、極東ロシアや韓国、台湾、東南アジアなど周辺各国・地域や米国にも足を伸ばし、中国の膨張が外部世界に何をもたらしているかも探った。中国は日々、激しく変化している。「中国の今」を描くため、現場に直接行き、関係者の生の声を拾うことを基本とした。」
    新書サイズに、よくこれだけの話題を収めたもだと驚いた。

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