入門医療経済学: 「いのち」と効率の両立を求めて (中公新書 1851)
- 中央公論新社 (2006年6月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121018519
作品紹介・あらすじ
よい病院とわるい病院を見分けるにはどうすればよいだろう。レストランや車なら、高い値段のものが質もよいと考えればほぼ間違いはない。しかし医療では名医でも新米の医者でも値段は一緒であり、経済法則は働いていないように思える。では、なぜ医療の値段は同じなのか。本書は、医療が持つこのような特徴を、「情報の非対称性」「市場の失敗」等の視点から経済学的に分析し、今後の医療制度改革の方向性を提示する。
感想・レビュー・書評
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医療経済学の教科書
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市場の失敗の例
公共財(フリーライドの誘惑)、費用逓減産業(ガス、電気など)、不完全競争(企業が価格支配力を持つ)、外部性(騒音、混雑、公害など)、情報の非対称性と不確実性、分配の問題(公平性と効率性のトレードオフ)、価値財(日本の公的医療保障など)。
市場は生産市場、労働市場、資本市場に分けられる。
医療は市場の失敗と政府の失敗が存在する。
良いものが高いわけではない=価格による調整機能がない。参入の制限。
医師による誘発需要=過剰診療など不要な需要が作られる可能性。
医療では日本の給付水準が高いとは言えない。ヨーロッパの窓口負担は低い。イギリスはホスピスなど末期医療は無料が当然、ドイツは長期入院は無料。
混合医療の禁止=解禁すると医療費がかさむ、不正な請求が行われる恐れ。
準市場=独占的な公共部門にかわって協商的主体が供給を行う仕組み。
市場と公共政策=競争促進、市場介入、市場制限(発送電の分離など)
市場を創る=介護保険によって介護業界が成立した。 -
105円購入2011-10-30
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医療経済学の入門書。
医療に市場原理を入れすぎると破綻する理由が分かった。
・医療は価値材
・情報の非対称性が大きい
・レモン市場が生まれる可能性が高い -
医療経済学の基本的な入門書
経済学の方法論として:厚生経済学、行動経済学、制度派経済学、社会的共通資本などの方法論を用いる(マクロ・ミクロ経済学)
→公共選択論=市場外における合理的経済人の発見。
・市場における情報の非対称性(レモン市場)
・医療の質(構造/過程/アウトカム)
・準市場=独占的な公共部門にかわって競争的主体が供給を行うという仕組み。
①供給サイド=さまざまな目的を持った経済主体が供給をおこなう
②需要サイド=購買力は公的保証を下におこなう
③政府など必要な需要を決定し、モニター -
俯瞰しやすく、読みやすい。
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歴史はふむふむ。医療を支える学問あたりから怪しくなってきた。
(読後追記)
社会保障と医療の関係について、歴史を紐解きながら、問題点や今後の課題を指摘している。超高齢化社会に入り、経済成長が期待できない日本では、これまで以上に医療を経済的な側面からも考える必要があることを再認識した。 -
医療経済学を考える上で、前程となることが中心に書かれている本。無理な話かもしれないが、実際に医療経済学を提供したモデルとかが一番知りたいこと。