映画館と観客の文化史 (中公新書 1854)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018540

作品紹介・あらすじ

映画はいったいどこで見るべきものなのだろうか。ホームヴィデオの普及以降一般的になった、個人的な鑑賞は、果たして映画の本来的な姿から遠ざかってしまったものなのだろうか。本書は、黎明期から今日までの一一〇年間の上映形態を入念にたどりながら、映画の見かたが、じつは本来、きわめて多様なものだったことを明らかにする。作品論、監督論、俳優論からは到達し得ない映画の本質に迫る試みである。

感想・レビュー・書評

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  • パノラマ館からヴォードヴィル劇場、ニッケルオディオンからドライブインシアター、シネコン成立までのプロセスがよく分かる。映画上映における観客の挙動・行動がリアルに想起される。面白かったのは50年代に地方紙である京都新聞が72年の『ぴあ』登場以前に重要な新作映画情報を開示する媒体だったことに加え、映画の撮影日程を伝えることで「映画撮影所と新聞社と映画館との経済的=文化的連携によって映画都市という想像的かつ実体的な自己像を確立した」(278)という分析。

  • 映画をよく観るものとして、新しい視点からのアプローチだった。
    映画史、映画館のこと、観客のこと等々…好きを掘り下げるのっておもしろい。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00153190

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/1854/K

  • ちょっと冗長だけどアメリカの部分における映画の体験の変化が面白かった。一貫したデザインを考えるという意味で面白い本。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784121018540

  •  加藤幹郎『映画館と観客の文化史』読了。1年弱ほどかかった。
     情報量もパースペクティブも、通史としての全体像に関してのフェアな姿勢も、学ぶことのとんでもなく多い労作。そんな本書にあって、重要だと思える箇所はそれこそ山のようにあったけれど、終盤ちかくに挿入される、試写会で筆者が体験したエピソードについてのくだりは、そこを引用したくなる理由が、ほかとちょっと違っているように思えた。
     「憤然と席を立ち、鼾をかく「眠る男」の肩を揺する不寛容な新聞記者は、試写室のモラルを他人に強制することは知っていても、映画作品を批評(批判)するという肝心要のことを忘れているように思われる」。
     この、『眠る男』の試写会室での出来事に関する述懐は、基本的に著者の主観がせり出てくるような記述のすくない本書にあって、数少ない「著者個人の動機」が出ているところのように思われた。もしかしたら本書の文章を前に進めているエネルギーは、このあたりに発生しているのかもしれない。

  • 「日本語で書かれた初めての包括的な映画館(観客)論」(あとがきより)。
    映画館の文化史論であり、と同時に観客の文化史論。映画館における観客の構成、態度、考え方について、興味深く論じられている。映画好きで、かつ映画館好きの私にとっては、読書中幸福感を得ることができた。


    本書はアメリカ篇と日本篇の2部に分かれる。
    アメリカ篇では、移民が映画を通じていかに同化されていったか、観客がいかに静粛性を尊重するようになったか、また観客が徐々に均質化されていった過程も詳細に説明される。初期のニッケルオデオン(常設映画館)で、観客はフィルムの入れ替え時間に合唱するというエピソードは楽しい。

    日本篇では、弁士の活躍、トーキーの黎明期、映画以外に観客が映画館に行く理由(例えば映画館は涼しいから)、京都市における映画館と市民の交流が論じられる。
    ポルノ映画館の観客についても論じられている。なぜ「都市部の片隅でごくわずかのポルノ映画館がひっそりと営業をつづけている」のかの解答が提示されているが、少しがっかりした解答だった。

    でも、映画館について、これほど論じられた本は出合ったことがなく、映画好きにはお勧めの★5つ。

    なお、本書にもあるように、映画館とは、観客が「異世界に遊ぶ」ために入場した「外界から遮断された視覚的公共施設」。
    異世界で遊ぶ人々(観客)が感動や驚きを共有できるのが望ましい。

    個人的なことで恐縮だが、学生の頃は、映画館に良く通った。今はない「三鷹オスカー」は洋画3本立て。「罪と罰」「白痴」「戦争と平和」の3本立てを600円で見たことがある。全部見たら10時間を超えたが、ほぼ満員の状態だった。映画が終わった後、観客のほとんどから「あぁ、終わった」という悲鳴が聞こえた。何となく嬉しかった。
    昭和の頃は、映画館は学生にとって大きな存在だったような気がする。

    ちなみにジャカルタにも、ショッピングモールに併設されたシネマコンプレックスが多数ある。冷蔵庫のような冷房が完備され、椅子の座り心地もよいが、いまひとつ好きになれない。観客が少なすぎる。先月、「ゴジラ」を見たが、日曜日の午後にも関わらず観客は数名だった。これでは、他の観客との共有感は持てない。

  • アメリカと日本における映画館の歴史を見ると、文化の違いが良く理解できます。

  • 映画と人をつなぐ、ハコの話。

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著者プロフィール

映画批評家・映画学者
2020年9月26日没

「2023年 『映画史の論点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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