処女懐胎: 描かれた「奇跡」と「聖家族」 (中公新書 1879)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018793

作品紹介・あらすじ

処女にしてキリストを宿したとされるマリア。処女懐胎はキリスト教の中心に横たわる奇跡であり、夥しい図像を生み出してきた。「無原罪」の「〜がない」という否定形の図像化一つとってみても、西洋絵画に与えたインスピレーションは巨大である。また、「養父」ヨセフや、「マリアの母」アンナはどのように描かれてきたのか。キリスト教が培ってきた柔軟な発想と表象を、キリストの「家族」の運命の変転を辿りつつ描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • イエス・キリストの母マリアを中心に、"養父"ヨセフや"マリアの母"アンナが中世では、どのように考えられていたか、旧約聖書、新約聖書、聖書外典からスタートし、絵画や彫刻を通して考察しています。タイトルだけだと、もっと宗教色の強い内容を想像しましたが、どちらかというと美術史としての色合いの濃い内容です。今まで、イエスの誕生というのは、キリスト教として一番重要な部分ではないかと思っていましたが、時代や政治的要求によって、だいぶ解釈が変わっているのだなと分かりました。

  • 19
    エペソス公会議「神の母」
    正確には「神の母」というよりも、「受肉した御言葉の母」というべき

    24
    近代医学以前の「胎児」観
    ・ヒポクラテス
    ・アリストテレス
    ・折衷案としてのガレノス

    72
    ロレンツォ・ロット
    奇跡の誕生よりも普通の人間と同じように生まれたと暗に示す

    80
    何かを描くこと、つまり何かが「ある」ことを見せることによってしか、何かが「ない」ことを表現できない

    81
    キリストの「両親」であるマリアとヨセフの関係は、ある意味で、その祖父母であるアンナとヨアキムによって先取りされていた

    87
    予防的贖罪
    コンドーム

    97

    235
    聖家族の歴史社会学的考察

  • 処女懐胎というタイトルが冠された絵画
    (マリアのもとに大天使ガブリエルが訪れてるアレ)の、
    あの1場面についての本かと思っていたら違った。
    もっと広範囲、そして当時の社会の様子まで言及されていた。
    副題の「描かれた「奇跡」と「聖家族」」こそ重要。

    マリアの母アンナの章が刺激的。
    アンナの三度婚(トリヌビウム)による
    三世代の親戚が集まった絵が
    15世紀の北方でもイタリアでも
    ノスタルジックだったのが印象的。

    私自身も幼い頃は休みに祖父母の家で
    叔父叔母や従兄弟たちと食卓を囲んだなぁ。

    アンナについて、彼女の祝日に追放事件があったことから
    フィレンツェにおいて政治的シンボルになったという話はもっと読みたい。

  • 受胎告知や無原罪の御宿りといったキリスト教における主要テーマがどう描かれてきたか、そこにどんな家族観やジェンダー観が投影されてきたかを解説する一冊。イエスの養父ヨセフの複雑な立場、そこに時代の要請や政治的な意図によって様々な父親像が見出されていく過程や、時に異教的な要素を取り込み、時にプロパガンダに利用されるマリアの母アンナなど、どの話題も興味深い。豊富な図像もあり、楽しめる内容だった。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00164940

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA80247686

  •  ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」に描かれた天使がユリエルだとは知らなかった。受胎告知でマリアの前に顕現したのはガブリエルだから「岩窟〜」もそうだとばかり。

  • イタリア旅行前の本②。キリスト教の宗教画を見るのがぐっと面白くなる本。この著者の「マグダラのマリア」も読んでいたので、興奮してるとことかニヤリとしながら説明してるとこが文字なのにありありと分かるのがこの人の文体らしい。
    口絵や本文にもたくさん事例としての処女懐胎の図が示されていて、ほうほうなるほどと思いながら読める。
    百合とバラに囲まれ、月を踏みしめる青い衣の清い少女として描かれるに至る流れ、男を本質として、女はそれを受け止め出力する器(materia)とみなす古代ギリシアからの概念を下地にした新約の語られ方、マリアの夫ヨセフ、マリアの母アンナの描き方の変遷には特に惹きつけられた。

  • 新書は読むのが楽だなあ…
    画像も多くて分かりやすい

  • 美術の勉強に読みました。授業で習ったことの復習にもなったし、きちんとまとめられている本として読んだことで、頭の中にあった雑多な情報がきちんと整理された気がします。

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著者プロフィール

岡田 温司(おかだ・あつし):1954年広島県生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学名誉教授。現在、京都精華大学大学院特任教授。専門は西洋美術史・思想史。著書『モランディとその時代』(人文書院)で吉田秀和賞、『フロイトのイタリア』(平凡社)で読売文学賞を受賞。ほかに、『反戦と西洋美術』(ちくま新書)、『西洋美術とレイシズム』(ちくまプリマー新書)、『最後の審判』『マグダラのマリア』『アダムとイヴ』(中公新書)、『デスマスク』 『黙示録』(岩波新書)など著書多数。

「2024年 『人新世と芸術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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