年金問題の正しい考え方: 福祉国家は持続可能か (中公新書 1901)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019011

作品紹介・あらすじ

「自分が年をとったときには年金制度はつぶれてなくなっているのではないか」-本来、人々に安心をもたらすはずの年金制度が、逆に大きな不安材料となっている。年金制度の適切な運営は、国防・治安・教育と並ぶ、政府の重要な機能の一つである。少子高齢化が進むなか、安心して信頼できる制度を作るにはどうすべきか。基礎年金の消費税化や一元化を検討し、本当の公平さと福祉国家の将来像を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 105円購入2011-10-30

  • 急激な少子化が今の年金制度を破たんさせようとしているという論調が多いが、1973年度スキームでは高齢者への給付が高すぎたため早晩破たんする設計だったという。2004年改正で100年大丈夫だという宣伝文句は偽りだったということが分かった。同時代の異年齢世代間の不平等を考慮することが大切なのか。経済成長が低成長であると年金会計にずいぶんと響くのだな。

  • 年金問題として考えられているものを丁寧に数式を用いて説明しています。数式が苦手な人は読みづらいと思いますが、そこを我慢して読むとなるほどと思えます。ただし、タイトル通り考え方の本なので、結論はどこにあるのだろうと読み終わってしまいました。

  • 冒頭から損得の概念で年金を解説してくれるなど、読み手の理解を意識した構成になっている。どうしても財政状況や拠出受給の話になると数式が多出してしまうが、内容は非常にシンプルで式の意図するところも追いやすい。年金システムの抱える問題と対策を消費者の目線を交えつつ検証する。

  • [ 内容 ]
    「自分が年をとったときには年金制度はつぶれてなくなっているのではないか」―本来、人々に安心をもたらすはずの年金制度が、逆に大きな不安材料となっている。
    年金制度の適切な運営は、国防・治安・教育と並ぶ、政府の重要な機能の一つである。
    少子高齢化が進むなか、安心して信頼できる制度を作るにはどうすべきか。
    基礎年金の消費税化や一元化を検討し、本当の公平さと福祉国家の将来像を提示する。

    [ 目次 ]
    1 信頼衰退の根源にあるもの(年金に加入するのは損か得か 世代間格差はなぜ生じたか 格差と負担増をめぐる二つの誤解)
    2 制度の持続可能性―二〇〇四年改正を検証する(年金会計の基本 年金の収支バランスを維持するには)
    3 世代間と世代内の公平性(相対的年金水準とは何か 未納は本当に問題なのか 基礎年金の消費税化を検討する 年金の一元化とは何か 税方式あるいは積立方式への転換論について)
    安心して信頼できる年金をめざして

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    [ 参考となる書評 ]

  • 感情的な議論が交わされがちな年金問題。
    本書は制度上および社会的な問題点を冷静に指摘している。

    年金の制度と今後の見通しがスッキリと理解できる。
    年金がもらえるか不安な若者は絶対に読むべき。

  • 「年金なんてどうせ破綻する制度だから、払わなくていいや」

    思っていたものの、しっかり勉強したいとも思っていた。

    年金というものは持続可能でなければならないという命題に対して、現在はどのような設計になっているのか、現在と異なる設計がどのようなメリット・デメリットがあるのかを数学的に説いた書。
    本の3分の1くらいが漢数字なんじゃないかってくらい数字の羅列が並ぶので、数字が苦手な人には向かない。
    著者はこの本で「年金は明らかに得をする仕組みだ」と何度も訴えている。

    経済成長、合計特殊出生率などの要素を変えて、多角的な仮定の上で検討している点は素晴らしいと思った。

    よし、年金満額受給者を目指してがんばって納付しよう!
    と、思った最近ではあったものの、国自体がダメになってしまったら...というギリシャの財政再建ニュースを見て、最後の年金額を左右する要素「国がつぶれないか」についてこの本では触れていなかった。

    頑張れ日本と言いながら年金払うか、自己投資と称して年金を未払いにするか...
    あ、現行の年金制度での未払いという問題は、年金受給者の支給額を圧迫するものではないという驚きの事実も述べられています。ので、年金未納者が義務違反だと言うのも、なんだかおかしいね。

    そしたら、モラルってなんじゃろ。

    やっぱり、私は生涯農家をやる身として、生涯現役ならば年金払う気が起きないなぁ。

  • 『年金に加入するのは損か得か』
    ・単純に考えても得.
    ・年金は長寿という「リスク」を分かち合う制度.
    ・公的年金には,年金の給付水準に物価上昇と賃金上昇の分を調整するメカニズムが組み込まれている.

    『世代間格差はなぜ生じたか』
    ・ずさんな制度設計により,1920年や30年に生まれた人々の中には,自らが負担した8倍もの年金を受け取っている人がいる.拠出が低く,需給が高い.
    ・1975年生まれ以降の人々は,基本的に世代間格差は消滅する.

    『格差と負担増をめぐる二つの誤解』
    ・賦課方式が犯人説は間違い.積立ならもっと早く破綻していた.(運用利回りが足りない.)
    ・少子高齢化犯人説は間違い.当時の合理的な予測にしたがったとしても1973年スキームは崩壊する.つまり,1973年スキーム自体が間違い.

    『年金会計の基本』
    ・社会保険庁の無駄遣いの占める割合は小さい.
    ・2003年度は保険料収入(36兆円)よりも年金支給額(40兆円)のほうが大幅に上回っている.積立金200兆円はすぐになくなる.
    ・経済成長がなければ年金制度は破綻する.

    『年金の収支バランスを維持するには』
    ・マクロ経済スライド調整率を導入しているが,これも不十分.

    『相対的年金水準とは何か』
    ・生活水準が大きく異なる時代を生きた人々の間で,単に負担と給付の表面的な比率の格差だけを問題にするのはどうかと思われる.

    『未納は本当に問題か』
    ・1号被保険者数に対する未納は35.9%.しかし,1~3号すべて合わせると,基礎年金会計に対する未納は10%,年金保険料収入総額に対する未納は4%となり,未納はあまり収支に影響しない.むしろ,完納の場合が収支は悪化する.基礎年金は構造的に赤字体質だから.

    『基礎年金の消費税化を検討する』
    ・消費税化は世代間格差を是正しない.そもそも世代間格差とは制度に問題があったからである.また,消費税化してもしなくても現役世代の負担額は変わらない.企業減税をしてその分を消費税アップで広く国民が負担することになる.

  • 年金に入らない!という知人に、年金のメリットを語ろうと思ったが
    存外に自分が年金について知らない事に気付いた。
    これはいかん、という事で勉強の為に購入。

  • 詳しい中身は、「お勉強ノート」参照。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2021年 『協力の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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