日本の統治構造: 官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書 1905)
- 中央公論新社 (2007年7月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121019059
作品紹介・あらすじ
独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革は、首相に対してアメリカ大統領以上の権能を与えるなど、日本国憲法が意図した議院内閣制に変えた。本書は、議会、内閣、首相、政治家、官僚、政党など議院内閣制の基盤を通し、その歴史的・国際的比較から、日本という国家の統治システムを明らかにするものである。
感想・レビュー・書評
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ものごとを特定の権力者が決めていないことがわかる。
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出版が2007年と少し古いが今でも妥当する部分が多いのではないだろうか。筆者は、日本の統治機構の特徴について、人事グループによって組織された省庁による代表性とする。この点、閣僚すらも省庁の代弁者に過ぎない。もっとも、本書を読み進めれば官僚・政治への批判に徹しているわけではないことが分かる。官僚も自立的な支配層を形成しているわけではなく、所管業界との利益・相互調整関係や脆弱な政党組織に端を発する政官関係など、根深い日本社会の特質の中で官僚制が規定されている。閣僚が省庁の利益を代弁するのはそうすることが動きやすいからであり、それは自民党支配の安定に伴って閣僚ポストが専門知識などではなく褒賞として差配され、せいぜい1年程度交代してしまう面が大きい。
本書の内容はどれもどこかで聞いたことのあるようなものばかりだが、改めて通して読むことで日本の政治構造を深く理解することができた。ただ、第二次安倍政権以降の官邸主導の話は当然出てこないので、今の行政のあり方を学ぶには他の書籍を当たる必要がある。 -
議院内閣制のあるべき姿と、日本の現状。
平成デモクラシー史と重なる問題意識も。 -
[再版]2007年11月5日
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日本政治の仕組みについて、議院内閣制を中心に据え構造的な力学・問題点を解説した一冊。
大きく3部構成をなしており、第1・2章では官僚、第3・4章では与党を切り口に日本型の議院内閣制を解説する。そして第5・6・7章では比較による日本政治の分析や提言が加えられる。
各章内では読んでいて飽きることもままあったが、章ごとに明確な役割が与えられているため、全体としては議論の位置付けを見失いにくい構成となっている。
紛れもない名著と言って差し支えないだろうが、2007年発行のため現在では少々時代遅れの感が否めない。
後半で一応、小泉内閣に象徴される行政改革にも触れてはいるが、本論として扱っているのは80年代までのいわゆる55年体制になる。
現在に通ずる政治構造については竹中治堅『首相支配』が詳しいと思われ、本書はそのための前提といったところか。
しかし古さという欠点を補ってなお余りある記述の充実ぶり、そして政治上の問題を政治家や官僚個人の能力でなくその構造に求める視点は、現在でもその価値を失ってはいない。
むしろ現在の政治を考える上での文脈として従来型の自民党政治の知見は不可欠であり、日本政治を学ぶ上での「一冊目」としてまずお薦めしたい。 -
前半は目新しさを感じなかった(学校で教師がこれの受け売りを話していたからか)。本来首相に権力が集中するはずの議院内閣制で省庁による官僚内閣制が戦前から行われてきたこと、自民党と政府の二元体制が続いて政策立案と実行の垣根が曖昧になったことで日常的な政府活動は安定するが大きい政策転換は難しくなった。二大政党制による政権選択で強固な政党が誕生し、首相に権力核が出現すれば政策課題が解決できるに違いないというのが筆者の見立てっぽい。
正直論点が多く、話の筋をぼんやりと理解した程度なので勉強しなおしてくる。特に後半はなかなか難しく読めてない気もするのでいつかもう一回読むつもりではある。効果的な政策を実現するためには何がいいのか難しいが、首相がだれであっても安定した政府運営をできるような仕組みが良い統治構造とするなら、この本を受けてなされた改革はあまりいい結果を生まなかったような... 2021/5/27 -
政策決定過程にいかに自民党が大きな役割を果たしているかが分かった。
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その名のとおり、「日本の統治構造」について把握・確認・整理したいときに読んでおくべき基本の一冊ですね。日本における議院内閣制の特徴や、政治家と官僚の関係、二院制の構造などについて、本当に丁寧に解説されています。
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第29回(2007年) サントリー学芸賞・政治・経済部門受賞、TVにもよく出る有名な先生の作品。万人向けの新書ならではの良著であり、政治について語るならこのレベルは抑えておく必要はあるだろう。
ただし、民主党政権誕生やその後の憲政史上最長記録の安倍政権についての考察・記述は全くないので、増補版を期待したい所。 -
『近代とは何か』の流れで、議院内閣制について学ぶつもりで読み始める。
不案内な領域なので、まだ消化しきれていないが、、
議院内閣制の理解は、民主政治の理解につながるとして、日本における議院内閣制の特徴を諸外国のモデルとも比較しながら論じた本。
各国比較を読んでのキーワードとしては、議院内閣制対大統領制、三権分立、政官の関係、小選挙区制対比例代表制 などなど・・・統治構造のモデルを学ぶというのが、本書を読む最大の意義。
先進民主政に限れば、政治体制のモデルとしては、大統領制か議院内閣制。前者は、二元代表制であり、後者は一元代表制であるというとらえかたはわかりやすい。
議院内閣制のモデルはイギリスということだが、議院とは議会であり、議会が内閣を決めるという点が、議院内閣制の基本原理。日本においては官僚内閣制として発展。以下日本の特徴を考える上での主な論点。
・三権分立と両立
・省庁制と数多くの「総合調整」機能。そのメリット・デメリット
・与党と政府の二元制
・行政的政治家と政治的官僚
・日本の政治が一党優位できた理由。・・・小・中・大選挙区制の意味
最終的には、日本の統治構造が九十年代以降完全に破綻しているという前提に立つとまで言い切れるというのちょっとした驚き。
どのような統治構造も、特に環境変化が激しい時代にあっては権力の核が必要というのは同意。 -
2007年に初版が出た本であるが、現在の統治構造に当てはまる部分も多々あると感じた。
議会を背景とする議院内閣制に対する、官僚からなる省庁の代理人が集まる「官僚内閣制」、というワーディングが印象的だった。
自分も一時期霞ヶ関で働いていたが、官僚の積み上げ式の意思決定、場当たり的な政策、振り付け通りに動くだけの大臣、などを目の当たりにし驚いたが、これらに対して鋭く論評がなされる本書は爽快にすら感じた。
何よりも、民意の集約や一般化がなされないまま政策が形成されていく過程に非常に懸念をしていたところ、責任の所在(政党)や改革手法(選挙改革から意識改革まで)に触れられていた本書は、非常に勉強になった。
日本の官僚には非常に優秀な人々もおり、そのアセットを機能させないで放置するのはもったいないと思う。
日本の政治システムは改良してきたらしい。今後も改革が続けられていくことを期待したい。 -
2007年の著作ということを念頭に読まなくてはいけない本。
小選挙区制の効用,「政権選択選挙」と二大政党制への期待,「民意集約型政党」への期待など。
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パイの縮小という事態の中で,旧来の積み上げ式の意思決定ではうまくいかなくなってきたという時代前提がある。
積み上げ式ではうまくいかなくなった(≒トレードオフの意思決定をしなくてはいけなくなった)という事態への対応のために,(一元代表制である≒権力集中的であるはずの)議院内閣制の「本来の機能」を活用しよう,すなわち,強い首相中心の議院内閣制に改革しよう、という提案。
首相の強化のためには,総選挙が「政党・首相候補・政策(マニフェスト)の三点セット」を有権者が選ぶものにならなくてはいけない、その「民主的統制」こそが「信託を受けた首相の地位を向上させる」のだから。
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そういえば,そんな話大学のころにあったよなぁ、、、、とか思わないでもないが。いまの事態をどう評価しているのかを追わないと使えない。 -
現在は政府・与党二元体制が解消され、著者が主張する普遍的な議院内閣制へ移行しているように思われるが、現実では内閣への権力の凝集による悪影響が散見される。制度はあくまでも理念的であるため、現実においては、既存体制を微修正しながら理念に近づいていくほかないのかと感じた。
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自民党を中心とした戦後の政治を、戦前と世界にも目配せしつつ、あらゆる角度から腑分けしている。政治過程をありありと現前させる筆致は見事だ。
結論は、民意集約型政党の整備。
#備忘録
・西洋の政治学では、国家と社会に二分法をもとに議論を展開する。国家に社会は含まれない。
・政府・与党二元性
・党本部の日常的な政策審議機能が重要な国は無い。党本部の建物が立派。
・自民党の一任という仕組み
・世論調査では、あなたは何党とは、聞かず、何党を支持しますか?と聞くのが日本 -
東2法経図・6F指定:B1/5/Sakaguchi
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105円購入2012-04-14
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飯尾潤『日本の統治構造』中公新書 読了。議院内閣制に本来備わっているべき権力核の形成と、有権者による選択が反映された民主的統制の強化との両立を議論の根底に、国際比較を交えながら、歴史的経緯を辿りつつ現代日本政治の実態を示したもの。もっと早い時期に読んでおきたかったのが本音。
2011/01/26 -
図書館
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自民党について調べている流れで読んでみた一冊。
う~ん。奥が深いけど、もう少し分かりやすいと良かったなあ。(って、自分の無知を露呈しているけど。。。)
でも、政治が分かりづらい仕組みになっているから国民の意識も上がらない気がする。もしかして、それが政治家たちの作戦なのかもしれないけど。下手に分かられると自分たちの思惑通りに進められらなくなるから?笑
しかし、それでは民主主義ではないってことだよな。
第29回「サントリー学芸賞受賞」作品(2007年) -
テレビで著者が話をしていて興味を持った。米国のような大統領よりも英国や日本のような首相の方が権力集中型ってつかみの話が目から鱗だったし、1~5章の分析もおもしろかった。が、本書で一番参考になったのは6~7章の「ではもっと良い議院内閣制にするにはどうすればよいか」。
ひとつは首相の権限強化で、すでにそういう方向に動いているのは誠に結構。もうひとつは政党の裾野拡大。官僚ではなく政党が民意を集約する必要があるので、単に選挙に行くという政治参加だけでなく党員として政策立案に関与する。なるほど目指す方向がよくわかった。良い本だった。 -
議院内閣制と内閣制の違いなんて知らなかった。んで、右肩上がりじゃなくなった時代に統治システムが正常に機能しなくなったのも分かった。官僚制が悪いんじゃないことも分かった。難しいことが多かったので、多分あとでもう1回読む。
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議院内閣制の詳しい仕組みの理解に。
今から目指すべきは -
1990年代の政治改革以前の日本政治が、官僚の力が強い官僚内閣制、各省庁の利権 を代表するような政治家・官僚がいる省庁代表制であり、自民党の一党体制が長らく続いたことにより、政権交代が起こらない特異な議院内閣制だったことについて論じた本。
そういった中で、同じ自民党なのに、内閣と与党を巧みに使い分けて責任逃れするような体制となっていたこと、選挙で敗北したはずの野党が政策に対する影響力を持つことで利益の再配分が行われ、それが自民党の政権を長期化することに一役買っていたことなど、なるほどど思う視点満載。
そういった中で、より実質的な議院内閣制を実現するために、1990年代以降一連の政治改革が行われ、首相の権限が強化されたことが分かった。
ただ、この首相権限に対する民主的統制として、総選挙において、政党・首相候補・政策の3点がセットで選ばれることが望ましいことなどについて論じられていた。
てか、現実生活にも応用出来そう。
改めて、政治学って、面白い!
ちなみに、文章はペダンチックです。 -
■省庁の枠組みは人事をベースとしながら予算や組織運営手法でも,それぞれ自律性を主張する単位となる。そのため公共事業の分野別予算比率が長らく一定であったように,局ごとの予算枠や,局ごとの運営手法などを守ろうとする強い力が働く。
■予算に関しては,毎年,わずかな増減を付けて調整する「漸変主義的」編成が基本。
■予算を確保することが次へとつながるため,自らの予算を減らさず,少しでも増やすことを第一目的とする行動を生む。これは官僚制の一般的特質で,どこの国でもあること。
■日本の省庁では所轄権限が極めて重要な意味を持つため,いわゆる「権限争議」という,自ら所轄権限を確保しようという省庁間の争いが一層激しくなる傾向がある。
■こうなると仕事の中身よりも,予算枠や権限を確保することに関心が集中し,獲得した予算の使い道や権限の行使には,あまり関心がないという倒錯的な現象すら起こる。
■日本政府は省庁連邦国家として把握することができる。
■とりわけイギリス,アメリカなどの国は「後法は前法を破る」「特殊法は一般法に優先する」といった概念をもとに法令の有効性を判断して,法令相互に矛盾を気にせず,最終的には裁判による判例の蓄積で問題が解決される。日本は条文に異様なほど細かいチェックがなされ現行法令全体の整合性が保たれている。
■もともと中央省庁のキャリア官僚は短い期間で官職を渡り歩くため,その間に新規施策を作ることに関心を集中することが多い。言い換えれば既存の政策の管理に情熱を傾ける官僚は少ない。
■財政における国民負担率からすれば,日本の政府規模は先進諸国の中で,かなり低い水準にある。
■欧米国家は社会における市場の失敗の除去を図る「規制指向型国家」であり,日本など東アジアでは国家が「発展指向型国家」として,社会の発展を目指し,社会諸集団と協力関係に立ちながら,社会を指導していくところに特徴があるとした。(チャーマーズ・ジョンソン)
■イギリスなどでは,官僚が大臣など上司にあたる政治家以外の国会議員と直接接触することが禁じられている。「与党」で官僚が政策を説明するのはどこの国にもみられることではない。
■政官関係の3つの規範
・統制の規範
・分離の規範
・協働の規範 -
良書。現在読書中ですが、書いちゃいます。
第二次大戦中なぜあのような責任体系が不明確なまま、戦争に至ったかの1つの原因が、1885年に取り入れ明治憲法にもその存在が明記されないまま続けられた、戦前の内閣制度にある、とした点は明瞭でした。
志向していたイギリス流の議院内閣制の基礎となる、政党内閣がその権限が非常に弱められ、本来とるべき責任の所在の取り方 ”有権者→国会議員→内閣総理大臣→大臣→官僚(任命責任は大臣にあるとする考え方)” という体系が、議院内閣制であったにもかかわらず取られなかった。
体制上では東条英機内閣でさえも、各大臣という「指導者」の意思をも集約できず、しかし責任はあいまいなまま決断が遅れ、残された選択肢では対米開戦等の決定しか選べなかった。
戦時中またはその前からも、どうして責任のあいまいな政治体制が続いたのか、第1章を読んだだけで目からウロコでした。昭和初期の犬養内閣が五一五事件で倒れるまで続いた、「政党内閣風」を表面上吹かせ続けてきた議院内閣制、ひいてはとことんまで議院(議会)という責任委託先に拠れなかった内閣制度というのが、とても新鮮でした。
とはいえまだ途中なので、また読んだらアップしようーっと。完全に現時点での備忘録になってまつ。。。 -
非常にわかりやすく勉強になった。さくっと集中読み