人口学への招待: 少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書 1910)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019103

作品紹介・あらすじ

二〇〇五年から始まった日本の人口減少。一〇〇年後には半減と予測されている。北・西ヨーロッパに端を発し、いまや世界人口の半分を覆った少子化は、なぜ進むのか-。急激な人口減少が社会問題化するなか、急速に脚光を浴びる人口学だが、戦前の国策に与したと見られ、近年まで疎んじられてきた。本書は、人口学の入門書として、人口の基礎的な考え方、理論、研究の最前線、少子化のメカニズムなどを平易に解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 6冊目です。

    本書は人口学への入門書として最適の良書です。近年日本は少子高齢化であると喧伝されていますが、その基礎となる
    統計的知識が必ずしも広まっているわけではありません。たとえばメディアなどでは合計特殊出生率という値がよく
    用いられますがそれがどのように算出されているかを分かっている人は少数でしょう(合計特殊出生率とは女性の
    再生産年齢のそれぞれの年齢別出生率を合計したもの)。このように人口学の基礎的な知識となる生命表などの解説から始まり
    人口転換論などよりマクロな視点への解説、そして日本における少子化の考察というような流れになっています。

    とくに興味深いのが出生率低下と死亡率低下はなぜ起こるのか、どういった要因により発生するのかということに対する
    解説です。一般的には子供が生まれると家計が圧迫されるというような経済的要因により起こると考えるのが妥当のような気がしますが、
    実際はそれ以外にも文化的変化といったこと(核家族など)によっても出生率低下が起こるのです。ですがこれらは
    すべての国にあてはまることではありません。確かに東南アジアなどでは経済が発展したことにより出生率が低下したのですが
    ここでは核家族化といった文化的変容は見られません。ところが北欧などヨーロッパ圏に目を移すと確かに経済的要因に
    より起こったということがあてはまる場合もありますが、実際はキリスト教的世界観からの脱却によって発生したという
    ことも重要な要因らしいのです。したがってすべての国に当てはまる確実な要因を見つけるの相当に難しくそこが人口学
    を難しくしているかもしれません。

    では、全世界の国に当てはまる法則はないのでしょうか。実はすべての国に当てはまるような理論があります。それが「人口転換論」という
    ものです。これはどの国の人口構造も多産多死→多産中子→多産少子→少産少子といった変化を辿るという考えです。これは確かにその通りで
    ヨーロッパやアジアどこでも成り立ちます。ところがこの理論は重大な欠陥をはらんでいます。それは具体的にどういった状況になれば
    このような変化が起こるのかわからないということです。つまりマクロ的な移動はわかっても定量的な議論ができないことになります。
    さらに最大の欠点としてどのようなメカニズムで人口構造変化が起こるのかわからないことです。これらの短所を修正したものとして
    「第二の人口転換論」という理論が誕生しました。これは人口構造は少産少死のあとは絶対に出生率が上昇することはなく以後は
    低出生率のまま安定し、これは近年の脱工業社会・脱文明社会により変化をもたらしたとするものです。これは一見良さそうですが
    実際はヨーロッパにしか当てはまらず他の国には適用できないようです(なぜなら本当に全世界で脱工業化が進んだかは疑問です)。
    このように完璧な人口構造の変化を説明できる理論はないようです。

    ですがいずれにしろ少子化が進んでいるのは間違いありません。そしてあまりにも低すぎる少子高齢化は問題です。したがってある程度
    の人口は必要です。ではどうすれば人口が増加するのか。ですがその答えは一様ではなく、この政策をとれば絶対に出生率が増加する
    という方法はありません。たしかにフランスなどでは出産しやすい環境を作ることにより出生率は増加していますがそれは19世紀ごろから
    長い時間をかけることにより達成されたものです。したがってフランスのまねをすればすぐに問題解決、ということにはなりません。
    結局あらゆる方法を試すしかないのかもしれません。













  • 合計特殊出生率は、出産が可能とされる年齢の女性の軽金子供数。
    平均寿命が30年延びたのは乳幼児死亡率や20歳以前後の結核による死亡が減ったから。年寄りが30年長生きになったわけではない。

    70をパーセントで割ると、倍になる年数、半分になる年数が分かる。
    フランスは、普仏戦争で人口が少なかったため負けたという国民的強迫観念がある。1920年から出生促進政策をとっている。現在2.0になった、ドイツは1.3台。
    ヨーロッパの人口置換え水準は2.1人。

    少子化、高齢化、人口減少、にある関係。
    人口は出生、死亡、移動、の3要素で移動する。
    人口高齢者の定義は、さまざま。老年人口比率(65歳以上の老年人口の割合)=高齢化率。7%以上が高齢化。今は10%以上が実態を表している。

    高齢化の最大の要因は平均寿命の伸長ではない。年少者の死亡が減少すると平均寿命が延びる。その結果、人口ピラミッドは底辺が増えて若齢化する。高齢化の最大の要因は出生率の低下。
    粗死亡率は、人口構成によって変化する。=シンプソンのパラドックス。

    生命表は5歳ごとの死亡率から、定常人口ピラミッドがわかる。
    100人の母親から100人の女児が生まれるためには、205人必要。男児の方が多い。実際は子供の死亡もあるので2.07人が必要。合計特殊出生率をジュンサイ生産率で割った数字。

    開発は最良の避妊薬。
    人口転換では死亡率が低下する。出生率も低下した。
    子供の費用がかかる。
    経済が良くなっても悪くなっても出生率が低下する。
    近代化で、子供は老後の保障を安全にするものではなく、お金がかかるもの、になった。
    第2の人口転換論。
    適齢期の男女が結婚しなくなった。
    適齢期の男性は過剰。=女性の適齢期のほうが範囲が狭い。

    合理的選択の理論、相対的所得仮説、リスク回避論、価値観の変化と低出生率規範の伝播、じゃんだー間不平等論。
    東アジアの受験戦争。
    出生予測には社会経済的変数を入れられない。定式化できない。
    今すぐ人口置換え出生率になっても、すぐには人口は回復しない。元には戻らない。人口崩壊への道。
    超低出生率が当たり前となっている。日本は子供の希望数は2.4人だが、欧米では2人を切っている。

  • 文系にはむずかしい〜

  • 334.1||K83||Ji

  • なにかと目にする人口データ。人口の基礎的考え方、理論、少子化のメカニズムなどを説明。生命表の正しい読み方や、人口推計の方法などきちんと知っておきたい。良書!

  • 専門的過ぎて素人には難解でした。

  • 903円購入2010-11-18

  • 河野稠果『人口学への招待』中公新書 読了。人口推計の諸概念や人口転換論を解説する。議論の関心は出生率低下の要因へ向かうが、社会経済的背景から生物的行動的要因まで、あらゆる側面から徹底的に分析していく。ジェンダー間不衡平論に説得力あり、日本の出生率を考えるならこの非対称性からかな。
    2016/11/30

  • 生命表などの人口学の基礎を、人口爆発から少子化への時代の変遷とともに解説している。平均寿命やコーホートの概念や、出生率の推計などについて具体的に知ることができるが、あまり感心するような発見はなかった。少子化の原因も諸説あるが、いずれも世間的な理解を超えるものではなく、簡単に分かるものではないと分かった。

    平均寿命・・・出生数を10万人として(5)年ごとに死亡率をかけて生存数/死亡数を出す。そうして出た生存延べ年数(人・年)を10万で割ってもとめる。平均寿命が延びたのは主に乳幼児や若年(結核が多かった)の死亡率の低下によるもので、老人の平均余命の伸びは相対的に小さい。所得と平均寿命の伸びは相関するが、低所得の国でも医療技術や衛生、教育の改善があれば平均寿命は伸びる。

    期間合計(特殊)出生率・・・女性の再生産年齢(15〜49歳)のそれぞれの年齢別出生率(出生数÷人口)を合計したもの。各年齢の重み付けが1で等しいので年齢構成の影響を受けない。(再生産年齢までの女性の)死亡率を考慮して人口置き換え水準が決まる。男児が105対100で多く生まれるので理論最低値は2.05、今の日本での水準は2.07。

    コーホート合計(特殊)出生率・・・上述の期間出生率では、晩婚化が進む過程ではあとからの産み戻しをカウントできないために出生率を過小評価する場合がある。その対策として同年代生まれのコーホート毎にヒストリカルに出生率を合計したもの。後づけでしか実績値が分からないのが難点。

    「人口転換論」・・・多産多死から少産少死へ。グランド・セオリーと著者は言うが、単なる後講釈という気もする。。。西欧から他地域への波及自体は当てたみたいだけれど。

    出生率低下の説明
    ・合理的選択(新古典派経済学的)
    ・相対的所得仮説
    ・リスク回避論
    ・価値観の変化と低出生率規範の伝播・拡散
    ・ジェンダー間不均衡論
    ⇒決め手なし!

    フランスは出生率が2くらいまで回復しているが、普仏戦争敗北以来100年間に渡って少子化対策を推し進めてきた歴史がある。逆にドイツは、若い女性にアンケートした希望子供数平均が1.5になるという事態である(ふつう希望数が実際より多い)。

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