物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019134

感想・レビュー・書評

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  • タイの歴史を大まかに知るのに適した本。
    あとがきにもあるように、著者の得意分野である道や鉄道の話がいかされているのが理解を助けてくれて大変よかった。

  • take out:
    ・タイは今のミャンマー、ベトナムと並んで3大国(大マンダラ)を作って争いつつ東南アジア地域を統治してきた。
    ・植民地時代、ミャンマー(イギリス領)とベトナム(フランス領)に挟まれて干渉地帯となり植民地化を免れたというラッキーな面もありつつ、うまく自分の領地を切り離しながら植民地化を防いだという能動的な面もあった。(正確にはマンダラの時は正確な領地の境目はなかったので、領地を切り離しつつ、英仏との境界を明確にすることで自国の領地を確定させた)独立を維持した民族としての誇りも高い自意識がある。
    ・第一次世界大戦では勝利側を見極めてから参戦し、戦勝国の仲間入り。第二次世界大戦では一時枢軸国側に入るも日本に騙された体を作りアメリカの同情を買うことに成功し、敗戦国として扱われずに済んだ。

    感想:
    全体を通して外国の知識人や専門家の活用が得意で、どこかの国に強く荷担せずにバランスを保つということが上手い。(一方もしかしたらそのせいでタイ国内部に卓越した技能を蓄えるということは相対的に疎かになっている可能性あり??)
    ざーっと歴史を理解するには良かったけど、理解しきれなかった印象が残っている。

  • 『物語 タイの歴史』柿崎一郎 中央公論新社 2007.9
    記録:2020.1.24

    タイ国家の勃興
    タイ族は中国南部から盗難アジア大陸部にかけて広く分布していた。
    タイ人の出自は諸説があるが、中国の揚子江以南の地であるのが一般的な説だ。
    漢民族やベトナム族の圧迫で移動してきた考えもある。
    6~7世紀ごろから本格的に移動した。

    タイ族の独特のくに「ムアン」。
    南詔王国8世紀半ば~10世紀。タイ族最初の王国とされたが実際の支配はチベット・ビルマ族のロロ族が支配していた。
    タイ族は被支配族として暮らしていたと考えられる。

    タイ領の最初の国はドゥヴァ―ラヴァティー。
    7~11世紀のモン族の国家。中心地はナコーンパトムの説が一般的。
    タイ領に関わる国家にシュリーヴィジャヤ・真臘(しんろう)・クメールなどがある。

    タイ人による最初の国はスコータイ王国(1240~1438)
    その3代目王のラームカムヘーン王が有名。
    この王を称える1292年に作られたタイ語で書かれた最古の碑文。ラームカムヘーン碑文。
    ラームカムヘーンは上座部仏教を国教とした。
    現在のタイ社会の文化の源泉。
    スコータイ朝はアユッタヤー朝の攻撃で9代で滅んだ。

    スコータイ朝を併合したアユッタヤー朝(1351~1767)
    ビルマのタウングー朝(1351~1767)に1度目の属国となる。
    属国から脱げだすのに5年かかった。独立を宣言したのは人質として連れてこられた王子のナレースアン。

    後期アユッタヤー朝が始まる。1584年
    タイの3大王はナレースアン・ラームカムヘーン・19世紀のチュラロンコーン。
    ちなみにナレースアンはムエタイの創始者。

    アユッタヤーの人口はタイ人よりも外国人が多かった。
    有能な外国人はタイの官史にも登用された。

    その代表例は日本字だと山田長政。彼は沼津藩主の駕籠をかつぐ人夫だったが、1612年に朱印船に乗ってアユッタヤーへ。
    日本人町で日本人向けの鹿皮などを買い付ける商人のビジネスで成功した。
    日本人義勇の体調にもなり、当時のソンタム王からの信頼を得る。最高の官位も獲得した。
    山田はソンタム王の死後、王位継承争いに巻き込まれて、プラーサートーンの疑心暗鬼から毒殺される。
    山田の活躍はww2前になると南進政策を正当化させるためのプロパガンダとして教科書でも扱われた。

    プラ―サートーン王にとって日本は鎖国されているので重要性は低下した。
    代わりにオランダの東インド会社と関係を深めた。
    アユッタヤーはビルマに2度目の征服を受けて今度こそ400年続いた王国は終わる。

    ラッタナコーシン朝により再び大マンダラを復活させたタイだが、ヨーロッパとの関係は冷え込んでいた。

    チュラロンコーン王。1868年のモンクット王の死去で王位を継ぐ。
    1871年にインドやシンガポールの植民地政策を見てタイの近代化の必要を痛感する。
    近代化の遂行の多くのお雇い外国人を集めた。

    日本人もいた。政尾藤吉という法律学者は刑法を担当した。
    ww1でタイは自国の存在感を示すことにした。戦勝国の仲間入りをして不平等条約を改正したかった。
    連合国側に就いて兵士をヨーロッパ戦線に送り、実際の活躍は少ないが戦勝国の座を手にした。
    このときの宣戦の際にワチラーウット王は現在の国旗を定めた。

    日本軍の進軍 1941.12.8
    マレー半島とバンコク南方から上陸してきた日本とタイ軍の戦闘がおこりタイ人183人・日本軍141人の戦死者が出た。
    12.11に日本とタイで軍事協定を結んだ。
    日本との同盟をチャンスにタイはビルマへの進軍を行う。大タイ主義の実現を目指す。

    国際交通路として日本軍はタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道を建設。1942.6から翌年10月に完成。ノーンプラーントゥック⇔タンビューザヤ 415キロ
    多くの捕虜の犠牲を出して「死の鉄道」と呼ばれる。

    日本の敗戦が決まるとタイは宣戦布告無効宣言を出した。タイが短期間で敗戦国を抜けたのは親日・新連合国の二重外交のうまさ。
    アメリカを味方につけた。

    『メナムの残照』作家トムヤンティ原作の恋愛もの。日本兵の小堀とタイ政府高官の娘アンスマリンの関係が描かれる。
    何度も映像化されている。フィクションだが背景の設定はリアル。タイで一番有名な日本人はコボリだと柿崎は感じている。

    2001年のタックシン政権。中国系タイ人。
    タイの主要輸出品の一つがエナジードリンク。レッドブルも同じ。

    先進国になりにつれて周辺国との摩擦も増える。
    2003年にはタイ人女優のアンコールワットはかつてはタイのものというデマが広がりカンボジアで大使館やホテルが襲撃を受けた。

    タイから昔の国名シャムへの国名改称論がある。
    2007年の新憲法の議論で主張が出されるようになった。賛同者はわずかしかいない。
    シャムはタイ人の文化・民族的多様性を含める言葉だが、大タイ主義を唱えるピブーンが民族名であるタイに変更した。
    シャムには中国人やマレー人・クメール人がいるのにタイが強調されて対立構造が生まれる。



    3大王のラームカムヘーン・ナレースアン・チュラロンコーン
    ラームカムヘーンはスコータイ王国の3代目。上座部仏教を国教とした。最古のタイ語の碑文では彼を称えている。
    ナレースアンはスコータイを征服したアユッタヤー朝の王。ビルマに征服されて人質となるが独立宣言を出してアユッタヤーを復活させる。
    ムエタイの創始者。アユッタヤーはビルマの2度目の征服で400年の歴史が終わる。この時代には山田長政が商人として活躍した。
    チュラロンコーンは周辺国の植民地化に刺激されて近代化を進めた。

    ww1では有利な連合国側についてヨーロッパに派兵して戦勝国の仲間入りを果たした。
    ww2でも日本の同盟となり大タイ主義の実現を目指してビルマに進軍。
    敗戦国となるが宣戦布告無効宣言でアメリカを味方につける。

  • P23まで

  • タイ史概説。その通史を紐解くと、近世から近代までの王朝から近代国家への転換、戦後から現在までは開発途上国からの脱却と、タイが国民国家へ進化する典型パターンの優等例である事が分かる。水運と農作物に恵まれた国土、偶々緩衝的地帯に位置した地理、統治と経済のノウハウを持った華人が「タイ化」して根を張った事などが、今日東南アジア地域のリーダー的存在としてのタイを作り上げており、その過程が手際よく纏められている。本書執筆から10年以上が経ち、依然、軍が力を持つ途上国的要素がある状況ながら、それでも平和に上手くやっている国民性は、風土の賜物のようにも感じられるが、その気質は恒常的なものなのかどうか。絶対的存在だった国王が代替わりした今、今後10年の動きが気にかかるところ。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    タイと言えば、第二次大戦中も独立を保持し、現代においては東南アジアを代表する国ぐらいの認識だった。
    この本を読むと周辺諸国と様々な交流を重ねながら現代まで続いているのだということがよくわかった。また、クーデータが非常に多いが、それにより騒乱状態にならないという不思議な国だなと強く感じた。
    一方で国民も政府も王族を尊重しているという部分では日本の皇室尊重と酷似しているのかもしれないね。

  • とりあえず大雑把に通史を知りたく手に取りました。歴史の長い国なんですね、知らなかった。
    首相、王様、軍で政治バランスをとっている、その過程が興味深かったです。日本もこんなに関わっているのか。
    山田長政のことも知らなかったので勉強になりました。

  •  全くタイに触れたことのない人にはハードルが高いと思うが、一定タイに住んで、タイ人と触れ合った上で読むと、周辺国への意識の背景など気づくところが多いのでは。

  • タイの子どもたちが学校で学ぶような教科書的なタイの歴史を中心に、周辺地域との関係やタイ公式の歴史への批判を加えている。
    父の転勤で中学生時代をタイで過ごし、交通に詳しい著者ならではの描写があり、また、近代以降は世界大戦での立ち回りなどがわかりやすい。タイ王室についても詳しく書かれている。

  • 新書で読めるタイの通史。
    プミポン国王が亡くなって、これからどうなっていくのだろうか…

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著者プロフィール

横浜市立大学国際総合科学部教授
1971年生まれ。1999年,東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。横浜市立国際文化学部専任講師,同助教授,同国際総合科学部准教授を経て,2015年より現職。博士(学術)。第17回大平正芳記念賞,第2回鉄道史学会住田奨励賞,第40回交通図書賞,第30回大同生命地域研究奨励賞を受賞。
主要著書 『タイ経済と鉄道 1885~1935年』(日本経済評論社,2000年),Laying the Tracks: The Thai Economy and its Railways, 1885-1935(Kyoto University Press,2005年),『鉄道と道路の政治経済学 タイの交通政策と商品流通 1935~1975年』(京都大学学術出版会,2009年),『都市交通のポリティクス バンコク 1886~2012年』(京都大学学術出版会,2014年),Trams, Buses, and Rails: The History of Urban Transport in Bangkok(Silkworm Books,2014年)など。

「2018年 『タイ鉄道と日本軍』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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