ホロコ-スト: ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書 1943)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019431

作品紹介・あらすじ

ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。本書は、ナチスのユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 狂気に満ちた歴史の一言。ホロコースト、ナチスの残虐行為の歴史の全体像が見える。

    社会の不満が積もったことでナチスの台頭を許してしまった歴史は、現代社会にも通づる部分がありそうな気がする。グローバル化や多文化政策の急進によって、労働者階級の反感が増したり、極右政党が誕生したり、過去の苦い歴史の懸念が頭によぎる。

    加えて近年は新型コロナの影響もあり、不満のはけ口としてポピュリズム運動に拍車がかかる可能性も否定できない。まさに今このような歴史を振り返る必要性があるのかもしれない。

  • ●新書版なので、まず手にとって読みやすい一冊です。ホロコーストの歴史全体を知るためにお薦めです。

    ●ホロコーストを「知る」ための必読書。ホロコーストたる複雑的で、複数的で、多頭的な秩序化されたカオスが、見事に整理されており、読みやすい。(ボランティアK)

  • ホロコーストの全体像をつかむために。
    このような状況が二度とないように。

    そこに研究の存在意義がある。

    コロナ禍のなか、自粛警察なるものが生まれた。
    みんな息をひそめている。

    終章を読むべき。あとは足掛かりとしての列挙か。

  • [整然とした狂気]人類の歴史において、最も悲惨な形相の1つを呈したといっても過言ではないナチスらによるホロコースト。ともすれば「ヒトラーが反ユダヤ主義のために開始して……」と単直線的な理解になりがちなこの問題に、深く、そして複合的な視点からその原因や成り立ちを追った作品です。著者は、ナチスやファシズムに関する著書・訳書を多く手がけられている芝健介。


    答えの出ない問題だとは思うのですが、それでも本書を読むと「なぜこんなことが」という疑問が次々と浮かんできます。本書の7割ほどが当時どのようにホロコーストに至ったかという事実でできあがっているのですが、「ナチスの閉じた理論内」ではその1つ1つのステップが非常に「合理的」であったことに改めて背筋の凍る思いがしました。


    〜第二次世界大戦前のヨーロッパには、構造的・文化的共通性があった。だが、それがいま失われつつある。そのなかで共通の記憶を考えたとき、大戦中のホロコーストの記憶ではないかという認識が広まりつつある。ホロコーストにまつわる記憶は決して均質ではないが、ヨーロッパ各国・各地域に遍く存在する。そしてそこには、犠牲者の追憶や人間の尊厳の回復への強い願いが見られる。〜

    アウシュヴィッツを訪れたときを思い出した☆5つ

  • ホロコーストの全体像を描き出した一冊。
    「いずれにせよ本書を通して、ホロコーストというユダヤ人大量殺戮について、狂気に満ちた独裁者ヒトラーがアウシュヴィッツで行うよう命令し、実行されたといった直線的なものでは決してないことを理解して欲しい」(あとがき、P267)

    ドイツ国内、ヨーロッパにあった反ユダヤ主義の雰囲気。
    ユダヤ人位相→隔離→殺害と進んでいった様子が明らかにされている。強制収容所、基幹と支所、労働収容所、そして絶滅収容所へ。
    ゲットーにおける様相の違いなど。
    また、ユダヤ人のみならず捕虜・障害者・政治犯など様々な人々が非人間的な扱いを受けた。
    「ゲットー」(Ghetto)ユダヤ人強制居住区 約400箇所
    起源は中世ヴェネツィア。隔離・移動制限はあるものの、安全だった。
    ワルシャワ・ゲットー、ウーチ・ゲットーなど。
    ハイム・ルムコフスキ(ウーチ・ゲットーのユダヤ人評議会議長)
    対ソ戦での苦戦→東への移送は無理となった。
    ゲットーも受け入れられない状況。
    ヘウムノ絶滅収容所1491.12ガス殺の始まり
    (独:クルムホーフ)
    「ラインハルト作戦」「ヴァンゼー会議」
    「強制収容所」は1933年ナチ党政権獲得後に作られた。

  •  新書だったので、手に取りました。
     普通の市民の集まりが、こういう大虐殺を起こす。ある意味、今まで読んだ大量殺人の本より、怖い。
     もう少し、この方面の本を読んで行きたいです。

  • 必ずしも、はじめからユダヤ人の絶滅をナチ党が考えていたわけではない。しかし、占領下のフランスが、マダガスカルへの移送を当時のドイツに打診してきたように、ヨーロッパからの追放という形での対応があり、おそらくヨーロッパでのユダヤ人への抑圧はあったのだろう。ベロックの『ユダヤ人』を読んだあとだと、なまなましく感じる。
     また、処分という名目で殺害されたのが、必ずしもユダヤ人だけではなく、優生学的見地から自国内の障害者や弱視者なども含み、ドイツが戦線を東に広げるに従って戦争捕虜を労働力に使い使えなくなると殺害していた。殺害されたユダヤ人600万人(推計)の上に独ソ戦の捕虜や、運動家、ボルシェビキなどが上積みされる。
     ユダヤ人に対しては人種絶滅というお題目が掲げられ徹底的であったという特別な事情があるが、そもそも、命や人に対して情が薄い。一次大戦の戦後処理でドイツが経済的に追い込まれていたということはあるのだろうが、戦線が拡大し併合していく国のさきざきで、まず労働力としてユダヤ人たちが追い込まれていく。領土がふえれば、そこに住む人もふえるわけで、東へ向かってひろがっていく。ヨーロッパのイメージからドイツやその近辺のイメージが強いが、ポーランドや特にハンガリー系のユダヤ人の死亡者数も多い。現地の人々にユダヤ人を撲殺することが強要されたりと 占領下だったとしてもやらされた方だってたまったものでないのではないか。現地の人にしてみたら、隣近所の可能性だってあるのだから。 
     この本が書かれた時点ででてくる数字や史料によるのだろうが、官吏の作った記録帳などが、相当程度残っているようだ。膨大な紙の断片的記録があるのかもしれない。この本では、アウシュヴィッツだけではないホロコーストの全体像のあらましがわかる。
     歴史としてどう考えるかについても、その経緯について一章をさいてふれられている。いまなお、ヒトラーが最終決定権を握っていたのかは決着がつかず、多くの忖度があったかもしれないことは記憶にとどめておくべきだ。また、散発的な蜂起があったり、脱走に成功したわずかな人々が、助けを求める事実はあったが、実際に手がついたのはほとんど戦後といっていい。なぜ、こんなにたくさんの人が唯諾諾と殺されてしまったのか、また殺したのかはわからないことなど多い。
     
     
     

  • ホロコーストの過程が淡々と記述されていて良かった。

  • ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。本書は、ナチスのユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。
    序章 反ユダヤ主義の背景-宗教から「人種」へ
    反ユダヤ主義の伝統 人種的反ユダヤ主義の登場 ナチズムの登場 我が闘争の主張
    第1章 ヒトラー政権と迫害の開始-「追放」の模索
    非アーリア人の定義 ゲスターボの対応 軍とアーリア条項 ニュルンベルク人種法 ユダヤ人規定 水晶の夜と住民の反応
    第2章 ポーランド侵攻-追放から隔離へ
    障害者のガス殺
    第3章 「ゲットー化」政策-集住・隔離の限界
    ナチスによるゲットー化 ユダヤ人評議会の設置
    第4章 ソ連侵攻と行動部隊-大量射殺
    コミッサール命令 現地人の協力 射殺からガス殺へ
    第5章 「最終解決」の帰結-絶滅収容所への道
    国内ユダヤ人の位相問題 ラインハルト作戦 ヴァンゼ―会議 計画的な大量殺戮へ
    第6章 絶滅収容所-ガスによる計画的大量殺戮
    強制収容所 ラインハルト作戦とマイダネク絶滅集票所 アウシュビッツ絶滅収容所
    終章 ホロコーストと歴史学
    役600万名の犠牲者 ニュルンベルク国際軍事裁判 ブローシャートの登場 遅れた解明

  • ホロコーストが行われるまでの流れを簡潔にわかりやすくまとめられている。当時の情勢やドイツの動きが客観的にわかってよかった。

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著者プロフィール

東京女子大学教授

「2008年 『武装親衛隊とジェノサイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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