大衆音楽史: ジャズ、ロックからヒップ・ホップまで (中公新書 1962)
- 中央公論新社 (2008年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121019622
作品紹介・あらすじ
日本にも多大な影響を与えてきた欧米のポピュラー・ミュージック。さまざまな場所で作曲・演奏され、受け入れられてきたその全ての事象を網羅することは困難だが、大きな流れというものは存在する。本書は、人間の移動と文化接触がアメリカとヨーロッパにどんな音楽的変化をもたらしたかという視点から、ジャズ、ブルース、ロック、レゲエ、パンク、ヒップ・ホップを中心に音楽史を編もうという試みである。
感想・レビュー・書評
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ジャズ、ロックはなんとなく知識がある中、
最近ヒップホップを聞き始めたが、
ヒップホップの歴史何も知らないな?と思い、
読み始めた。
あくまで作者からの視点での切り口のため
内容に偏りがあるが、
商業、地理、空間、政治的背景など、
多角的な視点で大衆音楽史が書かれている。
音楽ジャンルはその時々で流動的であり、
また、流動的であるが故、
後々そのように呼称するようになったり
音楽的には似ていても人種や国などによって
呼称が違っていたり等、
音楽ジャンルに対する考え方やニュアンスを
知ることができた。
今まではただただ無知であり、
拍子の違いや若干の音楽性の違いで
ジャンルが分けられていると思っていたため、
ジャンルなんてタダの記号でしかないと思っていた。
本を読み、歴史を知った上で
改めてただの記号でしかないと思ったが、
思想、政治背景、ファッション、地理など
色々な要素を含めて呼称するためには
ジャンルという記号が求められていたのだなと思った。
自分の中で点と点だった音楽ジャンルが
作者の切り口で繋がった。
色々な人の切り口、観点で書かれた
こういう本を読みたいと思った。
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図書館がおくる、「クラブ・サークル向けおすすめ図書」
クラブ・サークル名 軽音部
請求記号:C-1962
所蔵館 2号館図書館 -
恐らく一個人としてはそれほど精通していないだろう"大衆音楽"について、通史として文化的、社会的側面から語った労力は評されるべき。
明るくない分野であるからこそ果敢に挑戦できたのだろうが、その分、細かいニュアンスなどの錯誤が見られる。それらがクリティカルに響く(特にヒップホップの項に顕著)なのが残念。 -
アメリカの作曲家には東欧や中欧からやってきたユダヤ人が多かった。人種的、民族的に差別されていたため、社会的に身分の高い職業につくことができなかった。
白人にもジャズが1930年代から受け入れられた。
ヒップホップはNYの黒人街で生まれた。 -
第1章 ポピュラー・ミュージックの登場
第2章 黒人音楽――ジャズとブルース
第3章 ロックンロールと若者文化
第4章 パンク・ロックの抵抗
第5章 レゲエ
第6章 モータウンとヒップ・ホップ
本書には目次に入る前に少し長目の「はじめに」があって,なぜ地理学を専門とする著者が新書で音楽の本を書くに至ったのかという経緯が丁寧に書いてある。それによれば,そもそも大衆音楽というものを定義づけること自体が難しいという。その上で,本書は目次にも明確なように,対象を定め,それを章毎にまとめていて,論旨は明快そして読みやすい。
本書に対しては,各ジャンルの音楽ファンからAmazonのレビューなどでいろんな突っ込みがあったらしいが,私自身は音楽研究をやりながらも音楽にそれほど詳しくはないので,そういう突っ込みはできないし,著者もそれを望んでいないことも分かる。彼が主張したいのはそういう次元の話ではない。
例えば,ロックンロールだって,本書で出てくるミュージシャンの名前はごく限られている。ボブ・ディランの名前は出てくるけど,彼についてはほとんど論じられないし(まあ目次に「フォーク」がないから当たり前だが),それぞれのジャンルの日本での展開の話もない。
しかし,新書という限られた紙幅のなかで,と考えれば本書はそれなりにバランスよくまとめられていると思う。しかし,個人的にはあまり興味を持って読んだ本ではなかった。もちろん,それは読者の音楽の関わり方によるのだろうが,私の場合は第4章と第6章については楽しく読むことができた。その他はそれまで知らなかった事実を知ったことは多かったが,決して知的刺激を受けたわけではない。
逆にいうと,著者が楽しく書いたのは何章だったのか,ってところが気になる。音楽の専門家ではないと書きながらも,やはり好きなジャンルがあるはずだ。あとがきに家でギターを弾いていた父とあるが,どんなジャンルの音楽を奏でていたのか,その辺も関係するのだろう。
まあ,ともかく本書を読んで,ポール・ギルロイの『ブラック・アトランティック』は読まねばなと思った。 -
著者の森正人氏は文化地理学の研究者で、もちろん音楽家・ミュージシャンの視点から書かれた本では無いのだけれど、この本の価値はそこにあると言ってもいい。つまり、楽器いじるの大好き、根っからのrock少年って言う人が書いたロック批評みたいなのはネット上にもいっぱいあるし、CDのライナーノーツには音楽評論家の解説が載っているわけだ。しかし、この本では個々の音楽(ロック・ジャズ・レゲエ等)、アーティストの音楽的特徴云々ではなく、その発生から発達の裏にある文化的一面にポイントをあてているのだ。ある程度、述べられているアーティストについての音楽的見地があれば、楽しく読めるだろう。とは言え、音楽専門家の文章では無いため、取り上げられているジャンルの片寄り、音楽ファンの従来の認識と異なった記述があるという批判もある。
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めずらしくアマゾンの諸レビューが的確にこの本を批判している。付け焼き刃で書いたってのが丸分かり。ああ懐かしや、Cultural Studiesの直輸入w
アマゾンで取り上げられていないところでは:ローリング・ストーンズってリバプール周辺出身(p.130);The ExploitedとかAnti-nowhere Leagueがパブ・ロック(p.156);ハードロックやパンクをより激しくしたのが「グランジ」(p.157)とかがどうなんだろうってところ。
それにしても、新書媒体にこんな専攻分野じゃない本書いて著者の将来に響かないといいけど。 -
ロック以降なんか偏ってる感はあるけど、社会背景と絡めて音楽を読み取るという点でさらっと歴史がさらえて役に立った。
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『大衆音楽史――ジャズ、ロックからヒップ・ホップまで 』(森正人、2008年、中公新書)
本書は、大衆で親しまれている音楽(ジャズ、ロック、パンク、レゲエ、ヒップホップ)の歴史を時代背景とともに記述したものです。これらのジャンルは相互に関係していたり、イギリス・西インド諸島・アフリカ西海岸の三角貿易が関係していたりと、世界史とともに動く音楽史を知ることができます。
(2009年3月4日)