シュメル神話の世界: 粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書 1977)
- 中央公論新社 (2008年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121019776
作品紹介・あらすじ
いまから五千年前にティグリス、ユーフラテス河畔に栄えた人類最古の都市文明シュメル。粘土板には多くの神話が残され、ギルガメシュ叙事詩や大洪水伝説など、後世に伝えられたものも多い。これらの神話の世界では、酔っ払う大神、死後の国を覗こうとする女神、蛮族を征服する王、怪獣など、様々なキャラクターがいきいきと活躍している。代表的な神話のストーリーを紹介し、神神の役割や性格、舞台背景などを詳説する。
感想・レビュー・書評
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神話を読む楽しみは、その神話の語り手が生きた当時の生活や価値観に触れられる点にあると思っている。シュメル神話もその例に漏れずとてもおもしろい。『旧約聖書』のノアの方舟の物語でハトが担う役割を『ギルガメシュ叙事詩』ではカラスが担っているという点が興味深かった。
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学校に所蔵あり
人類最古の都市文明であるシュメールの神話について、代表的なストーリー、神々の役割、性格、舞台背景などを詳細に解説。 -
今もなお有名なものとして「ギルガメッシュ叙事詩」や「大洪水伝説」があるが,シュメル神話は他にもたくさんあり,この時代から既にここまでの物語の豊穣を成していたとなると驚きである。
本書はシュメル神話の研究と解説の本であり,ギルガメッシュ叙事詩のみならず幅広くシュメルを知りたい人にちょうどいい。
主な神話:
「エンキ神とニンマフ女神」ー創造神話
「大洪水伝説」
「エンキ神とニンフルサグ女神」ー楽園神話
「イナンナ女神とエンキ神」ーメの争奪
「エンリル神とニンリル女神」ー豊穣儀礼
「イナンナ女神の冥界下り」
「エンメルカルとアラッタの君主」
「ルガルバンダ叙事詩」
「ギルガメッシュ叙事詩」ー古代オリエント最古の文学作品
「ルガル神話」
「シュメルとウルの滅亡哀歌」 -
世界初の文明のシュメール文化の神話は、
ギルガメッシュ叙事詩に繋がる神話。
多神教なので、沢山の神様や神様の役割が覚えにくくて初めは読みにくいですが、慣れてくるととても楽しい。
神話は事実も含まれるので、それも面白い。
「永遠に続く文明はない」神話の最後は、滅亡哀歌で少し寂しい。
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旧約聖書の源流にもなっているシュメル神話についての本。
例えば「ノアの方舟」では大洪水が起こるが、エルサレム周辺で大洪水があったとは考えにくい。
これは、チグリス川・ユーフラテス川周辺のメソポタミア文明の地域で頻繁に起こった洪水がシュメル神話に含まれ、それが西のエルサレム方面に伝わり旧約聖書に影響を与えたという。
「ある人間が神からメッセージを受け取って船を作り、それにより洪水から生き残った」という部分まで一致しているらしい。
シュメル神話はこの大洪水の物語を境に、それ以前が伝説的、以降が史実的なものと捉えられるそうだ。
また、人類初の文字である楔型文字は粘土板に書かれ、土は非常に重要なものであった。
それもあってかシュメル神話では人間は土から作られるが、旧約聖書のアダムとイブも土から作られている。
では、なぜシュメルの神々は人間を作ったかというと「神の代わりに働かせるため」だという。
一神教のキユダヤ教やキリスト教と異なり、多神教のシュメルの神々は、ギリシアの神々と同様の怠惰さを持っている。
なお、旧約聖書ではエデンが楽園とされるが、メソポタミア文明地域にエディンという地名が実在するらしい。
ただしエディンの意味は「原っぱ、平原」といったところだという。
旧約聖書との関係だけでもこれだけの内容があるが、これはごく一部で、大量の出土品や解読された物語が翻訳され、解説されている。 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
本書は世界最古の神話である「シュメル神話」を中心として書かれた内容となっている。
単に神話の内容を紹介するのではなく、神話が生まれるに至る地域や歴史を踏まえ、それらがどのように「シュメル神話」へと反映されているのか。また、「シュメル神話」に書かれた内容が以後に生まれた神話にどのような影響を残したのかをが書かれている。
読めば読むほど、どこかで聞いたこと、読んだことがある内容で非常に面白く読むことが出来た。 -
仕事の資料として買った。購入日は忘れたのでかなりいいかげん。2009年の春頃、くらいの精度。共著だが、二人とも女性。こういうマニアックな歴史物では、女性は珍しい気もするが、逆に今は女性の方が、こういうすぐに金にならないような研究に熱心なのかもしれないとも思った。帯には「血湧き肉躍るストーリー」とあるが、そういうことはまったくない。淡々としている。聞き慣れない固有名詞が多いので、かなりよみづらい。7章くらいからは、とばし読み。それほど影響はないが、著者の感覚が古いのか、よくわからない表現がある。P236「御神酒徳利のように行動をともに〜」とあるが、なんのことやら、わからない。正直言って、よほど関心のある人しか、読み続けにくいように思える。""
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シュメル神話についての予備知識はまったくないが
おとぎ話の詰め合わせとしてまずは読ませてもらえる。
ギルガメシュと言えばビッグブリッジの死闘か
怪しげな深夜番組かと思っていましたが、ここで出てくる
英雄の名前だったのですね。
半神半人の英雄は神話の世界ではありふれていて
王権の正統性の源泉をこうしたところに
持たせることができるので、ギルガメシュもそうした英雄の一人のようです。
ギルガメシュの冒険の話も面白いのですが、
個人的にはイナンナが戦いと愛と豊作の女神とされつつも、都市に着く神である
というのが一番のふむふむポイントですね。
というのも神は理念や現象に結びつくことが多いのですが、
それは不変であり普遍であるからです。
神が滅びてしまうかもしれない都市につく、その帰結としての物語も
ちゃんと用意されています。
都市が破壊されて異民族に占領されて嘆くイナンナに
「神々が合意して決めたのだから、その国を捨てなさい」と諭すのです。
そして、また別の王権の都市として復興するだろうと。
ここには政治とは別にそこに暮らす営み自体は
なくならないという諸行無常な都市住民の信仰心が見えるようです。
他にも黄泉の世界への冒険などお約束な物語も含めて
色々詰め合わせで、お得感のある本に仕上がってます。
(しかし、これもまたバチっとした理論はないのよね。
ケレーニイあたりとか読まなかんかね)