- 本 ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121019790
感想・レビュー・書評
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民族の遠い記憶-風土記、記紀、万葉
1神々の血統
神話について
天つ神の話
先住民のコトムケ
処女神の懐胎
渡来神と神々の血統
血統を編む
2「 生」と「命」
神話を編む思想
「生」という漢字
死体化生神話
いのちの訓述
天つ神の死と現人神
「命」という漢字
殉死の禁と霊のこと
仏教の浸透
常世のこと
3恋は命がけ
万葉の「命」
恋をいのちと
和歌の「命」
空蟬のこと
人麿の「神ながら」
憶良の養生思想
旅人と家持の無常観
浄土と恋と土地-中古から中世へ
1土と恋と土地
往生の思想
成仏の思想
即身成仏
『日本霊異記』の「命」
地獄の思想
いのちへの執着
地獄と成仏の芸能
『方丈記』
他力本願
見性
草木悉皆成仏
2恋と罪—王朝文芸の世界
ものみな歌をうたう
色好み
死後に残る妄執
異土への転生身にしむさびしさ
3一所懸命
武士の生き方
死ぬことと見つけたり
武士道と士道キリシタンの教え
いのちの自由と平等-近世の多様な生命観
1儒学のさまざま
さまざまな神・儒・仏の競合
宋学と朱子学
陽明学と陽明学左派など
朱子学と陽明学の併存
点の「気」を断つ
2町人の自由・平等
自由闊達と「もののあはれ」
はかなさと滑稽さ
生活本位
気の拡散
元気という語
庚申待ち
商人には商人の道
3国学の展開と蒜末の思想
「和」の独自性
物の哀れを知る説
怪異譚の衷側
幽冥界への関心
進化論需要へ
朱子学、陽明学の復興
天賦人権論と進化論受容-生命観の近代化
1天賦人権論
生命観の近代化
「生命」の繁殖力
天は人の上に…
徴兵令
2進化論受容
進化論の季節
擬人法について
日本における特徴
国家生命体論
家族国家論
民族の生命
血統国家論
自然の飛躍
3修養の季節
霊か肉か
宵年の煩悶
修養ブーム
武士道
則天去私
安心立命
養生思想の近代版
エコロジー
自然志向
衛生思想と日本論の転換
宇宙大生命-大正生命主義とその展開
1生命力の解放
エネルギー還元主義
20世紀の生命主義
自然の生命から宇宙の生命へ
生命主義の美学
生命へ行く道
自然主渡から象徴主義へ
刹那の燃焼
女性解放の思想
相互扶助の思想
自由恋愛の思想
2宇宙大生命
『善の研究』
『ニィチェ研究』
日本文化論へ
3生命の表現
エロスの叛乱
いのちの歌人
生命の表現
生命主義の社会的背景
生命主義という呼び名
生の息吹の終焉
4民族の生命
都市大衆文化の閉幕
エロ・グロとナンセンス
マルクス主義の台頭
生命観の万華鏡
永遠の生命
歴史の転換点
神ながらの道
『大義』
散華の思想
国民優生法
歴史的生命
近代の超克
滅私奉公
いのちの尊厳とは?-戦後の生命観
1死の季節をくぐりぬけて
ゼロからの出発
マイナスからの出発
戦時下の裏返し
生命への畏敬
さまざまな旅立ち
戦後の大正
生命主義
2生命主義、ふたたび
高度経済成長
伝統は創造される
真の民族の伝統
大正生命主義―復活と反省
被爆日記
汚染の海
近代の総体を擊つ
宇宙の生命樹
分子生物学からの提起に対して
大きな生命の物語
過労死
癒し
3問われる生命観
生命倫理
遺伝子説
多様性
サイバネテイツクス
サイバーバンク
生命感の希溥さ
人間が生きる自由詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会
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古代から現代に至るまでの日本思想史のなかから、日本人の生命観にまつわる事例を数多く紹介している本です。
古代から近世までを扱った章では、あまり立ち入った考察は展開されておらず、いくつかの事例を通して、日本人の生命観の諸相を概観する内容になっています。著者の専門である近代以降は、さすがに議論が濃密で読みごたえがあります。 -
第1週 1/11(水)~1/18(火)
テーマ「日本・日本人・日本語」
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https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00171823 -
日本人の「いのち」をめぐる見方、生命観史を、新書にしては多くの資料に当たってまとめたもの。
前近代については言語学的なアプローチや宗教史観という趣で、生命観の歴史をなぞるという意味では統一感が少々あやふやで追いにくい。
しかし、書の中盤から始まる明治維新以降の近代日本の生命観史については、文学作品などから大量の文献を引いてきて、工業化を通して、また戦前戦後を通して、日本において「いのち」がどのように考えられ、価値付けられ、扱われてきたか、独自の鋭い考察が繰り広げられる。これは非常に面白いし、今日の生命観がどのよう文脈で形作られ、われわれが無意識のうちにそれをどう捉えているか、社会の価値観としてはどう扱われているか、これを概観することができる。
これを読んで、われわれのいのちの価値、その意義、ありかたというものをもう一度問い直そう。そこに問題があるのか。あるとしたら何が問題なのか。明日も生きるであろうわれわれが、その明日をよりよく生きるために、われわれを保証するいのちにどのように向き合うべきか。それが問われている。 -
『日本人の生命観―神、恋、倫理』(鈴木貞美、2008年、中公新書)
本書は、『古事記』『日本書紀』の時代から現代まで、それぞれの時代区分の作家や文学から、「日本人の生命観」がどのようにつくられていったのかを解説しようとしています。
ただ、それぞれの時代の背景や歴史的出来事、それらが反映された文学を詳細に追っている点は非常に勉強になるのですが、「それが現代にどのようにつながっているのか、現代の日本人の生命観にどのような影響を与えたのか」という点が終始ふれられていないのが残念でした。
(2010年2月12日) -
「命」や「生」について、古事記や平安時代の読み物、はては現代の文学と全歴史からその生命観を考察しています。
後半、テーマが「命」というよりかは「生き方」についての記述が目立ったため、少し生命観という命題にずれ、ないしはブレを感じました。
しかし、これまで文学史としてしか聞くことのなかった作品から日本人的生命観を見ることができましたのでこれはこれで面白いかと思いました。
著者プロフィール
鈴木貞美の作品





