絵画の変: 日本美術の絢爛たる開花 (中公新書 1987)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019875

作品紹介・あらすじ

秀吉の活躍した一六世紀、日本絵画は多彩なあり方を見せた。何を対象にして、どう描くかという表現の問題だけではなく、絵画を鑑賞する場、制作者の側など、さまざまな点で変化があった。本書では、そのような新しい傾向を「絵画の変」と捉えて、その実態を具体的に浮かび上がらせていく。従来は絵画という範疇になかったものをも含む多様で豊饒な世界を通して、この時期の、そして、日本の美術の面白さを堪能する。

感想・レビュー・書評

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    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99128414

  • 非常に引き込まれる内容。

    もう少し、写真や図版があればなお良かった。

  • 並木誠士氏による日本絵画史についての一般向け新書です。

    本書を読むと仏画などの宗教絵画や絵巻物といった作品が全盛期を迎えた平安・鎌倉時代と、狩野派を中心とした豪華絢爛にして威風に満ちた襖絵や屏風絵、さらに庶民の生活をいきいきと描いた風俗画などが盛んになった江戸時代の間に存在した日本の絵画美術の大きな変化について理解でき、変遷期であるがゆえに曖昧なイメージのある室町や安土桃山の芸術を巡る状況について知ることができると思います。

    本書で対象になっているのは15世紀~16世紀にかけての日本の絵画美術をめぐる歴史です。著者はこの時代に大きく日本絵画を巡る環境が変わったことを史料を元に解き明かしていきます。
    この環境の変化は絵画作品の特徴や作品を描く画家の世界にだけおこったことではなく、絵画を見る側についても大きな変化が起こっていたことでした。
    本書ではまず絵画作品の面から同時代の絵画について分析を行なっていきます。著者は特に画題-何が描かれているか-と様式-どのように描かれているか-ということに着目しています。
    15世紀~16世紀の絵画史を考える上でのキーワードとして、「和漢」「上品・下品」「権力の表徴」といったものがあゲラれています。このキーワードを元に狩野派の誕生や工房による民間向け絵画生産開始、そして新しい画題である風俗画の成立といった同時期に起こったエポックメイキングな出来事の背後にある流れが明らかにされていきます。この簡明な構図に基づいた説明によって雪舟・お伽草子・狩野永徳といったポイントごとの印象が強かった15~16世紀の絵画美術の状況が歴史的な流れの中にあるものとして認識できるようになります。

    また、武士の世界での権威と結びついた絵画の扱われ方や帰属などの上流階級の中での和歌・文学と密接につながった絵画鑑賞の方法などの人々と絵画の向き合い方についても考察を加えます。特に貴族の中で中世から続いていた和歌の世界を絵の中に組み込んでいくというやり方それ自体は現代の絵画からはなくなってしまったが、そこから歌に読み込まれたモノ自体を描くというかたちで日本における静物画がこの時代に生まれてきたという考えには驚きがありました。

    気になった点としては、本書においての絵画世界の考察は室町・安土桃山といった時代の「京都における状況」のみが扱われている印象を受けます。例えば扇絵などの民間向け絵画は市場が成立する京都でこそ可能なものではないかと考えられますが、一方で山口などの地方にも戦国大名の富を背景にした芳醇な文化が成立し始めたのがこの時代です。その中で京都と地方は同じ絵画文化の中にあったのか、それとも地方ごとに異なった文化が形成されていったのか、この点について考察があれば15-16世紀の絵画世界についてより深い理解ができたのではないかなと思いました。

  • 読み終わるのに時間がかかってしまいましたが、持ち歩く間に本書の記述にそっような形で絵画に出逢う事が多くありまるで専任の家庭教師について歩いたような気分。
    本書は今後の美術館巡りの後にまた立ち返って手に取るような気がする。本棚の定位置においておきたい。

  • [ 内容 ]
    秀吉の活躍した一六世紀、日本絵画は多彩なあり方を見せた。
    何を対象にして、どう描くかという表現の問題だけではなく、絵画を鑑賞する場、制作者の側など、さまざまな点で変化があった。
    本書では、そのような新しい傾向を「絵画の変」と捉えて、その実態を具体的に浮かび上がらせていく。
    従来は絵画という範疇になかったものをも含む多様で豊饒な世界を通して、この時期の、そして、日本の美術の面白さを堪能する。

    [ 目次 ]
    第1章 転換期としての一六世紀
    第2章 絵画鑑賞の場の成立
    第3章 新しい画家像としての狩野派
    第4章 絵画制作の新たな場―町物と奈良絵
    第5章 中国主題の受容とその和様化
    第6章 風俗画の成立
    第7章 一六世紀における和歌と絵画

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著者プロフィール

1955年生まれ。徳川美術館学芸員、京都大学助手を経て、
現在、京都工芸繊維大学教授・同大学美術工芸資料館長。専門は、日本美術史・美術館学。
主な著書等に『近代京都の美術工芸-制作・流通・鑑賞-』(編著、思文閣出版、2019年)など。

「2020年 『近代図案帖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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