「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020154

作品紹介・あらすじ

「大日本帝国」とは何だったのか。本書は、日本、朝鮮、台湾、満洲、樺太、南洋群島といった帝国の「版図」が、一九四五年八月一五日、どのように敗戦を迎えたのかを追うことによって、帝国の本質を描き出す。ポツダム宣言の通告、原爆投下、ソ連参戦、玉音放送、九月二日の降伏調印。この間、各地域で日本への憎悪、同情、憐憫があり、その温度差に帝国への意識差があった。帝国崩壊は、東アジアに何を生み、何を喪わせたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 2020.08.16 中公新書Twitterアカウントより
    https://twitter.com/chukoshinsho/status/1294287676699418624

  • 本書は、1945年8月15日前後に、日本、朝鮮、台湾、満州、樺太、南洋諸島という「大日本帝国」を構成していた諸地域がどのように敗戦を迎えていったのかを描くことで、大日本帝国とは何だったのか、その本質はどこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そして帝国の記憶の何が喪われてしまったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、といったことを明らかにしている。
    トルーマンのほぼ独断だったポツダム宣言の作成経緯、米英に見捨てられての自主的な朝鮮独立の動きの挫折、30分で決められた「38度線」、蒋介石の当初の台湾軽視に起因する台湾に上陸した国府軍への台湾人の失望、満州国崩壊に伴う甚大な犠牲、沖縄戦の前哨戦といえる南洋諸島での玉砕、最後まで戦闘が続いていた樺太・千島など、本書で描かれた「大日本帝国」崩壊に係る各地域のエピソードは、まさに知らないことだらけであった。しかも、これらの敗戦前後の出来事が、朝鮮半島の分断、台湾と大陸中国の分断、国共内戦の末の中華人民共和国の成立など、現代まで続く混沌とした東アジア情勢に直接つながるものであることも理解した。
    私を含め多くの日本人にとって、その崩壊を含む「大日本帝国」としての歴史は忘却の彼方にあると思われるが、著者が指摘するように、これからの東アジアと向き合うためにも、「大日本帝国」としての歴史を直視することが必要だと感じた。

  • ‪大日本帝国の版図であったあらゆる場所がどのように敗戦を受けて戦後を迎えたのかを著した本。‬

    第1章 東京、第2章 京城、第3章 台北、第4章 重慶・新京、第5章 南洋群島・樺太(序章 ポツダム宣言、終章 帝国崩壊と東アジア)という地域構成となっている。

    第1章のように、終戦前後、日本の戦争指導層がどのような動きを見せたのかは、これまで多くの著書で語られてきたとおりだが、それと同時期に、大日本帝国領内の各地で何が起きていたのかを章ごとに分けて比較するような形で著されている。

    本書に書かれた終戦に伴う動きの一部をみてみるとすれば、どちらも総督府が統治していたにも関わらず、朝鮮と台湾の間にはだいぶ違いがあったことがわかるし、ソ連軍が侵攻してきた満州と樺太ではどのようなことが起きたか、どのような振る舞いがなされたかが理解できる。

    本書の場合は、大日本帝国という範囲内の主だった地域ということになるが、ある複数の空間や場所を同時に並列して論じるのは、ある時点でのそれぞれの共通点、相違点が見られるという意味で興味深かった。その差というのは、大日本帝国という国家の中においても地域ごとに異なる統治形態やそれぞれの歴史の違いなどに起因するものなのだろう。
    また、戦争は始めるよりもどう終えるかが難しい、とよく言われるが、その言葉通り、敗戦(終戦)処理の難しさがよくわかった。

  • 多民族国家としての「帝国」の崩壊プロセスが丁寧に整理されている。

  • 序章 ポツダム宣言―トルーマンの独善とソ連の蠢動
    第1章 東京―「帝国」解体への道
    第2章 京城―幻の「解放」
    第3章 台北―「降伏」と「光復」のあいだ
    第4章 重慶・新京―「連合国」中国の苦悩
    第5章 南洋群島・樺太―忘れられた「帝国」
    終章 「帝国」崩壊と東アジア

    著者:加藤聖文(1966-愛知県、日本史)

  • 新書文庫

  • [瓦解の日々に]1945年8月15日前後の韓国や台湾、中国などでの情勢をつぶさに観察することにより、かつて実在した「大日本帝国」がいかに崩壊し、それが日本人のメンタリティにどのような影響をもたらしたのかを研究した作品。「内地」の歴史だけからは知り得ない、大きな、そして異なる文脈での戦時・戦後史が浮かび上がる良書です。著者は、日本近現代史を専攻し、近著には『1945年の歴史認識』などがある加藤聖文。


    力作。「アジア」という、いわば大世界的な文脈から先の大戦を振り返るという作品はいくつか見たことがあったのですが、本作のように、国や地域といった小世界的な文脈をいくつか並列させることにより、日本の敗戦と帝国の崩壊が、多様な物語をつくりあげたことを簡潔にまとめた作品は非常にめずらしいのではないでしょうか。それだけでも読む価値が十二分にあるように思います。


    また、なぜこのような多様な歴史の見方が日本の中から消えてしまったのか、という本書が投げかける問いも、極めて今日的かつ有意義なものだと感じました。大日本帝国の崩壊を通して歴史を語ることの難しさを痛感させられることにもなりましたが、それも含めて良い読書経験を本書は提供してくれました。

    〜八月十五日の玉音放送は、大日本帝国を構成していた日本とそれ以外の地域とを実態においても意識においても切り離すことになったという意味で、歴史的に重要な分岐点となったのである。〜

    得るところの多い一冊でした☆5つ

  • 終戦のタイミングで、東京、ソウル、台北、新京、パラオ、南樺太・千島という当時の「内地」で何が起こったのか。戦後に日本という枠で残った東京以外では、統治の移行が行われていくのだが、そこでの権力委譲が行われたストーリーがそのまま戦後の各国史に大きな影響を与えていたことはあまり知られていない。ソウルでの韓国人への権力移行は受け皿に失敗し、米軍への権力移行へと転換され、米軍に後押しされた李承晩が初代大統領となる。台北では、台湾人民主家への権力委譲が画策され、平穏な移行が進むが、蒋介石の命を受けた陳儀により外省人国民党の権力統括が進み、台湾民主化は排除され二二八事件へとつながり、日本人は最終的に日本へ引き揚げていくことになった。新京では、対ソ戦が終戦後も続き権力の空白地帯が生まれる中、中国共産党が勢力を築き、第二次国共内戦の地盤となった。パラオでは、アメリカの信託統治として南洋庁の権力移行が行われ、住民の多数を占めた日本人沖縄人は米軍支配下の沖縄へ、台湾人は台湾へ、韓国人は韓国へと帰っていく。樺太は、対ソ戦の混乱の中、最後まで民衆軍が死体の山を築き、一部は北海道への引揚げが行われるも、一部の日本人はソ連国民として生きていく道を選ぶ。

  • 1945年の8月15日、日本はどんな状況だったのか?
    これを帝国領土の各々の状況から語っている。
    アジアの解放を謳いながら、帝国経営以外のなにものでもなかった大東亜共栄圏の終焉が分かりやすい。
    本土決戦が行われたのは沖縄だけじゃない、というのは一般には浸透していない事実だ。
    と、思いおこしつつ、読むのは2度目だったことに自分が情け無くなる。

  • 日本が敗戦した1945年8月15日前後の
    大日本帝国勢力内の事情を概説する。
    地域によって異なる政情、背景とその後の展開が
    コンパクトにまとめられており、
    それぞれを比較しながら理解できることもあり
    非常にわかりやすく、おもしろい。
    個人的には今まで触れる機会のなかった
    南洋諸島に関する項が興味深かった。
    また日本がポツダム宣言を受託する経緯は
    もっと詳細に学びたいと感じた。

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著者プロフィール

1966年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、証券会社勤務を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は日本近現代史、歴史記録(アーカイブズ)学。人間文化研究機構国文学研究資料館准教授。主な著書に『「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 』(中公新書) 、『満蒙開拓団――虚妄の「日満一体」』 (岩波現代全書) 、『国民国家と戦争 挫折の日本近代史 』(角川選書)、『近代日本と満鉄』『枢密院の研究』(ともに共著、吉川弘文館)など。

「2019年 『満鉄全史 「国策会社」の全貌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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