IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算 (中公新書 2031)

著者 :
  • 中央公論新社
3.50
  • (3)
  • (10)
  • (13)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 121
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020314

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦後の国際金融体制を支えてきたIMFは、世界銀行とともに、ラテンアメリカやアジアをはじめ途上国支援に重要な役割を担ってきた。しかし、問題の多い融資方式に加え、アメリカを中心とした先進国主体の運営のため、途上国・新興国の立場を十分反映していない。国際金融危機を経て、IMFは今後どのように役割を果たし、機能していくのか。今こそ国際金融体制の根本的改革が求められている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 世界最大のヤミ金融。その名はIMF。アメリカ財務省、ウォールストリート、IMFは一体となって破綻国家からドルを巻き上げる。それを目的として国家破綻させているのだと。ドルの基軸通貨としての地位は揺らぐこともない。

  • 2009年発行。IMFと国際金融体制、IMF設立とブレトンウッズ体制、IMFの変貌と拡大(1970~80年代)、融資拡大と資本収支危機(1990年代)、IMFと国際金融、最近の国際金融改革とIMF、新しい国際金融体制構築と展望

  • IMFが具体的に何をしているかわかり、そして(当たり前だが)完璧な機関でないことがわかる。

  • 1980年代以降、頻発する通貨危機、金融危機。それに対して国際機関であるIMFはどのように対処し、そして課題は何か。著者は米国を中心とする先進国主導の運営と融資方法の問題点を批判的に解き明かしています。
    IMFに近い立場で役割と機能を分かりやすく記述した本として岡村、武藤、梅村編著『国際金融危機とIMF』大蔵財務協会もお勧めできます。

  • 国際金融の入門書としては内容が難しい。ただ、IMFの全容を理解するつもりでなく、雰囲気を掴む気持ちで、難しいところは何となくで読み進めても、ぼんやりと問題点は把握できる作りになっている。各小見出の最後に平易な文章でそれぞれまとめが挟まれているのが効果的に感じた。事前知識が無くともIMFの役割と歴史、そこから読み取れる問題点、今後の方向性をおぼろげにも掴むことはできる。

  • IMFおよび世界銀行が他の国際機関と決定的に違うのは、あ最大の出資国アメリカが唯一絶対的な拒否権を持っていることである。したがって、基本的にIMFはアメリカの意向に沿う政策を進める。たとえば欧米に政治、外交、経済的に緊密な国々を優先する傾向がある。

    IMFがマクロ経済問題に注力し、短期の国際金融不均衡是正を図るのに対し、世界銀行はインフラ開発など長期開発案件や貧困削減目的の融資を担当し、広範なセクターの改革、構造改革を支援している。

    スティグリッツは、ワシントン・コンセンサスが経済発展に貢献した根拠はないが、現在、いまだにコンセンサスは形成されていないと説明している。

    1970年代はIMFにとって大きな転機となった。もともとブレトンウッズ体制を前提に設立されたIMFは1970年代には当初の目的と役割であった固定相場制のもとで先進国の通貨体制を維持する機関から、流動性不足に対応した途上国に対する融資期間としての役割や機能に大きくシフトしてきた。

  • IMFについて批判的に書かれているところが多いように感じた。IMFの課題や問題点についてわかる。

  • IMF(国際通貨基金)をメインタームとして、IMFと世界銀行との比較も絡めながら、国際金融体制の展開と展望を概説している。
    国際金融機関の活動を扱った授業をうけ、少し体系的知識の補完になれば、と思って探した本。話の流れが非常に頭に入りやすく、かつ重要な点は繰り返し強調されており、とてもおもしろかった。著者が「国際金融の入門書として執筆した」とあとがきで述べているとおりである。

    以下に要点をあげる。
    IMFは第2次世界大戦後のブレトンウッズ体制下における通貨安定を目指して設立された機関であるが、70年代の石油危機を境に、途上国・新興国の財政支援も行うようになった。その融資は、主に短期的な国際収支の改善を目的としていることが特徴である。しかし、融資条件は当該国の政治・経済構造の変革(具体的には緊縮財政・公共部門の民営化など)を求めるものであり、多くの国が短期的な国際収支の改善はおろか、急進的な改革を主因として経済状況の悪化や政権崩壊を招いている。
    比較のため世界銀行を取り上げれば、世界銀行はそもそもが国際復興開発銀行(IBRD)として出発し、のち国際開発協会(IDA)となったものの総称であり、IBRDは先進国の戦後復興、IDAは途上国・新興国の財政支援を担っていた。その融資は、中長期的な開発支援を目的としていることが、IMFとは対照的である。
    これらを主にラテンアメリカ・アジア地域や、ロシア・東欧諸国といった体制移行国(社会主義から資本主義)の例を用いて詳しく説明したのち、IMFが2009年に発表した改革案とその問題点の指摘、そして筆者による新たな国際金融体制の提案へとつなげていく。

    授業ではここまで言及されていなかった(と思う)が、やはり全体として感じることは、20世紀覇権国家・アメリカが推し進めたグローバル化である。
    IMFの融資体制やその改革遅延は、主にアメリカの政治的思惑によるところが多く、その活動はやはりアメリカの信奉する自由主義経済の拡大方針を貫いている。
    経済面だけでみたときのグローバル化とは果たして何をさしているのかをいまいちど考えること、それと同時に、政治面における主権国家/国民国家体系のグローバル化と比較すること、この両者がおおいに大事であろう。つまりは、経済の動きと政治の動き、あるいはアメリカの思惑とヨーロッパの思惑との比較である。

  • [ 内容 ]
    第二次世界大戦後の国際金融体制を支えてきたIMFは、世界銀行とともに、ラテンアメリカやアジアをはじめ途上国支援に重要な役割を担ってきた。
    しかし、問題の多い融資方式に加え、アメリカを中心とした先進国主体の運営のため、途上国・新興国の立場を十分反映していない。
    国際金融危機を経て、IMFは今後どのように役割を果たし、機能していくのか。
    今こそ国際金融体制の根本的改革が求められている。

    [ 目次 ]
    第1章 IMF(国際通貨基金)と国際金融体制
    第2章 IMF設立とブレトンウッズ体制
    第3章 IMFの変貌と拡大(一九七〇~八〇年代)
    第4章 融資拡大と資本収支危機(一九九〇年代)
    第5章 IMFと国際金融
    第6章 最近の国際金融改革とIMF
    第7章 新しい国際金融体制構築と展望

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • とりあえずIMFは時代錯誤的存在で押し付ける政策は、当該国ではなく先進国の債権者の利益を守るための存在ということでdisってりゃいいらしい。

  • 1354夜

  • 【松岡正剛の千夜千冊】1354夜

  • 図書館の返却期限もあったし、とりあえずざっくり読み。
    IMFとか世銀とか、名前は知ってても実態は知らなかった、
    その辺の区別はよくわかった気がする。
    もう少し、金融の基礎知識があって読んだら
    もっとおもしろかったような気がするけど・・・。
    金融危機直後の2009年11月発行だから
    タイミング的にも今読んでおいてよかったと思う。
    も少しじっくり丁寧に読むか、金融政策系の簡単な本を読んだら
    もう一歩ちゃんとした理解にたどりつけそうな気がする・・・。

  • 2010.02.14 日本経済新聞に掲載されました。

全17件中 1 - 17件を表示

著者プロフィール

大田英明(愛媛大教授) 論文等に「資本取引・金融自由化と安定的経済発展」(愛媛大学『法文学部論集』、2007年)、「ブレトンウッズ機関の課題と展望—苦悩するIMFと迫られる根本的見直し—」(『愛媛経済論集』、2007年)などがある。

「2008年 『市場経済下の苦悩と希望』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大田英明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×