国際連盟 (中公新書 2055)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020550

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦の悲劇を繰り返さないため、一九二〇年に史上初の普遍的国際組織として生まれた国際連盟。常任理事国、集団安全保障、一国一票原則など、その後の国際関係の枠組みを創り、当初は各国間の紛争解決に貢献した。だが三〇年代、満州事変、再軍備をめぐり日独が脱退、国際環境の激変のなか理想は徐々に潰えていく。本書は、二六年間の軌跡を精緻に辿る。さらに四大国の一角を占めた日本・日本人の行動に光を当てる。

感想・レビュー・書評

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  • 国際連盟については、戦争を止められなかったというイメージしかなかったが、栄養問題や、ユネスコの概念の基礎となる文化財保護への取り組みなどの実績があることが分かりやすく書かれており、国際連盟の深部を知るには良書だと思う。

  • 国際連盟の特徴は、①新外交の拠点、②平和への機運と言える。第一次世界大戦で大きなショックを受けたヨーロッパ諸国は反戦、協調の雰囲気が強くなり、国際連盟を育てる土壌となった。また、国際連盟に対しての新連盟派外交官や連盟スタッフの存在により、旧来型の密室、リアリスト外交から、公明に大義で戦う新外交が開花した。日本は、新渡戸などの連盟スタッフとなったメンバーはこの流れに乗りつつも、第一次世界大戦でヨーロッパから距離があった日本では、反戦の機運は高まらず、むしろ政治の延長としての戦争という考え方が強く、また陸軍一夕会のように将来への総力戦に備えた戦力拡大が強くなっていき、国際世論とのギャップが生まれていく。満州事変までは日本に同情していた英仏も、錦州空爆、上海事変でアンチ日本になっていく。

  • 国際連盟の創立以前から、その役割を国際連合に譲るまでの歴史を、
    その仕組みや果たした役割、活躍した人々などを丁寧に紹介する一冊。
    日本に関する記載も多く、国際連盟全体としての動きだけでなく
    個人としての動きも描かれており、とてもよくまとめられている。
    あえて難点をあげれば、日本国内の
    国際連盟に対する空気に関する内容がやや少なかったか。
    とはいえ全体的に知りたい内容が
    分かりやすく解説された良書であることに間違いはない。

  • 国際連盟史の入門書。リベラルな視点。日本人が国際連盟でどのように見られていたかについては、学ぶべきところも多い。

  • 欧米諸国では、国際組織をめぐり思想が古くから存在し、さらに19世紀後半からは国際組織設立をめざす動きもあり、帝国主義的政策に反対する流れとして、国際協力や軍縮を目的に掲げる平和団体を節理されていた。
    国際連盟の幕開けはその提唱者アメリカの不参加という大きな痛手を抱えての出発であった。しかしウィルソンの評価が示すように国際連盟はじょじょにその業績を積み上げていく。戦争で疲弊したヨーロッパの問題を手始めとして、連盟規約に従って、国際連盟は新たな国際秩序の構築へ向けて動き出した。
    国際連盟設立を主導したのは英米両国であったが、アメリカが非加盟国となったので、イギリスが初期の実務を主として担当した。
    事務局はジュネーブにあったが、実務はロンドンで行われた。
    新渡戸稲造は国際人だった。

  • [ 内容 ]
    第一次世界大戦の悲劇を繰り返さないため、一九二〇年に史上初の普遍的国際組織として生まれた国際連盟。
    常任理事国、集団安全保障、一国一票原則など、その後の国際関係の枠組みを創り、当初は各国間の紛争解決に貢献した。
    だが三〇年代、満州事変、再軍備をめぐり日独が脱退、国際環境の激変のなか理想は徐々に潰えていく。
    本書は、二六年間の軌跡を精緻に辿る。
    さらに四大国の一角を占めた日本・日本人の行動に光を当てる。

    [ 目次 ]
    序章 国際組織の源流―第一次世界大戦以前
    第1章 国際連盟の発足―四二の原加盟国(民間による構想―大戦中の模索;パリ講和会議―連盟規約をめぐる駆け引き;「大国」となった日本;アメリカの不参加)
    第2章 希望と実現の時代―一九二〇年代の試み(理事会と総会;ドイツ加盟とブラジル脱退;国際紛争への対応―頻発する領土・国境問題;経済・社会・人道・文化面への対応;一九二〇年代と国際連盟―米ソとの関係)
    第3章 国際連盟と日本―外交大国としての可能性(協力関係の模索;活躍した日本人;日本国内での評価―普及活動と限界)
    第4章 紛争・戦争の時代へ―苦闘の一九三〇年代(満州事変―連盟を舞台にした日中の攻防;試練―エチオピア侵攻とスペイン内戦;拡大する課題―経済・社会・人道面)
    終章 連盟から国連へ―第二次世界大戦中の活動と終焉

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    [ 参考となる書評 ]

  • 著者いわく、「国際連盟に関する本は戦後になかった」のだそうだ。
    新書ではあるが、結構質量のある本ではあった。

    今でこそ「失敗した」という言辞が多勢ではあろうが、今の国際連合の基礎を作ったのは、他ならぬ国際連盟である。かつ領土紛争も一部解決を図ることができたことも(ギリシャ・イタリア戦争)も付記しておく。
    とはいえ、常任理事国であったドイツ・日本・イタリアが次々と脱退したことは、まごう事無き事実である。所謂日華事変勃発によって日本は脱退する。リットン調査団の内容によっても、日本の皇位は国際法違反であるとされている。まずなにより、当時の中華民国が政局は荒れ果てているとは云え、国際連盟に加盟している主権国家であったことを付記しておく。
    またこのときの国際連盟による日本の連盟規約違反であることの認定が、極東軍事裁判の判断材料の一つとなる。

    また非政治分野の活動が顕著であったのも事実である。
    伝染病や難民支援などで、多数の人間が助かったのもまた事実である。
    ちなみに世界統一的なABO型血液型の概念が造られたのも、国際連盟保健部の功績の一つである。これを考えれば、国際連盟がより身近になるのではないだろうか?

    以前読んだ「国際政治」では、「(国際連盟は)あれほど現実と乖離した組織を見たことがない。」と書いてあったが、本当なのだろうか。実際は喧々諤々の議論があったように思う。今は国際連合が一応機能はしているものの、国際連盟のような結果を招かないとも限らない。決して過去の出来事ではないであろうと思った次第である。

  • 人物史としても読める国際連盟の軌跡

  • 国際連盟の歴史を概観する著作。

    大戦を防げなかったことを指摘する一方、

    社会・人道的問題への国際的取組みの鏑矢となった面を積極的に評価します。

    新渡戸や安達峰一郎など、連盟で活躍した日本人の記述も興味深いです。

  • 「国際連盟は失敗した」というのが通説だけど、いろいろな分野で世界に大きな貢献をしていたんですね。
    「壮大な実験」の成果と限界を追った本です。

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著者プロフィール

篠原 初枝
篠原初枝:早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授

「2017年 『安達峰一郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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