三国志: 演義から正史、そして史実へ (中公新書 2099)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020994

作品紹介・あらすじ

日本人をも魅了し続ける、三国志。しかし、『三国志演義』や、それを下敷きにした小説・ゲームの世界は「虚構」に満ちている。また、「正史」と呼ばれる歴史書の『三国志』も書き手の偏向がつきまとう。本書は、一般に親しまれている『演義』を入り口に、「正史」の記述を検討。そして、史実の世界へと誘う。暴君董卓の意外な美点、曹操が文学に託したもの、劉備と諸葛亮の葛藤-あなたの知らない三国志がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 「三国志」本は数多く、その中で著者の意図したことがどれほど表現できているのか、そしてそれが読者に伝わっているのかは少々疑問です。ただ、魏晋の頃の名士から貴族社会へと移行するところや、儒教思想の変容は需要などのところは、たぶん一般の新書読者には少々わかりにくかったのではないでしょうか? それ以外のところが比較的読みやすいのに対し、上記の部分がやや専門的な書きぶりになっていたというよりは、紙幅が足りなくて十分説明できていなかったように思います。

  • 学生の頃に吉川英治の三国志を読んだのと、数年前に宮城谷昌光の諸葛亮を読んだくらいの知識しかありませんでしたが十分に楽しめました。

    三国志の時代は日本だと卑弥呼の邪馬台国の時代ということを知って、中国は日本と比べるとずいぶんと進んでいたんだと思いました。

    史実があって、正史があって、演義があるということで、史実と正史、演義がどのように違うのかが書かれていて面白いです。

    演義で描かれている超人的な能力の諸葛亮も好きですが、そうでない諸葛亮も好きだなと思いました。

  • 初めて三国志を読んだのは中学生の頃だった。桃園の誓い、三顧の礼、赤壁の戦いに心躍らせ一気に最後まで読んだのを記憶してる。当時KOEIのゲームが流行ったこともあり、50万円もするシャープのx68000というパソコンを父に買ってもらったことを覚えてる。毎晩毎晩友人を家に招いて夜通し三国志をやっていた懐かしい記憶だ。
    歴史は書かれた時期や筆者の背景、当時の世間の評判などが反映されるものだ。描く人間の心情が現れるのは致し方ない。三国志も色々な系譜を経て真実とはかけ離れた点も多くあることだろう。我々がよく触れる「演技」などは事実にフィクションを効果的に加える事で中国の四大奇書として今なお世界中で読まれている。
    本書は史実と演技を対比させ、多くの関連性のある文学書なども取り入れ、描かれた時代背景などからどこまでを事実とするか推考していくような流れだ。これまでの自分の考えを覆すような記述もあり大変興味深く読み進められる。
    本書は曹操、諸葛亮、関羽を「絶」として中心的に描かれるが、キラ星の如く魅力的な人物で溢れているのが三国志だ。個人的に感情移入できる人物に必ず巡り逢えるし是非多くの人に三国志に触れて頂きたい。そこで予備知識がある事がこの本を5倍、10倍にも面白いものにしてる事は言うまでもない。
    歴史は勝者が作ると言うが、中国の歴史は固定された国家というものが長く存立せず(4000年の歴史とは統一国家でも民族でもなく単なる地域としての存在)、支配者が変わる都度、過去の否定と今の正当化が図られてきた。日本の近代史を占領軍が作るのと同じだ。現代に生きる我々は、今から1800年近く前に起きた出来事について、その後の研究や発見から色々な角度で見ることができる。今に生きる我々の特権として歴史に触れて考えてみてはどうだろうか。

  • 著者の「漢帝国-400年の興亡」が面白かったので読んでみた。
    三国志は演義も正史もざっとは読んで、好きな曹操を中心に関連書籍にも多少触れているのでその差異に関してはある程度は知っている範囲であった。
    ともあれ、演義のバリエーションの成立時期の社会背景などを意識した読み解きは面白い。知識の薄い西晋の記述も-演義や正史に依拠しないので主題から外れているのではと思いつつも-興味深かった。
    新書の分量の都合もあり、触れられる人物、エピソードに限りがあるのでやや物足りなさは残る。

  • 渡邊義浩 「 三国志 」三国志演義 と 正史の違いから政治的意図を紐解いた本


    三国志 正史とは 「正しい歴史」という意味でなく、国の「正統な歴史」という意味。事実か否かでなく→漢の正統を引き継ぐ国はどこか→その国の歴史が正史 という論理。歴史は勝者の記録である ことを再認識



    諸葛亮と劉備の活躍は 正史でも演義でも吉川三国志でも見れるが、曹操の功績は正史でしか見れない。とても面白かった。関羽が義の極みとして神格化していることを初めて知った。


    三国志の正史と演義の違い
    *正史の正統=曹魏=曹操
    *演義の正統=蜀漢=諸葛亮
    *曹操を正史は悪者としないが、演義は悪者とする
    *関羽を 演義は義の極みとして 神格化
    *演義において 諸葛亮は 正統の劉備を助け、漢を復興する人として描かれる
    *演義は滅びの美学を描いた文学〜漢の正統をひく劉備が建国し、神となった関羽、知識人が忠義を仰ぐ諸葛亮が支えた蜀漢の敗北を描く


    中国を理解する上でとても役に立つ
    *仁と愛の違い(仁は内であって外でない。義は外であって内でない)
    *儒教の人間観に含まれた差別(性三品説、華夷思想)


    仁と義の違い
    *仁は愛〜全ての者を等しく愛するのでなく、強さが異なる
    *義は 他者との関係を中心とする。誰かが生き延びて 家を守る〜関羽は 敵である曹操であっても 信義で結ばれているかぎり 命をかけて守る


    儒教の人間観に含まれる差別
    *性三品説(人は善だけの上品、悪だけの下品、善悪両方を持つ中品に区別される)
    *華夷思想(中華と異民族は人間として異なり、中華が夷狄の君主となるべき)


    曹操の功績
    *青州という軍事的基盤、屯田制という経済的基盤、献帝という政治的正統性を持つ
    *儒教国家の復興は目指さなかった
    *唯才主義〜賄賂を受け取るような人間だとしても才能が高ければ登用
    *漢と結びついた儒教の価値を相対化するため、文学という新しい文化的価値をつくった

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB05220049

  • 蜀漢を正統とする『演義』。曹魏を正統とする陳寿『三国志』。それぞれの視点から曹操、関羽、諸葛亮、そして、三国志全体を俯瞰することで、新しい人物像、三国の歴史が見えてくる。

  • 最初は単騎で強い武士
    次が軍師
    劉備を取り巻く家臣団の系譜整理はまさに経営と似てる

  • 面白かったです。三国志の基礎・導入本という感じで、一通りの三国志もの(小説)を読んだ方には丁度いい本かと思いました。
    史書三国志の位置付けや演義の成り立ちが分かりやすく書かれていて、何より文章がとても読みやすかったです。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    まずは三国志演義という物語には多くのバリエーションが存在していることには非常に驚いた。現在では様々な作家によって書かれているが、過去においても同様だったことは三国志という物語が多くの人に愛されていたということになるのだろうか。
    章ごとにテーマを決めて演義と正史による違いを解説し、正史の内容がどのように変遷してきたのか、演義に書かれている内容が完全な創作ではなく、何かしらの元ネタが存在することが多いということもなかなかに面白かった。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2018年 『中国時代劇で学ぶ中国の歴史 2019年版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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