近現代日本を史料で読む―「大久保利通日記」から「富田メモ」まで (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021076

作品紹介・あらすじ

歴史は史料に基づき描かれる-。「昭和天皇独白録」や「富田メモ」をはじめ、新たな史料の発掘は、歴史的事実の変更や確定をもたらす。なかでも「原敬日記」「高松宮日記」「真崎甚三郎日記」「佐藤榮作日記」など政治家、皇族、軍人が残した日記は貴重な史料であり、ここから歴史が創られてきた。本書は、明治維新期から現代に至る第一級の史料四十数点を取り上げ、紹介・解説し、その意義を説く。日本近現代史の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルは「近現代日本を」であるが、内容は「近現代日本政治を」といったところ。政治家、軍人、天皇側近の日記資料がおもに紹介されている。内容は各執筆担当者の自由にかなり任されていて、史料批判中心のものや面白エピソード中心のものまでさまざま。

  • 大久保利通日記、原敬日記、倉富勇三郎日記、『西園寺港と政局』、「木戸幸一日記」、「宇垣一成日記」、「富田メモ」など、政治家、軍人、官僚等の日記を中心に日本近現代史の史料四十数点をオムニバス的に紹介・解説。単なる史料ガイドではなく、執筆者陣の歴史研究者各自の〝泳法”とその〝読み”を披露している点が本書の特色だという。
    紹介されているどの史料も直に読んだことはないが、名前くらいは知っている史料から存在を知らなかった史料まで、いろんな近現代日本政治史の一級史料を垣間見ることができ、とても興味深い一冊だった。日記の書きぶりから、その筆者たる政治家などの個性が浮かび上がってくるのが面白く感じた。

  • 近現代の日記を政治家中心に紹介。日記は遺族の意向もあって出てこない事も多いだろうし、埋もれた日記はまだまだ多数存在するハズである。
    本書では歴史家による日記の解読作業について述べられているが、日記の解読・解析はもはやAIがやる時代に突入しつつある。よって、歴史家の役割は新しい史料の発見・発掘になってくる。でなければ、既存の史料をベースとした解釈論争が繰り返されるだけである(この「解釈」するだけの歴史家を揶揄する序章の「歴史家は気楽である」の部分は印象的)。すなわち、日記の重要性を丁寧に説明し、自分の研究対象の人物に関係する遺族に地道に接触し、遺品公開を説得していくという事に重点を置くべきではないかと感じた。出てくるのを黙って待っていてはダメだろう。
    尚、御厨先生が進めているオーラルヒストリーは信頼性が低いので鵜呑みは禁物だし、トータルな史料批判が重要なのは言うまでもない。

  • 自らの見聞や見解をしたためた日記はやがて本人の手から離れ,書き手の思惑以上の情報(影響)を後世へ伝える。本書は「時代を捉えること」について,さまざまなエピソードを教えてくれる。

  • 日本の近現代史、副題どおり明治維新の元勲、大久保利通が、残した「大久保利通日記」から戦後の宮内庁長官として、昭和天皇に仕えた富田朝彦の「富田メモ」まで、描く人の性格を映す鏡である内容は、人それぞれある事を語っている。ちなみにこの本は、編著なので各日記に関して、著者が割り当てられているので、その日記の解説に色々なものが、想像できて、2度おいしい本ともいえる。

  • 史料とは何か◆明治維新と近代-「英雄」たちの心の内◆大正・昭和戦前期-政党政治への道◆戦争の時代へ◆昭和天皇の記録-終戦秘史◆戦後政治と天皇-覆されえる歴史

  • 近現代史を日記などの史料で振り返る。日記といっても様々なものがある。事象だけを書いた日記から、他者の日記や回顧録と併読すると色々なことが明確になってきたりするという。

  • 史料という大海をどう泳ぐか。20人の学者が「近現代の重要人物達の日記」という海の、それぞれの泳ぎ方を披露している。
    それにしても近現代の史料というのは、本当にここ最近になって活字化された物が多い。未だ御遺族の気持ちに整理がつかないので発表できない、政治的に時期尚早なので発表できない、偶然に発見されたが未整理なので発表できない――まだまだ近現代史には未知の史料がたくさん眠っている。泳ぎがいがありそうである。
    所々に入っているコラムも読みがいがあり、単なる史料紹介本ではないのがマル。

  • 日記資料を身近にしてくれます。
    読書意欲を掻き立てられました。

  •  本書は歴史上活躍した過去の多くの著名人の「日記」を取り上げた紹介書である。
     普通は公開を前提としない個人的な「日記」が「発掘」されるということは、「歴史の再発見」につながる場合もあるし、日本の過去の歴史的出来事の「周辺事情」を深く探求することにもつながる。
     本書は明治維新から、昭和後期までの多くの著名人の「日記」とその内容を紹介しているが、発見にドラマがあるものもあるし、その内容を読んで、それまで一般に語られていた人物のイメージが一変した場合もある。
     そして何よりも、読むことにより、過ぎ去った日本のそれぞれの時代を立体的に鳥瞰するように見ることは、本書で言及しているように「ともかく歴史家は気楽である。彼は結末を知っている。・・・おまけに維新の元勲を旧知可友人のごとく論評するから、誠にすごいものだ」である。実に面白い。
     本書はダイジェスト版のような多くの著名人の「日記」の紹介書であるが、本書を読んで、それぞれの「日記」の内容を深く知るために、さらに、その研究書を読みたくなった。
     しかし、本書で紹介される日本の過去の指導層はよく「日記」を書く筆まめな人々であったと感じた。たしか昭和の団塊の少年の時代は、よく正月から一念発起して「日記」を書き始め、その記載は三日で終わるのが通例であったように「日記」が社会的風潮としてあったように思えるが、さて現在はどうだろうか。
     とてもそうは思えないが、それでもいまだに社会の指導層は「日記」を書いているのだろうか。
     個人情報が重視される現在において、国家の指導層といえど、そうそう「日記」が公表されることは少ないように思えるが、歴史という観点からは、「日記」という日本文化は現在でも継承され、いずれ遠い将来に本書で紹介されたように公表・研究されてもらいたいものだと思った。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授,東京大学先端科学技術研究センターフェロー

「2021年 『日本政治史講義 通史と対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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