超高齢者医療の現場から - 「終の住処」診療記 (中公新書 2142)
- 中央公論新社 (2011年12月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021427
作品紹介・あらすじ
高齢者施設に囲まれた高原の小さな病院。その院長である著者は、日々、多くの85歳以上の超高齢者を診療しているが、苦悩は深い。急速な高齢化により、介護施設の不足は深刻で家族は受け入れ先探しに疲弊する。認知症高齢者の介護問題や、年金不足による経済的トラブルも多い。どうすれば、豊かな老後を過ごすことができるか、そして穏やかな死を迎えることができるのか。老いと死を見守ってきた現場からの貴重な報告と提言。
感想・レビュー・書評
-
止まることのない高齢者の増加には、多くの問題が存在することを感じずにはいられなくなる一冊。介護者の果てることない苦労や、施設不足、尊厳死とリビングウィルの問題など、現場で活動している筆者だからこそのリアリティある事例と意見を読むと、日本の高齢化社会に対して手をこまぬいてはいれないという考えになる。家族内でも介護にまつわるトラブルは絶えないようだか、家族だからこそ真摯に向き合って、高齢者の尊厳ある最期を支えていかなければならないのではないだろうか。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
超高齢者医療の実話です。
身につまされる思いがいたします。 -
著者はとある総合社会福祉施設の中にある病院の病院長。
患者さんとの事例をもとに、医療・介護保険制度や疾患・障害の解説をされている。とともに、医療現場の苦悶や期待を飾りなく吐露されている。また、制度に対する意見だけではなく、医療や介護サービスを受ける方達に対するメッセージも数多くある。
一般の方にも現場で働いている方にも興味深い内容だと思う。
抽象論ではなくて、実際に現場で遭遇する事態についても分かりやすく話しを進められている。
僕自身、介護保険についての知識は曖昧な点が多いので、総論としてまとめてあって助かった。
また、話は尊厳死や安楽死、リビング・ウィルについても言及されているので興味深かった。
あとがきは2つある。
■おわりに おだやかな超高齢期とリビング・ウィルの普及を期待して
■あとがき:東日本大震災に見舞われて
出版の構想が固まり始めた矢先の被災だったとのことだ。
この「おわりに」「あとがき」だけを読んでも、著者の人間に寄り添う姿と、現実にどう生きるかの優しいまなざしに触れることができると思う。
漫然とした高齢者医療の現場を記すのではなくて、刻々と変わる臨床現場の「現在」に則して書かれているので、データも話題も新しい。(ちなみに、本書の発行は2011年12月20日である)
いま読んでおいて良かったと思った。