植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書 2174)
- 中央公論新社 (2012年7月25日発売)


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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784121021748
感想・レビュー・書評
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植物たちは、根から吸った水と空気中の二酸化炭素を材料にして、太陽の光を利用して、葉っぱでデンプンをつくる
学校で習ったし、もう当たり前の常識的なことになっているが、実際「どんなに費用が掛かってもいいから、水と二酸化炭素を原料に、太陽の光を使ってデンプンを作ってください」と依頼して引き受けられる人はいない
何気なく当たり前に感じていたがやはり植物はすごいことを静かにしている!
そもそも何も食べなくて生きていることがすごい!
「だって自分たちで作れるんですもの!」
⁉︎⁉︎⁉︎
し、失礼しました!
そう、先に書いた通り、植物たちは自分たちで、光合成によりデンプンやブドウ糖を作りだし、これらをエネルギー源としている
さらに言うとタンパク質となるアミノ酸までも作り出している
アミノ酸に特に必要なのは窒素なのだが、植物たちはこれを土から根を通して養分として取り込んでいる
そして植物たちのさらなる尊敬に値するすごいところはすべての動物の食糧を賄っているところだ
「ええ?でも肉食獣とかは肉しか食べないでしょ?」
まぁそうなんだけど、実際ライオンたちの餌となるのは草食動物
つまり植物を食べている肉を食べているのだから、全ての動物は植物たちを食べて生きていることになる
「そんなの植物がかわいそう 理不尽だ!」
まぁそうなんだけど、そこはうまくできている
植物たちにも動物が必要なため、少しくらいなら食べられてもいいと思っている
「うん でもちょっとだけよ…」
花粉やタネとして運んでもらったり、動物の糞により遠くへ運んでもらったり…と動き回ることのできない植物にとって、動物の存在は必要である
そうそして、少しくらいなら食べられても良いというものの、もちろん「だからぁ…ぜんぶはダ〜メ!」ということで、その被害が深刻にならないよう身体をつくり上げる高い能力をもっているのだ
そう、それらの摩訶不思議ですごい能力がたくさん紹介されている
トゲ、渋み、辛み、ネバネバ、匂い、毒…
など防衛方法はいろいろある
また本書で驚いたテーマは下記の2つだ
お日様が好きだと思っていた植物にとっても紫外線は有害てあるということだ
しかも、人類より先にご存知であった
「今頃紫外線紫外線て大騒ぎして…ちょっと前まで日光浴を楽しんでたくせにね」
そう自分世代が子供の頃は、子供が日焼け止めクリームなんて塗らなかった!
親切な植物なら「この人たちわかってないわ…大丈夫かしら」心配してくれていたかもしれない
植物たちのからだにはビタミンCやビタミンEを多く含み、抗酸化物質を作り出している
さらに言うとアントシアニンとカロテンの二代色素も作り出せる
美容に敏感な女性ならわかるだろう
例えばアントシアニンはハイビスカス、バラ、アサガオ、ツツジなどの赤い花や青い花に含まれる
そう花びらが美しく色づいているのは昆虫に蜜を吸って受粉してもらうだけではなく、紫外線による有害な活性酸素を除去するためでもあるのだ
またカロテンにおいて、野菜がわかりやすいだろう
太陽をガッツリ浴びた野菜は色が濃い
トマトやナスなどがわかりやすい
「もっと有り難くいただいてよね 天然のサプリなんだから」
仰るとおりです…
もう1つのテーマは寒さをしのぐ方法だ
例えば常緑樹は冬でも葉が落ちない
低温の寒い中でも緑色のまま、何事もないようにしている
なぜ凍らないか
それは冬の寒さに耐える準備をきちんとしている
冬に向かって葉の中に凍らないための物質を増やすのだ
それは糖分である
砂糖の濃度が濃いほど、真水に比べて凍りにくいのは想像できる
まさにその原理だ
「だからって葉っぱ食べたって甘くないわよ 毒もあるからやめた方がいいわ」
はい
「でもね、あなたたち野菜でわかるでしょ」
あ!
なるほど
冬の寒さを越えた野菜たちは甘い
雪下にんじんとか美味しい
凄いなぁ
植物は私たちより自然の摂理を理解している
話せない、動けない分知恵もある
「黙っているからってなにも知らないと思ってるの?うぬぼれないで」
すみません
植物は私たちのことが嫌いだろうなぁ
「これほど恩恵を与えているのに、まぁいつもとは言わないけど、恩を仇で返してくるんですもの」
すみません
これからはもっと仲良く共存できるように、知識を増やしていきます!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
植物は厳しい自然界で生き残るために、その環境に適した様々な生き方をとっている。名前をよく聞く身近な植物や野菜を題材にそれぞれの植物たちがもつ生存戦略について分かりやすく解説した本。
森林の良い香りは細菌やカビから植物たちが身を守るために出すもので、それを人間は昔から上手く利用しているというお話は特に印象的でした。
本書で紹介されている科学的かつ歴史的な観点から植物を観察すると、五感以上に「植物が持つすごさ」を感じることができ、豊かな心を持つことができるようになるのだろうなと思いました。 -
植物はすごい! 自分では動けないけど、その生き残り戦略は動物となんら変わることなくすごい。
植物は水と空気中の二酸化炭素と太陽光でブドウ糖やデンプンを作っているわけだけど、それは動物には絶対にできないことだし、人間も今のところどんなにコストをかけても、それはできないこと。植物はそれだけではなく、アミノ酸も脂肪もビタミンも成長に必要なものは全部自ら作っている。これはすごい!
植物のすごい! が満載の本。
少しくらいなら動物に食べられてもいいように進化し、あるいは一定程度は動物に食べられるように進化したり、逆に食べられたいないものは渋みや辛みを持ったり、猛烈な毒を持つように進化したり。
熱中症にならないために自分の体を冷やす冷却能力を持ったり、寒さに耐えるために体内の糖分を増やしたり、ロゼットという形態を得たり、地下茎を形成したり・・・とにかくすごい。
これだけすごいと、実は植物にも意識や知能があるんじゃないか・・・とさえ思ってくる。でも、それは違う。植物はそんなもの必要ないよ、という進化をしてきたんだなぁ。生き延びるや遺伝子を残すということに関しては意識や知能の有無が上位にあるってことではなく、種の戦略に過ぎないんだってことなんだろう。植物はすごい! -
植物の生態について、生きていくこと(遺伝子を残すこと)に対する仕組みの凄さについて書かれています。何気に見かける(よく聞く)、あの植物にこんな凄さがあったんだと面白く読ませていただきました。
植物は食べなくても、太陽と水があれば生きていけます。そこが動物と違うところなのですが、それでも地上には動物がいて、それと関わることなしというわけにはいきません。食べられることを通じて、お互いに利用しあって生態系が回っているのだなと、その仕組みを楽しく学ぶことができました。 -
年齢とともに、花の美しさや、芽生えの愛らしさ、葉の緑の多彩さに心癒される事が多くなった。
そんな植物の生き抜く戦略、知恵が満載の好著。改めて、光合成の凄さも認識できたし、有毒植物のくだりなど、すぐに役立つ知識もあって良かった。
惜しむらくは、むりやり「〜はすごい」との記述の仕方が、多少押し付けがましく気になった。編集上の売りなんだろうけど。 -
子ども向けなんだろうか? 植物学の基本部分についても省略せずに、ゆっくり、平易な文章で説明してくれる。その分、ここもう少し読みたいんだけど、というツッコミの浅さも目立つけれど、それは別の本の役割なんだろう。
基本的に動かない植物は、ほっといても育つもの、みたいに見られがちだが、実際にはすべての生命は植物なしには立ち行かない。光合成に始まって、棘、味、毒、色素、暑さに乾燥など、植物の生き残りをかけた「すごさ」を豊富な実例をいちいち上げながら説明してくれる。さらっと読めて、面白かった。 -
なぜ赤い果物は甘いのか
なぜ熱帯の植物はカラフルなのか
ユーカリの葉には青酸が含まれてるのになぜコアラだけは食べられるのか
冬を過ごすと野菜はなぜ甘くなるのか
種なし果物の秘密
等々、淡々とした文章で書かれた植物のフシギ。
面白かった! -
2015年12月24日に開催された第1回ビブリオバトル市内中学生大会A会場で発表された本です。
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光合成。トゲや毒による保身の術。少々食べられても平気。
種は自力で飛ばすか、動物を利用するかして、勢力拡大。
紫外線をものともしない抗酸化力。殺菌力。樹木は超長生き。
などなど、人間にはできないワザの数々。
太古の昔に海から上陸を果たして以降、植物たちは黙々と努力を重ね、
それらの能力を身につけてきた。・・というくだりで、胸があつくなりました。
ドリトル先生物語に描かれた、意思をもって月世界の一員たる月の植物の姿は
絵空事でなく、ごく身近にあったのです。
一読して以来、食卓での合掌の意識が深まりました。 -
最高に楽しかった。植物はすごい!まさにそんな感じだった。著者の田中修さんが書かれる文章も読みやすく、面白い。同著者の本を他にも読んでみたい。
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食べられないために、病気にならないために、強すぎる太陽から実を守るために、次の世代へ命をつなぐために、からだの仕組みを作り、栄養素を作りだす植物たち。それを食べて生きる私たちは感謝を忘れてはいけません。
動かずもの言わずしたたかに生きる植物たちへの筆者のやさしいまなざしが感じられる文章もいいです。
とても面白く読みました。 -
なぜ辛いのか。なぜ硬いのか。植物にまつわる形態や特徴のほとんどは生き残るために進化した結果である。身近な植物のギモンにも思わなかったようなことが生物学的に説明されていて、理系心がくすぐられる。専門用語が多いので、体系的な理解は難しかったが、子どもが図鑑を眺めるくらいの軽い好奇心で手に取るとちょうど良い。
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「すごい」力を知るとともに、何気なくみていた道端の植物に対する目の向け方が変わる。
「もし植物たちが、逃げ回ることができ、動物に食べられることを完全に拒否できるとしたら・・・」
動かなくてもこんなにすごい力をもつのだから、動けて意思まであったら地球最強の生物になりえるかも・・・。 -
本当にすごい。いつも生徒たちには「植物が光合成をしてくれているおかげで我々は生きていけるのだ、植物に感謝、感謝。そして、その光合成をするには日光が必要、太陽さまさま」と言っているのですが、その太陽光のなかの紫外線が強すぎると、植物はいたんでしまう。だからポリフェノールを作る。それで果実の色も濃くなるし、花も色づく。なるほど、日に当たって色付いておいしそうに見えるのは、実は自分の身を守るためだったのだ。そして、また我々も、そのポリフェノールをいただくことで、紫外線などから身を守っている。やっぱり、植物さまさまなのだ。雑草なんて言ってむやみに抜かないでください。しかし、抜いても抜いても生えてくる。植物は本当にたくましい。食べられる野草があるということを何かで読んで、以前はよく生徒を連れて春を探しに出歩いて、ノビルを見つけると抜いてはその球根を食べていました。けれど、それに似たスイセンの球根には毒があるというのを読んで冷や汗ものでした。アジサイも危険なのだそうで気を付けよう。マンゴーはかぶりつかないように。ウルシのなかまで、ウルシオールに似たマンゴールという成分で、口の周りがひどくただれるのだそうです。ヒガンバナがあちこちで咲き乱れるこのごろ。一度球根を味わってみたいものですが、どこまで毒抜きをすればいいのやら。植物とは上手に付き合っていきたいものです。
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本当にすごい!前に進むことばかりが良しとされ、結果どんどん発生する矛盾や問題に直面しては毎日毎日ソリューション発明を強いられている我々は、じっくり長い時間かけて開発された彼らの仕組みや工夫に学ぶべきところが山ほどあると思う。
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植物と動物の循環は芸術的。植物が光をデンプン等のエネルギーに変換して、それを摂取した動物は体内でエネルギーに変換して活動し、もとの水と二酸化炭素に戻って動物の体内から出てゆく。
植物は食べられる代わりに、動く動物に種を運ばせる。
動けないというハンディは植物を戦略家に仕立てた。
その戦略を確立する為には、夥しい先人(先植物)の命をかけたトライアンドエラーが重なっているだろう。
ピーナツの戦略など、どうやって確立したのか、どういうプロセスを経て行き着いたのか、とても想像出来ない。
人間と彼岸花の共生、紫外線他自然環境への適応、読みどころ沢山だった。 -
植物のすごさがわかる本。知らなかった色々なことが分かり、身近な植物、ウォーキング中に見かける植物も、実はすごい!ってことがわかりました。
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田中修(1947年~)氏は、京大農学部卒、同大学大学院博士課程修了、米スミソニアン研究所博士研究員、甲南大学理学部助教授・教授等を経て、同大学特別客員教授・名誉教授。専攻は植物生理学。植物に関する一般向け書籍の執筆多数。
本書は、題名の通り、我々が日頃目にしている植物たちの生態の「すごさ」を、具体的に紹介したもので、目次と内容は以下である。
第1章:自分のからだは、自分で守る・・・植物は食物連鎖を通して地球上の全ての動物に食糧を賄っている。(一部の)植物はトゲで(動物に食べられないように)体を守っている。
第2章:味は、防衛手段!・・・植物は渋味や辛味、苦味や酸味で体を守っている。
第3章:病気になりたくない!・・・植物は香りなどで病原菌の感染を防いでいる。
第4章:食べつくされたくない!・・・植物は毒で体を守っている。
第5章:やさしくない太陽に抗して、生きる・・・植物は過剰な太陽光から体を守るために、様々な仕組みを持っている。
第6章:逆境に生きるしくみ・・・植物は寒さや暑さから体を守るために、様々な仕組みを持っている。
第7章:次の世代へ命をつなぐしくみ・・・植物は種や花粉が無くても子孫を作る仕組みを持っている。
私は、近年の昆虫ブームの火付け役の一つである(と私は思っている)丸山宗利氏の『昆虫はすごい』(2014年)(尚、本書は2012年)も以前読んだが、擬態や共生などの昆虫の形・生態にもまして驚いたのは(改めて認識したと言った方が正確だが)、それらの形・生態は「進化」の結果だということであった。即ち、彼らの形・生態は、その個体が意図したわけではなく、偶々生じた(突然)変異において、生存に有利な形・生態が自然選択され、その膨大な積み重ねによってそうなったものなのだ。我々は、あまりにも精巧な形・巧妙な生態を、思わず「(何らかの意図に基づく)戦略」と考えてしまうが、当人たちはそんな「戦略」を立てていたわけではないのである。
そして、そのことは植物についても同様に当てはまるのであり、本書で紹介された植物の「すごさ」も進化の結果なのだ。進化のプロセス・仕組みとは、本当に驚くべきものである。
植物の「すごさ」、面白さがわかると同時に、「進化とは何か」を考えさせてくれる一冊と言えるだろう。
(ただ、文章が淡白で、似たような記述の繰り返しが多いのは難。文章表現にもう少し工夫があれば、より印象の強い本となっただろう)
(2022年12月了)
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田中修の作品





