政権交代 - 民主党政権とは何であったのか (中公新書 2181)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021816

作品紹介・あらすじ

2009年夏、日本で初の民意に基づく政権交代が起こった。だがその後の民主党政権は、小沢をめぐるカネの問題に苛まれ、鳩山、菅、野田と首相が代わるたびに政策が大きく変容、離党者が相次ぎ、「決められない政治」が続いた。当初、八割近くの人びとが支持した政権交代とは何であったのか。本書は、民主党政権の軌跡を辿るとともに、政権交代を経ても、なぜ民意を反映しない政治が続くのか、その問題を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 民主党政権のおさらいと、現行の選挙制度の問題点・改善策をまとめた本。
    中盤までは小泉内閣~野田内閣までの平成政治史を解説。非常に分かりやすい。特に普天間基地を巡る鳩山元首相の二転三転していた対応が印象的。終盤では日本の選挙について。筆者の分析結果によると、立候補者の選挙公約は選挙結果に一切影響せず、有権者がいかに政党名で判断しているかが証明されていた。薄々気づいてはいたものの学術的な裏付けを前に改めて衝撃を受けた。
    制度云々より、有権者が立候補者ごとに個人レベルで比較検討しない事が、日本の選挙の最大の問題かと

  • 著者の提案する選挙制度に賛同しない。
    選挙制度を幾らいじっても、選挙カーから、名前の連呼という現状の選挙運動では何も変わらないと思う。
    少なくとも、選挙期間を1ヶ月は、必要だと思う。
    選挙が、それまでの議員での国会活動の評価と結びついていないのは、僕も問題だと思う。

  • -108

  • レビュー省略

  • [変わったもの、変われなかったもの]長年にわたる自民党政権に代わり、国民の期待を背負って民主党が政権に就くことになった2009年の政権交代。その政治的事件をもたらした原因、そして政権交代後の民主党の「凋落」を踏まえつつ、日本のあるべき次の政治形態について考えていく作品です。著者は、米国の数々の大学で研究教育に従事した経験をお持ちの小林良彰。


    政権交代にまつわるデータや出来事がわかりやすく時系列でまとめられており、当時の流れを振り返る上で非常に便利な一冊。小泉政権以後から野田政権に至るまでの日本の政局のテンポの速い変転を理解することができました。本書で示される政権交代が起きた理由などについては、巷間で語られるところのものから大きな違いがありませんでしたが、スタンダードな見方を身につけておく上で有益だと思いました。


    政治プロセスの適切化を主目的とした選挙制度改革の提言については、読者によってその賛否がわかれるところがあるかと思います。他方、選挙制度の改革というのが本当に一筋縄ではいかないことが本書を読むだけでもよくわかると思いますので、議論の出発点として読んでみるのもまた良いのではないでしょうか。

    〜日本の政権交代は、権力を担う政党政治家が代わっても、有権者にとって政治が変わるわけではなく、未来が明るく見えるとは言いがたい。つまり「権力の交代」にとどまっているのである。〜

    それにしても著者による鳩山元総理への指弾ぶりはすごかった☆5つ

  • なんかマスコミ受けする本という印象を出ない。
    この人は計量政治の専門じゃなかったか?

  • 民主党政権で何が起こったかの備忘録。それを小選挙区制への疑問でサンドイッチ。

  • 2014年1月1日読了。2009年夏の大事件・自民党から民主党への政権交代とは何であったのか?について、小泉~安倍~福田~麻生と続いた自民党政権における「決められない政治」から、鳩山~菅~野田と迷走を続けた民主党政権の実際と、日本の政党政治の何が問題か・またそれをどうすれば改善できるかを提言する本。自民党が重要法案を通せず有権者に支持されなかったのは衆参ねじれによる部分が大きかったが、民主党政権が迷走を続けたのは民主党自身が政権運営できる能力を全く欠いていたこと、また有権者が政党の主張・実績を評価することができていないことが原因なのか。とはいえ、有権者の我々が望んだ現在の「決められる政治」が、結局現在の秘密保護法案の成立や中国・韓国との外交的対立を招いているのだから、政治というものにも唯一の正解はないものだ・・・。

  • 今となっては空手形の別名扱いの「マニフェスト」だが、理念自体は決して否定されるものでないと思うし、考えてみれば公約のない選挙なんて怖くて参加できるものではない。公約の重要性は民主党政権の未熟さとは明確に切り離して冷静に議論すべき問題なのにと思っていたら、この本で見事に論じられていた。

    著者によれば原因は小選挙区制度にある。対立候補が互いに多くの有権者の支持を得ようとして総花的な公約を提示する結果、どの政党も政策が似通ってしまう。そしていざ政権を担当し公約を実行しようとすると、有権者の一方の期待に反する行動を取らざるを得なくなるというもの。

    また、有権者の側でも自らの意思が政治に反映されるという期待値が極めて低いため、次の選挙では政策ベースでなく単なる政党ベースや知名度ベースでの投票が行われ、勢い投票行動は現行政権への懲罰的な色彩を強く帯びることになる。

    かくして有権者が選択したというわけでもなく、実現性も高いわけではない政策を掲げる政権が誕生する。そしての公約が破られ、懲罰的選挙が行われ・・・というvicious cycleが成立してしまうというわけだ。

    政治改革が行われた90年代以降、殆どの選挙は政権担当政党の完敗(例外は小泉政権)であったことを考えると、小選挙区制に原因ありとの議論は非常に説得力がある。現在久し振りに安定的な政権を頂く日本だが、低学歴・低所得者が特に現行政権への不満を抱く傾向があることを考えると、何か一つのボタンの掛け違えで民主党政権のような混乱に陥らないとも限らない。今のうちに本書で検討されているような選挙制度改革を検討する必要があると強く思った。

    気になるのは題名。主題は明らかに選挙制度にあるのに、これだと民主党政権の総点検のみが中心であるような誤解を与えてしまい、損だと思う。また終章の展開が素晴らしいだけに、中盤までの民主党クロニクルがやや冗長だと思った。

  • 八割は民主党政権時代の時系列の記述となっており、手軽にかつまとめて振り返るのによい。ただし出版時期との関係で2012年8月末までであり、何とも中途半端。年末の衆院選か、せめて11月の野田総理による解散宣言までカバーしてほしかった。
    最終章は筆者専門の投票行動分析。筆者は現在の選挙制度では政策が論点になっておらず、政治が民意を充分に反映していないとして、少なくとも衆院では比例代表制ベースの制度とその後の国会での討議が望ましいとしている。民意の忠実な反映という点からは一理ある。ただし国会で質の高い討議がなされる保証がない以上、政策決定に時間やコストがかかる、「決められない政治」になるおそれはある。

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著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授。
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、法学博士。
(主要著作)
『公共選択』東京大学出版会、1988年
『現代日本の政治過程』東京大学出版会、1991年
『選挙・投票行動』東京大学出版会、2001年
『制度改革以降の日本型民主主義』木鐸社、2008年
Malfunctioning Democracy in Japan: Quantitative Analysis in a Civil Society, New York: Lexington Books, 2012



「2014年 『代議制民主主義の比較研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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