アダムとイヴ 語り継がれる「中心の神話」 (中公新書 2188)

  • 中央公論新社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021885

感想・レビュー・書評

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  • 古代の宗教から現代の科学(ミトコンドリア・イヴとY染色体アダム)、政治から社会、思想から文化、文学から芸術まであらゆる領域に跨って浸透し、根底で生き続けてきた神話のなかの神話であるアダムとイヴについて眺めていく内容となっています。

    本書の魅力は一つの見方のみに囚われることなく、例えば旧約聖書を寓意的に解釈しようとしたアレクサンドリアのフィロンから見たアダムとイヴ、逆に旧約聖書を実際にこの地球上で起こった事実であったと解釈しているヒッポのアウグスティヌスから見たアダムとイヴ、グノーシス派の解釈から見たアダムとイヴ、そのほか両性具有説や男尊女卑派及び対等派等々多くの視点を、これまた多くの芸術作品や文学作品を交えて概観していく内容となっており読者の視野を拡げてくれるところにあるかと思います。

    また後半はアダムとイヴの二人の子供であるカインとアベルにもスポットが当てられ、さらにアベルの生まれ変わりとして誕生するセツ(セト)にまで世界は膨らんでいきます。

    本書の序盤で語られる「主なる神は土の塵で人を形作り、その鼻に命の息を吹き入れられ、人はこうして生きるものとなった。さらに続いて神は東方のエデンに園を設え、そこにアダムを連れてくる。ということはつまり、アダムが生まれたのは楽園の中ではなくて外になるわけだが…」という一文に惹かれる方ならば最後まで楽しみながらあっという間に読み終えることができる一冊かと思います。

  • 93
    ハリネズミは、キリストの贖罪の血を象徴する動物でもあるのだ。

  • 「世界でいちばん有名なカップル」をテーマに、聖書解釈の歴史や議論の持つ意味合いについて解説した一冊。
    アダムの肋骨は元々何本あったか、イヴになった肋骨は最後の審判のあとどうなるのかといった疑問はキリスト教との接点の薄い自分には考えもしなかったことだったので、純粋に好奇心を刺激され、楽しく読んだ。イヴやカインには再解釈をする動きもあったのに「優等生」であるセツが近代以降ほとんど忘れ去られてしまったという記述には妙に納得。罪深いとされたイヴやカインには、確かに私も「必要悪」めいた不思議な魅力を感じる。

  • 馴染みのあるテーマにも関わらず
    違和感のある図像が多くあった印象。
    自分は「その時代で異端でない」ものを
    多く見てきただけなんだな。

    『創世記』に人間の創造の場面が二度あるのが面白い。
    イヴが生まれる前のアダムは両性具有なのかという問いは盲点だった。

    「キリスト教は、イヴはアダムを唆したとして女性蔑視の傾向がある」だとか
    「楽園を追放されたことは今に続く辛い現世の始まり」といった印象は、
    確かにそう主張する勢力もある一方、
    時代が下る中で有力な解釈になったり、
    反対の主張の方がむしろ主流の時代があったり、
    折衷案や全く別の解釈があったりと、
    思想の多様さ奥深さを知ることができた。

    表題をいい意味で裏切り、
    カインとセトの記述も多いのも良。

    宗教曲でよく聞く
    「涸れた谷に鹿が水を求めるように/
    神よ、わたしの魂はあなたを求める」の「鹿」は
    楽園図で不可欠の存在だったんだ。

  • ・一角獣がキリスト教においても親しまれてきた背景には、ある種の誤訳がかかわっているとも言われている。すなわち、旧約聖書がギリシア語に訳されたとき(紀元前3世紀)、二角獣の一種を意味するヘブライ語に、「モノケロス(一角獣)」という語が当てられたのだった。

    ・「涸れた谷に鹿が水を求めるように/神よ、わたしの魂はあなたを求める」

  • OAa

  • キリスト教とか今まで全く興味なかったのに、大学生になってから興味を持ち始めたので読んでみました。
    この本は美術作品を多用してアダムとイヴを読み解いていきます。
    美術がサッパリな私でも関心を持つことができました。
    内容は旧約聖書の基本的なことが頭に入っていないと難しいかなと感じました。

  • 117

  • アダムとイヴの神話がどのように描かれてきたかを、古今の書物や絵画から解き明かす。よく知られた話だけれど、これほどまでにいろんな解釈が存在するとは知らなかったので、とても勉強になった。

  • アダムとイヴのイメージが固定されたのはそんなに古いことではない
    リリス、サタン、カインとアベル、セツ
    創世記=創生記


    結局、男は都合の悪いことはいつも女のせいにする

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著者プロフィール

1954年、広島県に生まれる。2020年、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を退職。現在は、京都大学名誉教授、京都精華大学特任教授。専攻は、西洋美術史。
 著書に、『キリストと性』(岩波新書、2023)、『反戦と西洋美術』(ちくま新書、2023)、『ネオレアリズモ──イタリアの戦後と映画』(みすず書房、2022)、『フロイトのイタリア──旅・芸術・精神分析』(人文書院、2008、読売文学賞)、『モランディとその時代』(人文書院、2003、吉田秀和賞)など多数、
 訳書に、ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー──資本主義宗教の時代における作品』(共訳、月曜社、2022)、同『王国と楽園』(共訳、平凡社、2021)など多数がある。

「2024年 『アートの潜勢力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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