アダムとイヴ 語り継がれる「中心の神話」 (中公新書 2188)
- 中央公論新社 (2012年10月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021885
感想・レビュー・書評
-
古代の宗教から現代の科学(ミトコンドリア・イヴとY染色体アダム)、政治から社会、思想から文化、文学から芸術まであらゆる領域に跨って浸透し、根底で生き続けてきた神話のなかの神話であるアダムとイヴについて眺めていく内容となっています。
本書の魅力は一つの見方のみに囚われることなく、例えば旧約聖書を寓意的に解釈しようとしたアレクサンドリアのフィロンから見たアダムとイヴ、逆に旧約聖書を実際にこの地球上で起こった事実であったと解釈しているヒッポのアウグスティヌスから見たアダムとイヴ、グノーシス派の解釈から見たアダムとイヴ、そのほか両性具有説や男尊女卑派及び対等派等々多くの視点を、これまた多くの芸術作品や文学作品を交えて概観していく内容となっており読者の視野を拡げてくれるところにあるかと思います。
また後半はアダムとイヴの二人の子供であるカインとアベルにもスポットが当てられ、さらにアベルの生まれ変わりとして誕生するセツ(セト)にまで世界は膨らんでいきます。
本書の序盤で語られる「主なる神は土の塵で人を形作り、その鼻に命の息を吹き入れられ、人はこうして生きるものとなった。さらに続いて神は東方のエデンに園を設え、そこにアダムを連れてくる。ということはつまり、アダムが生まれたのは楽園の中ではなくて外になるわけだが…」という一文に惹かれる方ならば最後まで楽しみながらあっという間に読み終えることができる一冊かと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
93
ハリネズミは、キリストの贖罪の血を象徴する動物でもあるのだ。
-
「世界でいちばん有名なカップル」をテーマに、聖書解釈の歴史や議論の持つ意味合いについて解説した一冊。
アダムの肋骨は元々何本あったか、イヴになった肋骨は最後の審判のあとどうなるのかといった疑問はキリスト教との接点の薄い自分には考えもしなかったことだったので、純粋に好奇心を刺激され、楽しく読んだ。イヴやカインには再解釈をする動きもあったのに「優等生」であるセツが近代以降ほとんど忘れ去られてしまったという記述には妙に納得。罪深いとされたイヴやカインには、確かに私も「必要悪」めいた不思議な魅力を感じる。 -
・一角獣がキリスト教においても親しまれてきた背景には、ある種の誤訳がかかわっているとも言われている。すなわち、旧約聖書がギリシア語に訳されたとき(紀元前3世紀)、二角獣の一種を意味するヘブライ語に、「モノケロス(一角獣)」という語が当てられたのだった。
・「涸れた谷に鹿が水を求めるように/神よ、わたしの魂はあなたを求める」 -
OAa
-
キリスト教とか今まで全く興味なかったのに、大学生になってから興味を持ち始めたので読んでみました。
この本は美術作品を多用してアダムとイヴを読み解いていきます。
美術がサッパリな私でも関心を持つことができました。
内容は旧約聖書の基本的なことが頭に入っていないと難しいかなと感じました。 -
117
-
アダムとイヴの神話がどのように描かれてきたかを、古今の書物や絵画から解き明かす。よく知られた話だけれど、これほどまでにいろんな解釈が存在するとは知らなかったので、とても勉強になった。