お伊勢参り - 江戸庶民の旅と信心 (中公新書 2206)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022066

作品紹介・あらすじ

千三百年以上の歴史をもつ「お伊勢さん」には、今なお全国から参詣客がやってくる。一般庶民の参詣が根付いた江戸時代、路銀いらずのおもてなし文化から、およそ六十年周期で発生した数百万規模の「おかげまいり」まで、日本中の庶民がいかにお伊勢参りに熱狂したかを、様々な史料が浮かび上がらせる。著者自身が、二十五年間にわたって実践したお伊勢参りの記録も収載した。街道の文化を再現する一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000966056

  • 2.5~3ケ月かけて、関東地域から伊勢、金毘羅、大和と旅行。一人一日一万円だから、100万円位。
    昔は、宿屋で荷物を送ったり、為替で現金を受け取ったりした。
    金品を盗まれても、お布施をもらったり、無料で宿泊、飯をもらったり。
    著者は、奈良大学で毎年学生等とともにお伊勢参りを実施している。

  • 伊勢神宮の式年遷宮の年にあわせて発刊されたと思しき新書。図書館で気軽に手に取ったが意外と面白かった。

    江戸時代のお伊勢参りを「おかげまいり」を中心に解説し、最後の章では、著者が学生たちと徒歩でのお伊勢参りを再現した様子(大学での毎年の恒例行事になり宝来講と称した)が描かれている。実はもっとも印象に残ったのは、お伊勢参り再現の旅でのエピソード。

    けっこう苦心するのが道中での休憩場所(特にトイレ)。2回目の年に、行き当った長屋門のある民家で門の下を食事場所に使わせてもらえるよう頼んだ。そうしたら中に招き入れられて、味噌汁やゆで卵などのたいへんな歓待を受け、翌年以降も必ずその家で昼食をとり、ご接待を受けるようになった。10年以上それが続いた後、もう年をとって思うようなご接待ができないということで場所提供のお断りがあった。著者らは、ご接待は不要なのでトイレと軒下だけでも使わせてほしいと頼んだが、あくまでも固辞された。その後も毎年、通り過ぎる学生たちに声をかけたり、金一封まで渡してくれたりといった交流は続いた。ほんとうの「ご接待」とは何ぞやということに思いをいたすエピソードである(まったく同様の事例が他の集落でもあった)。うまく言葉にできないが、人をもてなすというのは、もてなす側の覚悟というか、そういう真剣勝負みたいなところがある。田舎や関西にその気風がまだ色濃いように思う。

    本来の主要コンテンツである、江戸時代の旅に関する記述も面白かった。

    ・村々で「講」を組織して伊勢の御師と連携しながら、代参(代表者だけお参りする)を送り出したり、総参りに出かけたりしていた。

    ・お伊勢参りにでたついでに西国や信濃方面など方々を巡っていた。それらをまとめて「お伊勢参り」。2,3月に及ぶ旅になった。名所・旧跡を訪ねたり、名物を賞味したり、芝居見物をしたり、お土産を買い込んで別送したり、なんだか現代の旅よりよほど贅沢ですらある。ただ、駕籠や馬も所々使ったりするが、現代の基準からすると相当健脚でなければならない。

    ・家出同然に参宮に出てしまう事例が当たり前にあったようだ。もちろん批判もあったが、お伊勢様ゆえかなり大目に見られていたようだ。女子供や下層の人に多かったようだ。

    ・そうした突発的参宮が同時多発的に生じたのが「抜け参り」のちには「おかげまいり」。中でも大規模なのは江戸時代で5回発生した。突発的に大群衆が伊勢神宮に押しかけたという。

  • 伊勢つながりで読んでみました。伊勢参りの歴史と風俗を様々な史料によって紹介し、奈良大学から25年に亘って
    実践したお伊勢参りの様子を活写するもの。面白い。

  • 通常の配架場所: 1階文庫本コーナー
    請求記号:175.8//Ka31

  • 現代私達が思い描く「旅」のイメージはどうやら江戸時代ごろに固まってきたものらしく、それ以前の旅は放浪ってイメージに近いらしい。
    江戸時代に盛んになったお伊勢参りを中心に当時の旅や信心について考察する内容です。

    当時の人のお伊勢参り感や約60年に一度起きた数百万人単位のおかげまいりなどは日本の歴史や文化を考えるにも面白いと思える。
    そして、最後の章では現代に二十五年にも渡って実際に歩いてお伊勢参りを行ってきた経験等を書き綴っているのも面白い。

    現代にも残る「おもてなしの文化」を語る一節は特筆に価する。
    こちらがお願いする以上のおもてなし、そして提供をする側が考えるおもてなしが出来ないときは、たとえ要望する側が望むことは可能であっても断る。契約通り、言われたことだけするといった現代普遍的になりつつある考え方ではない文化が日本の近代化の中でどのような影響を与えたのかと考えさせられる。

  • 【目次】
    1. 庶民の家出先として?
    2. 江戸時代の庶民のお伊勢参り
    3. 数百万人のおかげまいり
    4. 江戸時代の旅のなぞ
    5. 歩く旅・現代ーお伊勢参りを体験する

    【概要】
    お伊勢参りが好きすぎる著者による、お伊勢参り四方山話。
    前半は、江戸時代の旅日記や随筆、果ては裁判記録に残る、お伊勢参りに関するエピソード。
    後半は、著者の研究室を中心として、25年間毎年行われた、お伊勢参り体験とそこから学んだこと。

    【感想】
    旅の持つ意味の変遷や、お伊勢参りの歴史的位置づけを研究したものではなく、史料に書かれたエピソードや、著者自身のお伊勢参り体験の中での心温まる話を、ゴシップ的に楽しむ本。

    お伊勢参りと歩き旅とを愛するあなたへ。

  • 鎌田道隆『お伊勢参り 江戸庶民の旅と心』中公新書、読了。江戸時代の庶民にとって最も代表的な「旅」がお伊勢参り。…と聞けば幕末の「ええじゃないか」を想起しがちだが、本書は特異点だけに注目するのではなく、江戸時代の庶民がどのように「旅」を経験したのか、史料から明らかにする。

    確かに「信心」が理由であれば、抜け参りは許され、開放的外部との接触が人を蘇生させる。しかし、費用はいくらぐらい? 何を食べた?等々……その衣食住の受け入れや旅の実際については、本書で初めて知ることが多い。

    圧巻は「歩く旅・現在 お伊勢参りを体験する」。学生とわらじを案で、奈良大学から5日かけて励まし合い、接待を受けお伊勢様へ歩いていく。見えてくるのは現代には「道中」がないこと。地域開発や生きた教育のヒントが見え隠れする。

  • 面白かったです。

  • 実験歴史学を提唱された鎌田先生の著者だけあって、近世における旅(道中)の具体的な様相が伺えます。

    お伊勢参りについては、宝永のおかげ参り・明和のおかげ参り・文政のおかげ参りという60年間隔の3つのおかげ参りを画期に考察されており、明和の頃から「信仰」の旅から物見遊山の旅へと変化していったとされています。

    また、奈良大学で行われていた「宝来講」での経験や出来事は、我々現代人が忘れてしまった多くのもの(旅人へ施行する心遣いetc)が詰まっているように感じました。

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