悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書 2226)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022264

作品紹介・あらすじ

古今東西の名句・名言を集めた「引用句辞典」は、スピーチなどで実用的に役立つだけでなく、人間の知恵や真理、処世訓の宝庫でもある。本書ではマキアヴェリ、シェイクスピア、タレーラン、夏目漱石、吉本隆明ら69人、71の名句・名言を紹介。あわせて、政治・経済から少子化、いじめ問題に至るまで、近年の時事的な話題を切り口に、引用句を生かして社会の深層と人間の本性を見抜くコツを伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • クセのある、名言集。
    政治批判が強く、当時を懐かしみつつ読んだ

  • バカロレアで重視されるのはオリジナリティーではなく的確な引用能力であり、その文化的背景は『聖書』読解の伝統によるものらしい。日本では個性だとかオリジナリティーが叫ばれるが、やはり詰め込み教育によるある程度の知識量は必要なのではないかとも思う。
    本書では69人71の名句・名言が紹介されており、署名も『辞典』となってはいるのだが、2007~2013年の毎日新聞連載記事の書籍化なので、その中身の殆どは時評であり、内容的に少々古さも感じる。こういう本を中公新書が出すのも珍しい。

  • ”教養”の重要性を再認識できる。過去の名著からの引用から現代の世相を鋭く斬る、頭の体操に良い一冊。

    辞典というよりコラム。毎日新聞の連載コラムをまためたものらしい。

    過去の名著からの引用句を基に、現代の世相にグイグイと踏み込んでいく。教養があることがこれだけ世の中を見る目を養うのかという好例。感動すら覚える。

    読書=人生に役立つ知識、というわけではないのだが、身に付いた教養が役立つのは、逆説的だが役立てようと思わずに身に付けたものだからこそなのだろう。

    生活スタイルこそ大きく変われども、人の思考回路は大きくは変わらない。

    教養を武器に世渡りをしていくこともできる、近年廃れ気味な教養の重要性を本書で再認識することができた。

  • 目次
    1 人間の本性、世界の不条理
    2 好き嫌いが決める政治
    3 強欲資本主義と財政破綻
    4 成熟を拒否する日本人
    5 自己表現としての殺人
    6 教育の顧客満足度
    7 面倒なセックス
    8 終わりの始まり?

    感想
    本書は大学1回生の時に中公新書のセールの際に購入し、本棚の肥やしになっていたところ、不意に発見して積読リストから放逐するに至った。
    格言というのは物事を端的に表し、さも本質を捉えて悦に浸るために知っておくのも悪くはないだろうという下心から読み始めたが、意外にも格言の類は時代を超えて通用するものであると実感した。
    個人的には第4章及び第6章における記述から得るものがあった。
    第4章では、日本人の幼稚性の理由の分析として、➀日本における高度資本主義の異常な発達、②成熟に伴う責任を回避したいと願う人間がある時期を境に急激に増えてきたことの2点が挙げられている。また、幼年時代こそ「真の人生」として望郷の念を抱き、過去をよりどころとする生き方を正道とみなす傾向がより強くなっており、”子供のままの精神状態で、成熟という段階を経ずに老年に突入していくことの矛盾”が指摘されている。本書ではそのような生き方に対して潜在的な批判が向けられているような筆致を感じるが、現代においては上記のような生き方も多様性のうちに容認されるべきと思われる。ただ、より俯瞰して国家という集団として見たときに労働者の減少という致命的な問題が生じることへの懸念としては理解できる。確かに、現状維持という形で時間だけが流れていけば、いずれ国債の暴落、年金制度の崩壊、セーフティネットの消失という危機は必ず訪れる、いつ爆発するか分からない時限式の爆弾を多数抱えた日本を変えるべく、志高く立ち上がれ若者よ!と警鐘を鳴らしたくなる気持ちを一片たりとも分からないとは言わないが、若者の1人としてはもはや袋小路の詰み状態であり、それならば日本という国家に依存する必要のない能力の研鑽に励み、泥船から脱出せよ!と言ってくれる方が有難いと思ってしまうのは責任感のなさをとがめられてしまうだろうか?日本で教育を受けたならば日本に尽くすのが義務だろうといわれても、やはり自身の幸福を追い求めるのが主流だろうし、狭義の功利主義といわれようと畢竟自分のいなくなった後の世界に興味を持てというのは酷に思われて仕方がない。
    第6章では、第4章のように批判的な見方をしていたのとは異なり、納得のいく記述が多かった。”「やりたい仕事」というのが、仕事を選ぶ「前」にそう感じるのと、仕事を選んでしまってからそう思うのとでは、まったく異なってくる…始めてみない限り、それが楽しいか否かはわからないし、…自分がやるべき仕事だったのか、そのことも理解できない…本当の楽しさがわかるのは、仕事を始めてかなりたってからのことであり、それまではむしろおおいに労苦を伴うケースのほうが多い。” ”近年、若者離れの著しいジャンルを眺めてみると、そのほとんどが「最初が面倒臭い」ものであることに気づく”。なるほど、石の上にも3年とはよく言ったものだ。昨今、転職がトレンドとなり、SNSにおいては自称インフルエンサーたちが「ワンオペ」だの「起業」だのを声高に叫んで久しいが、個人的にはこのような人々は他人には真似できないだろドーダという精神の持ち主と、情弱ビジネスのオーナーのどちらかだろうという偏見がぬぐえずにいる。確かに、ブラック企業はいるだけで被捕食者として搾取され続けるが故に一刻も待たずに逃げ出すべきであろうが、「自分にはもっと就くべき仕事がある」「自分にしかやれないことがある」との逃避精神が先行して、ビギナーズラックで得た新卒就職先を辞職し、ノースキルのまま転職市場という魔境へと駆け出す夢想家が少なからずいるように思われる。逆に言えば、人が面倒がり、続けたくないと忌避される仕事をこつこつとやることで、自然とその分野での第一線を張ることができうる現状は、秀でた才能がない者にとっては朗報であり、自身の採るべき道であることを再認識できたし、自戒として書き留めておきたい。
    もっとも、このような格言をまとめた本として逃れ得ない宿命として、一分野に沿って書かれたものと違い、読了した後に知識の体系が何ら身に着くことはないというのは、いささか時間を贅沢に費やしたのではないかという思いに駆られる。向き不向きの問題であり、自分にはあまり向いていないジャンルであったというだけで、思考を巡らす機会を与えてくれた点においては良書であったのだろう。

  •  孫引き引用しようにも、一つ一つの引用句が長すぎる。
     2013年 第二次安倍内閣発足当時に出た本だけに、懐かしい話題が多い。菅内閣といっても、菅義偉ではなく菅直人だし。
     イラストが酷い。最初はヘタウマかと思ったら、次第にヘタヘタと判った。技術の拙さをスクリーントーン処理で糊塗している。よって☆4つ。

  •  古今東西の引用句を用いた時事エッセイ集。本書は様々な引用句を紹介しつつ、著者が昨今の時事問題(政治・経済・教育など)を解説するという形式をとる。
     紹介されている引用句の中には興味を惹かれるものがいくつかあった。例えば、デュルケムの教育に関する言葉は、教職に就く者であれば引用する機会は一度や二度では済まないだろう。自身の考えを1~2行の言葉で端的に表現し、その言葉の重みを発言者の経歴や業績で裏付けてくれる「引用句」というのは便利なものであると感じさせられる。
     ただ、本書の内容を見た場合は中途半端な感じが否めない。即ち、多種多様な引用句の手引きとして位置付けるのであれば、その解説(発言者のプロフィールや発言の文脈など)が不十分である。一方で、引用句を用いた時事問題の解説書として位置付けるのであれば、著者の解説が紋切り型で、節ごとの内容に重複も少なくない。確かに、新聞で連載されたコラムとしては、各記事(引用句)の分量や内容の深さはこれで良かったのだろうが、一冊の本としてまとめた場合、どうしても解説の行き届かなさや内容の浅さが目立ってしまったというのが正直な感想である。

  • 100分de名著 で 面白い人だったので 図書館で借りてみました。やはり面白い。

    鹿島茂 「 悪の引用句辞典 」文学を研究している著者が選んでいるだけあって 人間の本性を現した引用句が多い。特に インパクト強かったのは、頭山満の天皇を祖先とする日本論、トクヴィルとジャックアタリの債務超過国家、パスカルの非合法賭博にはまる理由

    カミュ「ペスト」と サルトル「嘔吐」の読み方に納得
    *ペスト=不条理→ 3.11 の不条理
    *嘔吐の世界=3.11前の日本=文明の発展→暇つぶし、無菌的環境への吐き気

    アナトールフランス 「エピクロスの園〜大衆は断言を求めるので、証拠は求めない」
    タレーラン「彼らは何一つ学ばず、何一つ忘れなかった」

    ユゴー「第一の問題、富を生み出すこと。第二の問題、富を分配すること〜上手な配分とは公正な配分」

    トクヴィル「税金は知識の普及につれて高くなる」
    ジャックアタリ「国債は国家の〜弱さを計測するモノサシ」

    パスカル「彼にただで賭事をやらせてみよ〜退屈してしまうだろう」なぜ非合法賭博にはまるのか?非合法だから

    頭山満「西洋の道徳で自分の身体も魂も自分のもの〜それでは人間ではない、獣と同じである」日本社会は 天皇家を共通祖先とする巨大部族集団

    シェイクスピア「無から生じるものは無だけ」
    アラン「つまらぬ仕事などない。いったん やり出したなら」どんな仕事も いきなり 面白いことはない

  • 斜に構えて世の中わかった気になっている中二病の若造どもは必読の書。

  • 同じ言葉でも異なった並べ方をすると別種の思想が生まれるのと同様に、同じ思想であっても、それが異なった並べ方をされると、別の論旨がかたちづくられるものだからだ。  (パスカル 『パンセ』拙訳、飛鳥新社)

    じっくり待つことと、変わらないこと、この二つは我々の時代には負担なのだ。
    『精神の危機』 ポール・ヴァレリー

  • 他の人のレビュから題名を覚えていた。まえがきの引用ということについてが気になって借りたのだが、新聞に連載されていた『世相を斬る』コラムをまとめたものだそうだ。2007年ぐらいのものらしい。まえがきだけ読んで返す。いろいろ言いたいが、こういう本はもう飽きてるんで。

    メモ:欧米の教育で引用というものを学ばせるのは聖書読解の伝統の影響だという。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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