- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022530
作品紹介・あらすじ
多くの宗教で、性欲・金銭欲などの自らの欲求を断ち切り、克服することが求められる。キリスト教も同様だが、それではヨーロッパにおける「禁欲の思想」はいつ生まれ、どのように変化していったのか。身体を鍛練する古代ギリシアから、法に縛られたローマ時代を経て、キリスト教の広がりとともに修道制が生まれ、修道院が誕生するまで-。千年に及ぶヨーロッパ古代の思想史を「禁欲」という視点から照らし出す意欲作。
感想・レビュー・書評
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修道院の歴史と言うよりも、修道院が成立する前史。ギリシア・ローマ時代から、なぜこのような禁欲的な生き方が生まれてきたのかと解き明かしています。西洋史に詳しくないので、古代ローマの女性の社会的立場から、キリスト教がローマの国境になってからの修道的生き方との繋がりがちょっと理解しづらかったです。ただ、キリスト教国教化に伴って、貴族が司教のポストを争ったり、その司教が修道院を支配下に置こうとしたり、後半になるとかなり禁欲とは無縁の生臭い話になっています。中世以降の修道院についても続編執筆の予定があるようなので、そちらも期待。
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古代ギリシャ・ローマに生じた禁欲の求めがキリスト教の広まりと結びつき、やがて荒野での清貧な暮らしを望む隠修士・修道士たちを生んでいく。ローマ帝国が滅びた要因の一つはキリスト教が広まったことにあると以前は聞いた気もするが、本書を読む限り、初期キリスト教が末期のローマ帝国が抱えていた諸問題の良い受け皿になったという印象を抱いた。エジプトの修道士たちの欲を断ち切るための努力が涙ぐましい。そしてその禁欲の思想もいつしか緩み、修道院が世俗権力の延長線上にすぎないものになっていくというのがなんとも。
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前半は古代ギリシア・ローマにおける禁欲に至る要素についての解説。当時の法体制および医学との関係が興味深い。後半は古代から中世までの修道院の成り立ちについて,これは神学の実践の系譜と捉えられるだろう。
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修道院における禁欲。
どうやって成り立ってきたかを、ギリシャ・ローマ時代までさかのぼって論考する。 -
ヨーロッパ古代のキリスト教の流れがよくわかった
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2014-7-10
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Mittelalter Kloster France Christentum 中公新書 中央公論新社 文庫新書
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信仰を深め全うするために世俗的・肉体的な欲望(特に性的なそれ)から離れようとする志向は、洋の東西を問わず多くの宗教に共通する。そうした「禁欲」の中でも、キリスト教における代表的なあり方である「修道院」制度の成立を追った一冊。
修道院という制度は、どのような理論や信念のもと成立したのか。そして、それらはどのようにして受容され広くヨーロッパ全土へ広がっていったのか。
著者はまずその前提としてギリシア文化や帝政ローマの状況から始める。ギリシアやローマにおいてもやはり禁欲は重要な位置を占め、それがキリスト教的な修道院制度の萌芽を支えたという。
そして、後半では4世紀以降、修道院制度がガリア地方に広く伝播していく過程を分析する。そこでは、聖マルティヌスとレランス修道院における宗教的実践の重要性が強調される。
こうして見ると、禁欲というものがいかに切実な問題であったかということがわかる。性的な快感や興奮抜きの性行為を模索したり、夢精は信仰的にいいのか悪いのか議論したりというのは、現代の視点から見ればしょうもないことではあるが、当時の状況、当時の倫理観にとってみれば信仰を守るために禁欲とは極めて重要なことだった。そうした信仰の実践の極北として結実したのが修道院という制度だったと。
かなり細かい議論が多いので前提知識がないと難しいが、信仰のあり方を再考するにはとてもいい一冊だと思う。 -
7月新着